8 / 41
第08話 胸がいっぱい
しおりを挟む
翌日も世田谷のE5ダンジョンへとやってきた。今日はひとまずホブゴブリンの動きに慣れるためにボス部屋に何度もアタックする予定だ。
「ホッ、ホッ」
道中はレベル上げも兼ねて、スライムやゴブリンを倒していく。昨日より僅かに少ない弾数、少ない手数で倒せている。恐らく隠しステータスと呼ばれる武器熟練度が僅かに上がり、ダメージが増えた可能性と、単に俺がスライムやゴブリンの動きに慣れ、ダメージを通すことが上手くなっているというところだろう。ステータスは上がらずとも成長している実感に嬉しくなる。
<レベルが9に上がりました>
「っと、もうボス部屋か」
レベルが9に上がったところで五階への転送門が見つかる。ダンジョン自体の構造や転送門の位置は変化しないが、そもそもスタートする位置がランダムでダンジョンは広大なため、道を覚えて最短というわけにもいかない。ちなみに小さいダンジョンでも街一つ分の広さがあるため、そんな中から一つの転送門を探していたら誰もチュートリアルダンジョンすらクリアできない。つまり転送門もかなりの数があるわけだ。
その一つに俺は乗り、二回目の五階に辿り着く。
「ただいま、ホフゴブリン。対戦よろしくお願いするよ」
「グギャァァァアア!!」
ホブゴブリンは待ってましたとばかりに歓喜の咆哮を上げると、ゴングなし、待ったなしの戦いの火蓋が再び切って落とされた。
「グギャ、グギャ!!」
「フッ、ハッ」
一度目とは違い、冷静に対処できている。動きのパターンを読み、右逆手の短剣を防御に集中させ、パリィとステップでこん棒を凌ぐ。攻撃は左手のハンドガンのみだ。とにかく膨大なHPを削るために、弱点を狙うより手数を増やす。俺は当てやすい胴体部分を中心に撃ち込み続ける。
「グギャ、グギャァァァ!!」
そんな戦闘がどのくらい続いただろうか。俺は一撃貰うことすら許されない薄氷の上で、いつ終わりが来るか見えない銃弾の雨を降らし続ける。ホブゴブリンは怒りで目を赤く染め、雄叫びを上げながらがむしゃらにこん棒を振るう。
「当たんねぇよ」
俺はと言えば、強がって笑って見せるが、限界は近かった。一瞬たりとも気を抜けない攻防に頭の中が焼き切れそうで、身体は熱いのか寒いのかも分からない。思考と視界に薄くモヤがかかっているようだ。
(キッツいなぁ……。今、何分くらい戦ってんだろ……。あとこいつのHPいくつだよ……)
俺は虚ろな頭で反射的にこん棒を避け、銃弾を撃ち込む。何度目かのマガジン換装。リロード、撃つ。撃つ。
「グ……グギャァ……」
ドサッ。バタンッ。
ついにはホブゴブリンは膝を着き、倒れこんだ。数百発。下手したら千発以上撃ち込んでようやく沈んだのだ。
「ホブゴブリン……。間違いなく俺が戦った中でお前が一番の強敵だったよ。あ、いや教官は除く」
俺はそんなことを言いながらどさりと尻餅を着く。そして天の声だ。
<レベルが10に上がりました。レベルが11に上がりました。レベルが12に上がりました。ソロでの討伐を確認。戦闘時間60分以上を確認。被弾数ゼロを確認。攻撃回数千回以上を確認。称号【弄ぶ者】を獲得しました>
称号を獲得してしまった。詳細は気になるが、今は──。
「ボス箱……。そうですよね。こんだけ頑張っても一つですよね」
宝箱の等級は、白、青、緑、赤、銀、金、虹という風になっている。出たのは緑箱。俺のLUKからしたら相当ラッキーなことだろう。早速緑箱に手をかざす。
「……来た来た来た! うしっ」
疲れも吹っ飛ぶような嬉しい誤算だ。入っていたのは念願の武器である。早速装備をしてみる。右手に古びた、決して切れ味は良くなさそうな無骨な短剣が握られる。
「ステータスオープン」
<Lv> 12
<ステータス>
HP:10
MP:10
STR:6(+5)
VIT:1
DEX:6(+5)
AGI:6(+5)
INT:1
MND:1
LUK:1
<装備>
右手:ゴブリンダガー
左手:チュートリアルハンドガン
頭:なし
上半身:チュートリアルロンT
下半身:チュートリアルジーンズ
靴:チュートリアルスニーカー
アクセサリー:なし
<ジョブスキル>
<アクティブスキル>
<パッシブスキル>
<特殊スキル> 【レベル転生★】【アイテムボックス(仮)】
<スキルポイント> 0
<称号> 【弄ぶ者】
「すごい……。STRとDEXとAGIが6倍になった……。しかし、素のステータスは一切上がっていないんだな……。さて、武器と称号の詳細は、っと」
【ゴブリンダガー】Lv1から装備可能。STR、DEX、AGIに加算5、乗算1.02ボーナス。
【弄ぶ者】被弾をせず、攻撃をヒットさせていくと徐々にダメージ係数が増加。モンスターを倒すとリセット。
「え、【ゴブリンダガー】はまぁ普通だが、【弄ぶ者】ヤバいな。いや、決して弄んでたわけじゃなくて俺必死だったんだけどね」
それにしても称号はどれも強力な効果が多いが、その中でもこれは上位の称号だろう。モンスターを倒したらリセットされてしまうが、ボスにはかなり有効だ。但し、ボス戦を今みたいに被弾ゼロで戦い続けるなんてことが可能かどうかは怪しいが。だが、何にせよ──。
「こんなステータスでもダンジョンクリアできるじゃんか」
ダンジョンをクリアしたことに俺の胸はいっぱいだった。
「ホッ、ホッ」
道中はレベル上げも兼ねて、スライムやゴブリンを倒していく。昨日より僅かに少ない弾数、少ない手数で倒せている。恐らく隠しステータスと呼ばれる武器熟練度が僅かに上がり、ダメージが増えた可能性と、単に俺がスライムやゴブリンの動きに慣れ、ダメージを通すことが上手くなっているというところだろう。ステータスは上がらずとも成長している実感に嬉しくなる。
<レベルが9に上がりました>
「っと、もうボス部屋か」
レベルが9に上がったところで五階への転送門が見つかる。ダンジョン自体の構造や転送門の位置は変化しないが、そもそもスタートする位置がランダムでダンジョンは広大なため、道を覚えて最短というわけにもいかない。ちなみに小さいダンジョンでも街一つ分の広さがあるため、そんな中から一つの転送門を探していたら誰もチュートリアルダンジョンすらクリアできない。つまり転送門もかなりの数があるわけだ。
その一つに俺は乗り、二回目の五階に辿り着く。
「ただいま、ホフゴブリン。対戦よろしくお願いするよ」
「グギャァァァアア!!」
ホブゴブリンは待ってましたとばかりに歓喜の咆哮を上げると、ゴングなし、待ったなしの戦いの火蓋が再び切って落とされた。
「グギャ、グギャ!!」
「フッ、ハッ」
一度目とは違い、冷静に対処できている。動きのパターンを読み、右逆手の短剣を防御に集中させ、パリィとステップでこん棒を凌ぐ。攻撃は左手のハンドガンのみだ。とにかく膨大なHPを削るために、弱点を狙うより手数を増やす。俺は当てやすい胴体部分を中心に撃ち込み続ける。
「グギャ、グギャァァァ!!」
そんな戦闘がどのくらい続いただろうか。俺は一撃貰うことすら許されない薄氷の上で、いつ終わりが来るか見えない銃弾の雨を降らし続ける。ホブゴブリンは怒りで目を赤く染め、雄叫びを上げながらがむしゃらにこん棒を振るう。
「当たんねぇよ」
俺はと言えば、強がって笑って見せるが、限界は近かった。一瞬たりとも気を抜けない攻防に頭の中が焼き切れそうで、身体は熱いのか寒いのかも分からない。思考と視界に薄くモヤがかかっているようだ。
(キッツいなぁ……。今、何分くらい戦ってんだろ……。あとこいつのHPいくつだよ……)
俺は虚ろな頭で反射的にこん棒を避け、銃弾を撃ち込む。何度目かのマガジン換装。リロード、撃つ。撃つ。
「グ……グギャァ……」
ドサッ。バタンッ。
ついにはホブゴブリンは膝を着き、倒れこんだ。数百発。下手したら千発以上撃ち込んでようやく沈んだのだ。
「ホブゴブリン……。間違いなく俺が戦った中でお前が一番の強敵だったよ。あ、いや教官は除く」
俺はそんなことを言いながらどさりと尻餅を着く。そして天の声だ。
<レベルが10に上がりました。レベルが11に上がりました。レベルが12に上がりました。ソロでの討伐を確認。戦闘時間60分以上を確認。被弾数ゼロを確認。攻撃回数千回以上を確認。称号【弄ぶ者】を獲得しました>
称号を獲得してしまった。詳細は気になるが、今は──。
「ボス箱……。そうですよね。こんだけ頑張っても一つですよね」
宝箱の等級は、白、青、緑、赤、銀、金、虹という風になっている。出たのは緑箱。俺のLUKからしたら相当ラッキーなことだろう。早速緑箱に手をかざす。
「……来た来た来た! うしっ」
疲れも吹っ飛ぶような嬉しい誤算だ。入っていたのは念願の武器である。早速装備をしてみる。右手に古びた、決して切れ味は良くなさそうな無骨な短剣が握られる。
「ステータスオープン」
<Lv> 12
<ステータス>
HP:10
MP:10
STR:6(+5)
VIT:1
DEX:6(+5)
AGI:6(+5)
INT:1
MND:1
LUK:1
<装備>
右手:ゴブリンダガー
左手:チュートリアルハンドガン
頭:なし
上半身:チュートリアルロンT
下半身:チュートリアルジーンズ
靴:チュートリアルスニーカー
アクセサリー:なし
<ジョブスキル>
<アクティブスキル>
<パッシブスキル>
<特殊スキル> 【レベル転生★】【アイテムボックス(仮)】
<スキルポイント> 0
<称号> 【弄ぶ者】
「すごい……。STRとDEXとAGIが6倍になった……。しかし、素のステータスは一切上がっていないんだな……。さて、武器と称号の詳細は、っと」
【ゴブリンダガー】Lv1から装備可能。STR、DEX、AGIに加算5、乗算1.02ボーナス。
【弄ぶ者】被弾をせず、攻撃をヒットさせていくと徐々にダメージ係数が増加。モンスターを倒すとリセット。
「え、【ゴブリンダガー】はまぁ普通だが、【弄ぶ者】ヤバいな。いや、決して弄んでたわけじゃなくて俺必死だったんだけどね」
それにしても称号はどれも強力な効果が多いが、その中でもこれは上位の称号だろう。モンスターを倒したらリセットされてしまうが、ボスにはかなり有効だ。但し、ボス戦を今みたいに被弾ゼロで戦い続けるなんてことが可能かどうかは怪しいが。だが、何にせよ──。
「こんなステータスでもダンジョンクリアできるじゃんか」
ダンジョンをクリアしたことに俺の胸はいっぱいだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる