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第09話 みんなへのケジメ前編
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「ん?」
初めてチュートリアルダンジョンを攻略した余韻に浸っていた帰り道。ポケットの中でスマホが揺れる。陽太からのラインだ。
『おーい、俺たちクラスメイトになんもなしかー?』
「……ヤバい。忘れてた」
いや、正確に言えば、クラスメイトたちに学校を辞めることについて自分の言葉で伝えたい気持ちはあった。しかし、どう言ったものか考えている内にその、なんだ、あれだ。
「考えるのめんどくさくなっちゃったんだよなぁ」
街灯もないような人通りの少ない路地で一人ごにょごにょと言い訳をする。しかし、これを既読スルーするわけにはいかない。ので、俺は立ち止まりスマホをフリックする。
『すまん。言おうと思ってたんだけど、なんて言っていいか分からんかった』
俺は正直にそう言う。
『おけ。んじゃ明日18時、大森駅前集合な』
「……なんだ?」
微妙にというか、会話は噛み合っていない。が、まぁ確かに直接会った方が言いやすいかも知れないか。俺はそう思い、了解という二文字を返す。
『んじゃまた明日』
『あいよ、また明日』
男同士のそっけないやり取りはそれで終わった。陽太のことだから直接会ってチクチクとイヤミを言うということはないだろう。それに正直に言えば、このステータスで、ソロで、チュートリアルダンジョンをクリアしたことを誰かに自慢したかった。
「というわけで陽太には申し訳ないが自慢話に付き合ってもらうことにしよう。あー、なんかまだ二日も経ってないのに、懐かしい気がするな。っしゃ、明日も頑張るぞっと!」
そして俺は鼻歌まじりに家へと帰り、家族に今日の報告をしてからお風呂にゆっくりつかり、ぐっすり眠る。
◇
朝はいつもの時間に起きて、朝食を食べた後、一度世田谷ダンジョンに行き、少しでも元クラスメイトたちに離されないよう、追い付けるようレベル上げと装備集めをしてから大森駅へと向かう。まぁ残念ながらというか当然のように装備はドロップしなかったが。
「よ、辰巳。元気そうじゃん」
「……あぁ、陽太。久しぶり」
東口の階段の下、シュタっと手を挙げてこっちに挨拶してくる陽太。昨日は楽しみだ、なんて思っていたが、いざ会ってみて普段の雰囲気であることにホッとする。
「んじゃ行くぞー」
「いいけど、どこに行くんだ?」
「決まってるだろ? こういう時は歌うんだよ」
いや、初耳だし、なんなら俺たちは一度もカラオケに行ったことがない。
「いや、初耳だし、なんなら俺たちカラオケ行ったことないよな」
なので、思ったままをぶつけてみた。
「ナハハハ、教官の訓練キツすぎて、遊びに行く気なんて起こらなかったもんなー。よしっ、ついてこーい!」
どうやらカラオケに行くことは決定事項のようだ。陽太はお構いなしにスタスタ歩いていく。そして流石というか、抜かりないと言うか──。
「ここなー。あ、101号室です。一名追加お願いします」
「はい、畏まりました」
部屋まで予約していたようだ。なんというか、デートってこんな風にリードするのか、と思わせるくらいスムーズに部屋まで来てしまった。
「ほい、どうぞ」
陽太がガチャリと扉を引き、俺を中に入れようとする。
「……お前、手慣れてるな」
「余計なお世話だねー。ほれ、はよ入れ」
俺はなんだか罠に誘導された小動物の気持ちになる。だが、そんなことはおかまいなしに陽太は俺の背を押すと──。
パンッ、パンッ、パンッ!!
「うおっ!?」
四方から発砲音──ではなく、クラッカーの音が。
「「「「お誕生日おめでとー!!」」」」
「ナハハハ、辰巳ビビったか!」
「……いや、めっちゃビビったよ。てか、みんなまで何してんだよ……」
そこには僅か三ヶ月の付き合いだが、同じ釜の飯を食べ、同じ教官のもとで汗と色々と流しちゃいけないものを流したクラスメイトたちがいた。
「いや、何って合同誕生日会だよ。俺ら四~六月生まれだから大体誕生日被ってるだろ? だから全員十八になった七月にまとめて誕生日パーティするだろ。常識的に考えて」
と言ったのは佐藤だ。
「オホホホホー、っていうのは建前で獅堂君が勝手に一人卒業して、はいサヨナラーなんて寂しいからこうして集まったけど、大義名分をどうしたらいいか分からなくなっちゃったからこんな感じにしたのよーん」
と言うのは吉田さん。
「おい、吉田。ネタバレはやめろ」
「あら佐藤君、こういうのはね、早めにネタバレしといた方がお互い気まずくないし、何より私たちに何も言わずに、はいサヨナラー、しようとした獅堂君に少しは恩を着せてやらないと」
「……いい性格だよ、お前。おい、獅堂気にするなよ?」
「褒めても彼女になってあげないからね? ウフ。あ、獅堂君女子一同はお礼にスイーツを所望するわ!」
なんてバカ話しをする佐藤と吉田さん。周りのクラスメイトもまたじゃれ合いが始まったよとばかりに苦笑いしている。
「ハハ、いやでも吉田さんの言う通りだ。ホント、みんなに何も言わずに退学を決めちゃってごめん。その──」
「はい、辰巳のバカ真面目で面白くない話は後で聞きまーす。というわけでまずは乾杯しようぜー。はい、これ辰巳の分ね」
「……おう」
みんなにどういう経緯で退学することになったかを説明し、言うのが遅くなったことを謝ろうとしたら陽太に出鼻をくじかれた。あと、何気に面白くないと言われたのがショックだ。自分でも面白いとは思っていないけども、いないけども。
「んじゃ、1-Aの仲間に──」
「「「「「「「乾杯っ!!」」」」」」」
みんな騒ぎながら一気に炭酸ジュースを煽る。仕方ない。俺も気分を切り替え、みんなに倣って一気に──。
「ブホォォォオオ。って、なんじゃこりゃっ!! 陽太、これ──」
初めてチュートリアルダンジョンを攻略した余韻に浸っていた帰り道。ポケットの中でスマホが揺れる。陽太からのラインだ。
『おーい、俺たちクラスメイトになんもなしかー?』
「……ヤバい。忘れてた」
いや、正確に言えば、クラスメイトたちに学校を辞めることについて自分の言葉で伝えたい気持ちはあった。しかし、どう言ったものか考えている内にその、なんだ、あれだ。
「考えるのめんどくさくなっちゃったんだよなぁ」
街灯もないような人通りの少ない路地で一人ごにょごにょと言い訳をする。しかし、これを既読スルーするわけにはいかない。ので、俺は立ち止まりスマホをフリックする。
『すまん。言おうと思ってたんだけど、なんて言っていいか分からんかった』
俺は正直にそう言う。
『おけ。んじゃ明日18時、大森駅前集合な』
「……なんだ?」
微妙にというか、会話は噛み合っていない。が、まぁ確かに直接会った方が言いやすいかも知れないか。俺はそう思い、了解という二文字を返す。
『んじゃまた明日』
『あいよ、また明日』
男同士のそっけないやり取りはそれで終わった。陽太のことだから直接会ってチクチクとイヤミを言うということはないだろう。それに正直に言えば、このステータスで、ソロで、チュートリアルダンジョンをクリアしたことを誰かに自慢したかった。
「というわけで陽太には申し訳ないが自慢話に付き合ってもらうことにしよう。あー、なんかまだ二日も経ってないのに、懐かしい気がするな。っしゃ、明日も頑張るぞっと!」
そして俺は鼻歌まじりに家へと帰り、家族に今日の報告をしてからお風呂にゆっくりつかり、ぐっすり眠る。
◇
朝はいつもの時間に起きて、朝食を食べた後、一度世田谷ダンジョンに行き、少しでも元クラスメイトたちに離されないよう、追い付けるようレベル上げと装備集めをしてから大森駅へと向かう。まぁ残念ながらというか当然のように装備はドロップしなかったが。
「よ、辰巳。元気そうじゃん」
「……あぁ、陽太。久しぶり」
東口の階段の下、シュタっと手を挙げてこっちに挨拶してくる陽太。昨日は楽しみだ、なんて思っていたが、いざ会ってみて普段の雰囲気であることにホッとする。
「んじゃ行くぞー」
「いいけど、どこに行くんだ?」
「決まってるだろ? こういう時は歌うんだよ」
いや、初耳だし、なんなら俺たちは一度もカラオケに行ったことがない。
「いや、初耳だし、なんなら俺たちカラオケ行ったことないよな」
なので、思ったままをぶつけてみた。
「ナハハハ、教官の訓練キツすぎて、遊びに行く気なんて起こらなかったもんなー。よしっ、ついてこーい!」
どうやらカラオケに行くことは決定事項のようだ。陽太はお構いなしにスタスタ歩いていく。そして流石というか、抜かりないと言うか──。
「ここなー。あ、101号室です。一名追加お願いします」
「はい、畏まりました」
部屋まで予約していたようだ。なんというか、デートってこんな風にリードするのか、と思わせるくらいスムーズに部屋まで来てしまった。
「ほい、どうぞ」
陽太がガチャリと扉を引き、俺を中に入れようとする。
「……お前、手慣れてるな」
「余計なお世話だねー。ほれ、はよ入れ」
俺はなんだか罠に誘導された小動物の気持ちになる。だが、そんなことはおかまいなしに陽太は俺の背を押すと──。
パンッ、パンッ、パンッ!!
「うおっ!?」
四方から発砲音──ではなく、クラッカーの音が。
「「「「お誕生日おめでとー!!」」」」
「ナハハハ、辰巳ビビったか!」
「……いや、めっちゃビビったよ。てか、みんなまで何してんだよ……」
そこには僅か三ヶ月の付き合いだが、同じ釜の飯を食べ、同じ教官のもとで汗と色々と流しちゃいけないものを流したクラスメイトたちがいた。
「いや、何って合同誕生日会だよ。俺ら四~六月生まれだから大体誕生日被ってるだろ? だから全員十八になった七月にまとめて誕生日パーティするだろ。常識的に考えて」
と言ったのは佐藤だ。
「オホホホホー、っていうのは建前で獅堂君が勝手に一人卒業して、はいサヨナラーなんて寂しいからこうして集まったけど、大義名分をどうしたらいいか分からなくなっちゃったからこんな感じにしたのよーん」
と言うのは吉田さん。
「おい、吉田。ネタバレはやめろ」
「あら佐藤君、こういうのはね、早めにネタバレしといた方がお互い気まずくないし、何より私たちに何も言わずに、はいサヨナラー、しようとした獅堂君に少しは恩を着せてやらないと」
「……いい性格だよ、お前。おい、獅堂気にするなよ?」
「褒めても彼女になってあげないからね? ウフ。あ、獅堂君女子一同はお礼にスイーツを所望するわ!」
なんてバカ話しをする佐藤と吉田さん。周りのクラスメイトもまたじゃれ合いが始まったよとばかりに苦笑いしている。
「ハハ、いやでも吉田さんの言う通りだ。ホント、みんなに何も言わずに退学を決めちゃってごめん。その──」
「はい、辰巳のバカ真面目で面白くない話は後で聞きまーす。というわけでまずは乾杯しようぜー。はい、これ辰巳の分ね」
「……おう」
みんなにどういう経緯で退学することになったかを説明し、言うのが遅くなったことを謝ろうとしたら陽太に出鼻をくじかれた。あと、何気に面白くないと言われたのがショックだ。自分でも面白いとは思っていないけども、いないけども。
「んじゃ、1-Aの仲間に──」
「「「「「「「乾杯っ!!」」」」」」」
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