ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士

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「みー婆、行くよー」
『ナァ~』

そんなに急かないの、と鳴くみー婆を見ながら俺達は南門を潜る。

この数日はキースさん達に教えてもらいながらダンジョン挑戦の準備を進めてきた。

武器や防具は勿論、薬や食料類、外泊用のテントまで一から揃えてきたが最終的にはどこに夜逃げするんだ? とばかりに荷物が膨れ上がっていった。まぁ、全部空間収納に押し込んであるんだが。

それと準備する段階で問題点もちらほらと出てきた。

それはみー婆の食事問題である。

グルメ猫であるみー婆は冒険者がダンジョンで主食にする携帯食料にどうやら合わなかったらしい。携帯食料とは保存性が高くコンパクトに纏められた乾パンみたいなやつとガチガチに乾燥した干し肉や木の実類だ。

味を捨てて栄養や保存性、携帯性に特化してるため普通に言って不味い。栄養価は高いらしいが乾パンは保存性を高める為に乾燥してて口の水分をこれでもかと持ってかれるし栄養を添加する為に混ぜられてる薬草類のお陰でクソ苦い。一口食べてうぇってなった、みー婆は匂い嗅いだだけで足でポイってしてた。

干し肉は板みたいな大きな一枚肉を切り売りしていた。これも保存性を高める為に水分を抜かれてて、とにかく塩辛い。水に浸して食べるらしいんだがそれでも硬いし不味い、俺は一口食べて水をがぶ飲みした。みー婆は試しにぺろっと舐めて砂かけてた。

木の実もドライフルーツを連想させるが現実は残酷だった。クスの実と呼ばれる木の実を乾燥させて作ってあるらしくて梅干しの10倍ぐらい酸っぱかった。元々は甘酸っぱい実らしく、乾燥させると驚く程に酸っぱくなるものらしい。俺は一口食べて顔を梅干しにした。みー婆はもはや見ただけで踏みつけてた。

食べ物を粗末にしたらダメだ、とみー婆を叱るべきなのだろうが……すまん、俺には出来ない。

お婆ちゃん猫のみー婆に拷問じみた食事を与えるわけにはいかないんだ。だってあのみー婆が情けない声で『こんなご飯はやめて…』って鳴くんだ、俺には無理だよ。

そんなこともあってご飯はジーナさんの手を借りて沢山作り置きをして空間収納に仕舞ってある。とりあえず一ヶ月分ぐらいは作ったかな? 腐る事はないし足りなくなれば魔物肉も沢山あるからね、勿論食料だけでなく飲料関係も沢山仕舞ってある。

とまあ、こんな感じでこの数日は準備に当てていよいよ出発した。屋敷を出るときに馬車で送って行こうか?って言われたけど流石にそれは断った。初心者ダンジョンに送ってもらうのは恥ずかしいからね…

南門を出て、俺達はダンジョンらしきものを探すが見晴らしのいい平原にそんなものは見当たらない。みー婆も先程からキョロキョロとしているが見つからないようだ。

「みー婆、もしかしたら森の近くまで行かないとないのかもね。ここら辺はまだ門の近くだし」
『ナァ~』

そうねぇ、と返事をくれるみー婆の頭を撫でながら俺達はとりあえず死の森の近くに向かう。森の中にもダンジョンがあるって言ってたし初心者ダンジョンが見つからなかったらそっちにいってもいいかな? ダンジョン見つかりませんでしたって帰ったら恥ずかしいし。

みー婆もそれでいい?

『ナァ』

そうしましょうか、と頷くみー婆。その姿はまるでお散歩楽しいと言わんばかりにルンルンだ。こうやってのんびりお散歩するの好きだもんなみー婆は。

ぽかぽか太陽の下、俺とみー婆は見晴らしのいい草原を歩いていたが森に着くまでお目当てのダンジョンらしきものは見当たらなかった。途中冒険者みたいな人達とすれ違ったがいかにも歴戦!と言わんばかりの人達でそんな人達に初心者ダンジョンの場所を聞くなんて恥ずかしいことは出来なかったよ。

「結局森についちゃったね、初心者ダンジョンは見つからなかったけど…森にも簡単なダンジョンがあるらしいからそっちに行こうね」
『ナァ~』

仕方ないわね~、と言わんばかりなみー婆。ごめんなみー婆。もっと簡単に見つかるもんだと思ってたんだよ。やっぱ詳しい場所とか目印になるものを聞いておくべきだったな。

そんな反省をしながら俺達は初めの頃にお世話になっていた森へと帰ってきた。みー婆も懐かしいかな? まだ森を出てきてからそんなに経ってないからそうでもないか。

草原と違って俺のそばにべったりなみー婆を連れて歩きにくい獣道を進みながらダンジョンを探していく。歩きにくいし木とか邪魔だからかな?普段よりもべったりとすぐ横にいるみー婆の背中を撫でながら俺達は森の奥にどんどん進んでいく。

途中途中でみー婆が茂みの中に消えては捕らえた獲物を咥えて戻ってくるのをみればやっぱりこの森は豊かな森なんだと思うね、死の森とかついてるけど悪い印象つけたいだけなんじゃないかな?

っと、そんなことを考えていたらみー婆がナァナァと鳴き始めてジッと一方を眺めていた。

「みー婆、何かあった?」
『ナァー?』

アレじゃないかしら? と木々の間からうっすら見える人工物らしいモノ。切り出された石が積まれたような感じだがダンジョンの入り口かな? とりあえず近づいてみようか、みー婆。

やっと見つけた安心感と、早く入ってみたいとはやる気持ちを抑えながらその人工物に近づく。近くに寄ってみれば積まれた石には苔や植物の蔓が蔓延っていて年代を感じさせる。

お、なんか記号みたいなのが書いてある。コレ、鑑定とかで見たら何なのかわかるかな?


【ーーしんの試練】


んー、最初の二文字が擦れてて虫食いで読めないけど…これかな? 初心のダンジョンとかそんな感じだろ。

「みー婆、よく見つけたね。いい子いい子」
『ナァナァ』

いい子にお座りしてるみー婆を撫で回しながら抱き締める。みー婆もご満悦そうにしながらもっと撫でれ!と甘えてくる。ういやつういやつ。

「じゃあ早速中入ろうか、初心者向けのダンジョンだと死ぬような罠は無いけど他のダンジョンより多めに設定されてるんだってさ。だから注意しながら進もうね?」
『ナァ』

分かってるわよ、と頷くみー婆。まぁ、俺よりもしっかりしてるから大丈夫だろう。それにもし怪我しても薬とかあるからね、命大事にで進もう!



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