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第18話 雪辱戦
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「「…………」」
しばし、自分のステータスボードと見比べる。真面目な顔で何度も往復していたせいか、一ノ瀬さんは苦笑いだ。
「……あー、一ノ瀬さんや」
「はい、なんでしょう?」
「キミ、強ない?」
当然の指摘だと思ったが、一ノ瀬さんは本当に驚いたように丸い目をして、
「いえ、所詮数字上だけの話しですし、神剣のおかげですから、強いとは言えないと思います」
そんなことを言った。
「なるほど、まぁでもスキルやドロップアイテム、それこそ運も含めてその人の強さじゃないかなぁ、と思うけども?」
だって、そもそも俺たちはステータスを貰って、レベルアップして、スキルを鍛えて、装備を更新して強くなるのだから。
「フフ、私はそうは思いませんよ。どんなにステータスが高くても、どんなに装備が良くても、最後はその人自身の強さだと思います。だから私は辰巳君のことを強いと思いますし、それはずっと変わらないと思います」
俺が強い? いまだに最底辺のステータスで、チュートリアルダンジョンしか攻略できていない俺が? ついついそんなことを考えて表情が曇ってしまう。
「……あの、辰巳君、実はですね、私、このダンジョンにソロで挑んだことがあるんですよ?」
「え?」
「ステータスは最低値で、モンスターを倒しても経験値は貰えないからレベルアップもできませんし、契約者以外とはパーティも組めない。でも、強くなりたくてダンジョンに挑戦してたんです。フフ、結果はどうだと思います?」
結果……。なんとなくこの流れだとダンジョンを攻略できなかった気がする。
「……お察しの通りです。スライムやゴブリンに何度も殺されてリスポーンし、挑戦を続ける内になんとか逃げのびてボス部屋まで辿り着いても、何もできずにリスポーンです。私って本当に弱くて、心が折れちゃいました。でも諦めるわけには行かなかったので、その弱さを認め、助けてもらいながら頑張ろうと契約者を探し続けたんです」
一ノ瀬さんがこれを本心で言ってることは理解できた。自分の弱さを認めた上で前に進む。それはモーラーを諦める何倍も難しい選択ではないだろうか。
「それで辰巳君と会ったら、フフ、同じステータスでビックリしましたよ。その何十倍も驚いたのはこのステータスでボスを倒して、一人でも上を目指そうとしていたことです。辰巳君は私の何十倍も強い人です」
まっすぐこちらを見つめながら、まっすぐな言葉をぶつけてくる。
「……ありがとう」
否定をするのも、謙遜をするのもなんだか一ノ瀬さんに対して失礼だと思い、それを受け止め、そう思ってくれたことに感謝をする。
「はい。だから私は辰巳君が契約者で本当に良かったと思ってます。きっと、辰巳君ならどんな逆境でも跳ね返して前に進める強さを持ってる人だから」
「……そこまで期待されるとプレッシャーだけども?」
「フフ、期待しちゃってます」
そんな風に笑顔で言われてしまえば、目線を逸らしながら頬を掻くことしかできない。
「照れてます?」
「……さ、ホブゴブリンが待ちくたびれてるだろうから、行こうか」
「フフ、はいっ」
からかってくる一ノ瀬さんのことは無視することにして、俺はボス部屋への扉を開く。そして、ゆっくりと二人で中へ──。
ボッ、ボッ、ボッ。
もう何度も見てきた演出だ。灯りが扉から奥へと順にともされ、玉座に座るホブゴブリンが照らし出される。
「一ノ瀬さん、雪辱戦だ。ドーンとやっちゃって」
「フフ、了解です。私がリスポーンされたら後は頼みます」
「そうならないように全力で頑張るよ」
そこまで喋ったところで、ホブゴブリンが立ち上がり、
「グガッァアアアアアッ!!」
咆哮を上げる。戦闘開始だ。
「ハァァァアッ!!」
一ノ瀬さんが気合十分に駆け出し、神剣を振り下ろす。
「ガッァアア!!」
ホブゴブリンは両手のこん棒でそれを受け止めた。
「グルァァァアアッッ!!」
今度は逆にホブゴブリンの猛攻だ。両手のこん棒をがむしゃらに振るう。
「……ック、流石に一撃というわけにはいかないですね」
一ノ瀬さんは素早く離脱し、距離を置く。だが、ホブゴブリンはそれを許すつもりはないようで、まるでクラウチングスタートのように身を低く屈めると、一気にその距離を詰める。
「っと、俺の存在を忘れるなよ? ホブゴブリンちゃん」
一ノ瀬さんの方しか見ていない猪突猛進なホブゴブリンを真横から蹴り飛ばす。バランスを崩したホブゴブリンは明後日の方へゴロゴロと転がっていく。
「グラァ!! グラァァァアア!!」
こん棒を地面へと何度も叩きつけるホブゴブリン。どうやら相当イラついてるようだ。一ノ瀬さんのことはもう見向きもせず、俺の方を睨んでくるホブゴブリンにやれやれと肩をすくめる。
「さぁ、かかってきな」
「ガァッ!!」
ホブゴブリは怒りに任せ単調な攻撃を繰り返してくる。それを冷静に、丁寧に、躱し、捌き、ハンドガンとダガーで削っていく。
「……すごいです」
「一、ノ、瀬、さ、んもっ、参、加、してっ」
調子に乗ってひきつけたものの、一ノ瀬さんの方を気にしながら余裕綽々というわけにはいかなかった。
「あ、はいっ! つい見惚れてしまいましたっ」
「分かったから、早くっ!」
「グルァァァアアアッッ!!」
耳元で何度も叫んでくるホブゴブリンの迫力は慣れたとは言え、心臓によろしくない。そしてこれは一ノ瀬さんの雪辱戦なのだから俺が出しゃばりすぎるのも良くない。徐々に防戦一方になっていた。
「行きますっ、ハァァァァアッ!!」
そして、その流れを断ち切るかの如く一ノ瀬さんはご丁寧に攻撃宣言をしてから、ホブゴブリンの横っ腹に神剣を突き刺す。
「グルァァァアアアアアッ!!」
明らかな致命傷だ。ホブゴブリンの動きが止まり、横っ腹から大量の血が流れ落ちる。
「これで終わりです」
神剣を引き抜いた一ノ瀬さんはそのまま自身の身体を半回転させ、下から上へ弧を描きながら神剣を薙ぐ。
「グ…………ルァ」
それでホブゴブリンの頭と胴は別れることとなった。
しばし、自分のステータスボードと見比べる。真面目な顔で何度も往復していたせいか、一ノ瀬さんは苦笑いだ。
「……あー、一ノ瀬さんや」
「はい、なんでしょう?」
「キミ、強ない?」
当然の指摘だと思ったが、一ノ瀬さんは本当に驚いたように丸い目をして、
「いえ、所詮数字上だけの話しですし、神剣のおかげですから、強いとは言えないと思います」
そんなことを言った。
「なるほど、まぁでもスキルやドロップアイテム、それこそ運も含めてその人の強さじゃないかなぁ、と思うけども?」
だって、そもそも俺たちはステータスを貰って、レベルアップして、スキルを鍛えて、装備を更新して強くなるのだから。
「フフ、私はそうは思いませんよ。どんなにステータスが高くても、どんなに装備が良くても、最後はその人自身の強さだと思います。だから私は辰巳君のことを強いと思いますし、それはずっと変わらないと思います」
俺が強い? いまだに最底辺のステータスで、チュートリアルダンジョンしか攻略できていない俺が? ついついそんなことを考えて表情が曇ってしまう。
「……あの、辰巳君、実はですね、私、このダンジョンにソロで挑んだことがあるんですよ?」
「え?」
「ステータスは最低値で、モンスターを倒しても経験値は貰えないからレベルアップもできませんし、契約者以外とはパーティも組めない。でも、強くなりたくてダンジョンに挑戦してたんです。フフ、結果はどうだと思います?」
結果……。なんとなくこの流れだとダンジョンを攻略できなかった気がする。
「……お察しの通りです。スライムやゴブリンに何度も殺されてリスポーンし、挑戦を続ける内になんとか逃げのびてボス部屋まで辿り着いても、何もできずにリスポーンです。私って本当に弱くて、心が折れちゃいました。でも諦めるわけには行かなかったので、その弱さを認め、助けてもらいながら頑張ろうと契約者を探し続けたんです」
一ノ瀬さんがこれを本心で言ってることは理解できた。自分の弱さを認めた上で前に進む。それはモーラーを諦める何倍も難しい選択ではないだろうか。
「それで辰巳君と会ったら、フフ、同じステータスでビックリしましたよ。その何十倍も驚いたのはこのステータスでボスを倒して、一人でも上を目指そうとしていたことです。辰巳君は私の何十倍も強い人です」
まっすぐこちらを見つめながら、まっすぐな言葉をぶつけてくる。
「……ありがとう」
否定をするのも、謙遜をするのもなんだか一ノ瀬さんに対して失礼だと思い、それを受け止め、そう思ってくれたことに感謝をする。
「はい。だから私は辰巳君が契約者で本当に良かったと思ってます。きっと、辰巳君ならどんな逆境でも跳ね返して前に進める強さを持ってる人だから」
「……そこまで期待されるとプレッシャーだけども?」
「フフ、期待しちゃってます」
そんな風に笑顔で言われてしまえば、目線を逸らしながら頬を掻くことしかできない。
「照れてます?」
「……さ、ホブゴブリンが待ちくたびれてるだろうから、行こうか」
「フフ、はいっ」
からかってくる一ノ瀬さんのことは無視することにして、俺はボス部屋への扉を開く。そして、ゆっくりと二人で中へ──。
ボッ、ボッ、ボッ。
もう何度も見てきた演出だ。灯りが扉から奥へと順にともされ、玉座に座るホブゴブリンが照らし出される。
「一ノ瀬さん、雪辱戦だ。ドーンとやっちゃって」
「フフ、了解です。私がリスポーンされたら後は頼みます」
「そうならないように全力で頑張るよ」
そこまで喋ったところで、ホブゴブリンが立ち上がり、
「グガッァアアアアアッ!!」
咆哮を上げる。戦闘開始だ。
「ハァァァアッ!!」
一ノ瀬さんが気合十分に駆け出し、神剣を振り下ろす。
「ガッァアア!!」
ホブゴブリンは両手のこん棒でそれを受け止めた。
「グルァァァアアッッ!!」
今度は逆にホブゴブリンの猛攻だ。両手のこん棒をがむしゃらに振るう。
「……ック、流石に一撃というわけにはいかないですね」
一ノ瀬さんは素早く離脱し、距離を置く。だが、ホブゴブリンはそれを許すつもりはないようで、まるでクラウチングスタートのように身を低く屈めると、一気にその距離を詰める。
「っと、俺の存在を忘れるなよ? ホブゴブリンちゃん」
一ノ瀬さんの方しか見ていない猪突猛進なホブゴブリンを真横から蹴り飛ばす。バランスを崩したホブゴブリンは明後日の方へゴロゴロと転がっていく。
「グラァ!! グラァァァアア!!」
こん棒を地面へと何度も叩きつけるホブゴブリン。どうやら相当イラついてるようだ。一ノ瀬さんのことはもう見向きもせず、俺の方を睨んでくるホブゴブリンにやれやれと肩をすくめる。
「さぁ、かかってきな」
「ガァッ!!」
ホブゴブリは怒りに任せ単調な攻撃を繰り返してくる。それを冷静に、丁寧に、躱し、捌き、ハンドガンとダガーで削っていく。
「……すごいです」
「一、ノ、瀬、さ、んもっ、参、加、してっ」
調子に乗ってひきつけたものの、一ノ瀬さんの方を気にしながら余裕綽々というわけにはいかなかった。
「あ、はいっ! つい見惚れてしまいましたっ」
「分かったから、早くっ!」
「グルァァァアアアッッ!!」
耳元で何度も叫んでくるホブゴブリンの迫力は慣れたとは言え、心臓によろしくない。そしてこれは一ノ瀬さんの雪辱戦なのだから俺が出しゃばりすぎるのも良くない。徐々に防戦一方になっていた。
「行きますっ、ハァァァァアッ!!」
そして、その流れを断ち切るかの如く一ノ瀬さんはご丁寧に攻撃宣言をしてから、ホブゴブリンの横っ腹に神剣を突き刺す。
「グルァァァアアアアアッ!!」
明らかな致命傷だ。ホブゴブリンの動きが止まり、横っ腹から大量の血が流れ落ちる。
「これで終わりです」
神剣を引き抜いた一ノ瀬さんはそのまま自身の身体を半回転させ、下から上へ弧を描きながら神剣を薙ぐ。
「グ…………ルァ」
それでホブゴブリンの頭と胴は別れることとなった。
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