9 / 41
第09話 みんなへのケジメ前編
しおりを挟む
「ん?」
初めてチュートリアルダンジョンを攻略した余韻に浸っていた帰り道。ポケットの中でスマホが揺れる。陽太からのラインだ。
『おーい、俺たちクラスメイトになんもなしかー?』
「……ヤバい。忘れてた」
いや、正確に言えば、クラスメイトたちに学校を辞めることについて自分の言葉で伝えたい気持ちはあった。しかし、どう言ったものか考えている内にその、なんだ、あれだ。
「考えるのめんどくさくなっちゃったんだよなぁ」
街灯もないような人通りの少ない路地で一人ごにょごにょと言い訳をする。しかし、これを既読スルーするわけにはいかない。ので、俺は立ち止まりスマホをフリックする。
『すまん。言おうと思ってたんだけど、なんて言っていいか分からんかった』
俺は正直にそう言う。
『おけ。んじゃ明日18時、大森駅前集合な』
「……なんだ?」
微妙にというか、会話は噛み合っていない。が、まぁ確かに直接会った方が言いやすいかも知れないか。俺はそう思い、了解という二文字を返す。
『んじゃまた明日』
『あいよ、また明日』
男同士のそっけないやり取りはそれで終わった。陽太のことだから直接会ってチクチクとイヤミを言うということはないだろう。それに正直に言えば、このステータスで、ソロで、チュートリアルダンジョンをクリアしたことを誰かに自慢したかった。
「というわけで陽太には申し訳ないが自慢話に付き合ってもらうことにしよう。あー、なんかまだ二日も経ってないのに、懐かしい気がするな。っしゃ、明日も頑張るぞっと!」
そして俺は鼻歌まじりに家へと帰り、家族に今日の報告をしてからお風呂にゆっくりつかり、ぐっすり眠る。
◇
朝はいつもの時間に起きて、朝食を食べた後、一度世田谷ダンジョンに行き、少しでも元クラスメイトたちに離されないよう、追い付けるようレベル上げと装備集めをしてから大森駅へと向かう。まぁ残念ながらというか当然のように装備はドロップしなかったが。
「よ、辰巳。元気そうじゃん」
「……あぁ、陽太。久しぶり」
東口の階段の下、シュタっと手を挙げてこっちに挨拶してくる陽太。昨日は楽しみだ、なんて思っていたが、いざ会ってみて普段の雰囲気であることにホッとする。
「んじゃ行くぞー」
「いいけど、どこに行くんだ?」
「決まってるだろ? こういう時は歌うんだよ」
いや、初耳だし、なんなら俺たちは一度もカラオケに行ったことがない。
「いや、初耳だし、なんなら俺たちカラオケ行ったことないよな」
なので、思ったままをぶつけてみた。
「ナハハハ、教官の訓練キツすぎて、遊びに行く気なんて起こらなかったもんなー。よしっ、ついてこーい!」
どうやらカラオケに行くことは決定事項のようだ。陽太はお構いなしにスタスタ歩いていく。そして流石というか、抜かりないと言うか──。
「ここなー。あ、101号室です。一名追加お願いします」
「はい、畏まりました」
部屋まで予約していたようだ。なんというか、デートってこんな風にリードするのか、と思わせるくらいスムーズに部屋まで来てしまった。
「ほい、どうぞ」
陽太がガチャリと扉を引き、俺を中に入れようとする。
「……お前、手慣れてるな」
「余計なお世話だねー。ほれ、はよ入れ」
俺はなんだか罠に誘導された小動物の気持ちになる。だが、そんなことはおかまいなしに陽太は俺の背を押すと──。
パンッ、パンッ、パンッ!!
「うおっ!?」
四方から発砲音──ではなく、クラッカーの音が。
「「「「お誕生日おめでとー!!」」」」
「ナハハハ、辰巳ビビったか!」
「……いや、めっちゃビビったよ。てか、みんなまで何してんだよ……」
そこには僅か三ヶ月の付き合いだが、同じ釜の飯を食べ、同じ教官のもとで汗と色々と流しちゃいけないものを流したクラスメイトたちがいた。
「いや、何って合同誕生日会だよ。俺ら四~六月生まれだから大体誕生日被ってるだろ? だから全員十八になった七月にまとめて誕生日パーティするだろ。常識的に考えて」
と言ったのは佐藤だ。
「オホホホホー、っていうのは建前で獅堂君が勝手に一人卒業して、はいサヨナラーなんて寂しいからこうして集まったけど、大義名分をどうしたらいいか分からなくなっちゃったからこんな感じにしたのよーん」
と言うのは吉田さん。
「おい、吉田。ネタバレはやめろ」
「あら佐藤君、こういうのはね、早めにネタバレしといた方がお互い気まずくないし、何より私たちに何も言わずに、はいサヨナラー、しようとした獅堂君に少しは恩を着せてやらないと」
「……いい性格だよ、お前。おい、獅堂気にするなよ?」
「褒めても彼女になってあげないからね? ウフ。あ、獅堂君女子一同はお礼にスイーツを所望するわ!」
なんてバカ話しをする佐藤と吉田さん。周りのクラスメイトもまたじゃれ合いが始まったよとばかりに苦笑いしている。
「ハハ、いやでも吉田さんの言う通りだ。ホント、みんなに何も言わずに退学を決めちゃってごめん。その──」
「はい、辰巳のバカ真面目で面白くない話は後で聞きまーす。というわけでまずは乾杯しようぜー。はい、これ辰巳の分ね」
「……おう」
みんなにどういう経緯で退学することになったかを説明し、言うのが遅くなったことを謝ろうとしたら陽太に出鼻をくじかれた。あと、何気に面白くないと言われたのがショックだ。自分でも面白いとは思っていないけども、いないけども。
「んじゃ、1-Aの仲間に──」
「「「「「「「乾杯っ!!」」」」」」」
みんな騒ぎながら一気に炭酸ジュースを煽る。仕方ない。俺も気分を切り替え、みんなに倣って一気に──。
「ブホォォォオオ。って、なんじゃこりゃっ!! 陽太、これ──」
初めてチュートリアルダンジョンを攻略した余韻に浸っていた帰り道。ポケットの中でスマホが揺れる。陽太からのラインだ。
『おーい、俺たちクラスメイトになんもなしかー?』
「……ヤバい。忘れてた」
いや、正確に言えば、クラスメイトたちに学校を辞めることについて自分の言葉で伝えたい気持ちはあった。しかし、どう言ったものか考えている内にその、なんだ、あれだ。
「考えるのめんどくさくなっちゃったんだよなぁ」
街灯もないような人通りの少ない路地で一人ごにょごにょと言い訳をする。しかし、これを既読スルーするわけにはいかない。ので、俺は立ち止まりスマホをフリックする。
『すまん。言おうと思ってたんだけど、なんて言っていいか分からんかった』
俺は正直にそう言う。
『おけ。んじゃ明日18時、大森駅前集合な』
「……なんだ?」
微妙にというか、会話は噛み合っていない。が、まぁ確かに直接会った方が言いやすいかも知れないか。俺はそう思い、了解という二文字を返す。
『んじゃまた明日』
『あいよ、また明日』
男同士のそっけないやり取りはそれで終わった。陽太のことだから直接会ってチクチクとイヤミを言うということはないだろう。それに正直に言えば、このステータスで、ソロで、チュートリアルダンジョンをクリアしたことを誰かに自慢したかった。
「というわけで陽太には申し訳ないが自慢話に付き合ってもらうことにしよう。あー、なんかまだ二日も経ってないのに、懐かしい気がするな。っしゃ、明日も頑張るぞっと!」
そして俺は鼻歌まじりに家へと帰り、家族に今日の報告をしてからお風呂にゆっくりつかり、ぐっすり眠る。
◇
朝はいつもの時間に起きて、朝食を食べた後、一度世田谷ダンジョンに行き、少しでも元クラスメイトたちに離されないよう、追い付けるようレベル上げと装備集めをしてから大森駅へと向かう。まぁ残念ながらというか当然のように装備はドロップしなかったが。
「よ、辰巳。元気そうじゃん」
「……あぁ、陽太。久しぶり」
東口の階段の下、シュタっと手を挙げてこっちに挨拶してくる陽太。昨日は楽しみだ、なんて思っていたが、いざ会ってみて普段の雰囲気であることにホッとする。
「んじゃ行くぞー」
「いいけど、どこに行くんだ?」
「決まってるだろ? こういう時は歌うんだよ」
いや、初耳だし、なんなら俺たちは一度もカラオケに行ったことがない。
「いや、初耳だし、なんなら俺たちカラオケ行ったことないよな」
なので、思ったままをぶつけてみた。
「ナハハハ、教官の訓練キツすぎて、遊びに行く気なんて起こらなかったもんなー。よしっ、ついてこーい!」
どうやらカラオケに行くことは決定事項のようだ。陽太はお構いなしにスタスタ歩いていく。そして流石というか、抜かりないと言うか──。
「ここなー。あ、101号室です。一名追加お願いします」
「はい、畏まりました」
部屋まで予約していたようだ。なんというか、デートってこんな風にリードするのか、と思わせるくらいスムーズに部屋まで来てしまった。
「ほい、どうぞ」
陽太がガチャリと扉を引き、俺を中に入れようとする。
「……お前、手慣れてるな」
「余計なお世話だねー。ほれ、はよ入れ」
俺はなんだか罠に誘導された小動物の気持ちになる。だが、そんなことはおかまいなしに陽太は俺の背を押すと──。
パンッ、パンッ、パンッ!!
「うおっ!?」
四方から発砲音──ではなく、クラッカーの音が。
「「「「お誕生日おめでとー!!」」」」
「ナハハハ、辰巳ビビったか!」
「……いや、めっちゃビビったよ。てか、みんなまで何してんだよ……」
そこには僅か三ヶ月の付き合いだが、同じ釜の飯を食べ、同じ教官のもとで汗と色々と流しちゃいけないものを流したクラスメイトたちがいた。
「いや、何って合同誕生日会だよ。俺ら四~六月生まれだから大体誕生日被ってるだろ? だから全員十八になった七月にまとめて誕生日パーティするだろ。常識的に考えて」
と言ったのは佐藤だ。
「オホホホホー、っていうのは建前で獅堂君が勝手に一人卒業して、はいサヨナラーなんて寂しいからこうして集まったけど、大義名分をどうしたらいいか分からなくなっちゃったからこんな感じにしたのよーん」
と言うのは吉田さん。
「おい、吉田。ネタバレはやめろ」
「あら佐藤君、こういうのはね、早めにネタバレしといた方がお互い気まずくないし、何より私たちに何も言わずに、はいサヨナラー、しようとした獅堂君に少しは恩を着せてやらないと」
「……いい性格だよ、お前。おい、獅堂気にするなよ?」
「褒めても彼女になってあげないからね? ウフ。あ、獅堂君女子一同はお礼にスイーツを所望するわ!」
なんてバカ話しをする佐藤と吉田さん。周りのクラスメイトもまたじゃれ合いが始まったよとばかりに苦笑いしている。
「ハハ、いやでも吉田さんの言う通りだ。ホント、みんなに何も言わずに退学を決めちゃってごめん。その──」
「はい、辰巳のバカ真面目で面白くない話は後で聞きまーす。というわけでまずは乾杯しようぜー。はい、これ辰巳の分ね」
「……おう」
みんなにどういう経緯で退学することになったかを説明し、言うのが遅くなったことを謝ろうとしたら陽太に出鼻をくじかれた。あと、何気に面白くないと言われたのがショックだ。自分でも面白いとは思っていないけども、いないけども。
「んじゃ、1-Aの仲間に──」
「「「「「「「乾杯っ!!」」」」」」」
みんな騒ぎながら一気に炭酸ジュースを煽る。仕方ない。俺も気分を切り替え、みんなに倣って一気に──。
「ブホォォォオオ。って、なんじゃこりゃっ!! 陽太、これ──」
42
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる