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第21話 チャチャっと
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「いてっ、いてててて、うわぁ、ヒロ君見てよ。俺の右手のココ、こんな赤くなって。いててて」
手の甲が少し赤くなってる程度だ。ステータス持ちがテーブルにぶつけたくらいでケガをするわけがない。こんなのは茶番だ。この時は俺も一ノ瀬さんも冷めた目で男たちを見ていた。
「うーわっ、本当だ。これマジヤバイやつやん。病院行って、慰謝料請求しないと。でも、こんなケガさせるなんて、もしかして、カノジョ……モーラーだったりして?」
「……っ!」
しかし、この流れはマズイ。こいつらマジで質が悪い奴らだ。
「あれれー? マジ? 図星? じゃあ、モーラーが暴力振るったらどうなるか知ってる?」
最悪だ。当然、こちらに非はないし、目撃していた店員や客が証言してくれるだろう。だが、万が一にも喧嘩両成敗でお互いに資格剥奪なんてことになったら──。
「…………」
一ノ瀬さんも同じことを考えたのだろうか、やや青ざめた表情で俺のTシャツの袖をギュッと握ってくる。
「てわけでぇー、ちょっとカラオケ付き合ってくれるだけでいいのよ。それでこの話しはおーわーり」
「そそ。カノジョのイイ声聞きたいだーけ」
「「ギャハハハハハ!!」」
ゲスだ。頭が真っ白になっていく。なんでこんな奴らが存在しているのかが分からない。
「……あー。マジでお前らムカつくわ。そんな生き方してて恥ずかしくないのか?」
「「あ゛ぁん?」」
「ちょっ、辰巳君っ」
つい、我慢できずに言ってしまった。こいつらは脅迫して、一ノ瀬さんに乱暴をしようとしている。しかもやり慣れているところを見ると、被害にあった子たちが何人もいるかも知れない。なんでこんな奴らが平気でのさばってるんだ? モーラーになって、力を持って、そんなことしか考えられないのか?
「はい、俺ぷっつんきましたー。もうカノジョいいわ。タツミ君、遊ぼっか」
男の一人が立ち上がり、肩を組んでくる。俺を絶対に逃がさないとばかりにその手に力を込めて。
「悪い、一ノ瀬さん。ミーティングできそうにない。今日のところは帰ってくれる?」
俺は肩に組まれた手を払いのけ、会計レシートを取って、レジに行く。
「すみません、ご迷惑おかけしました」
「あの、いえ、お会計は……1550円になります……」
泣きそうになっている店員さんに会計を済ませてもらい、俺と男たちは店を出る。
「で、どこで遊ぶんだ?」
「お前、マジでムカつくな? 俺たちが一方的にお前で遊ぶんだよ。ついてこい」
俺はその言葉に目一杯反抗すべく、睨みつける。男どももイラついてるようで、さっきの軽薄な感じはなく、ギラついた目で俺を睨み返してくる。前を歩くナンパ男どものやたら態度のデカい歩き方を見ていると、俺たちはバカですと言って歩いてるようだ。
「辰巳君っ、走って!!」
「え?」
イライラしながら俺がグッと拳を握ろうとした瞬間だった。その手は一ノ瀬さんに握られており──。
「「あ゛んっ!?」」
何事かとナンパ男たちが振り返った頃には──。
「って、まっ、おいっ!!」
「ッチ、クソガキがぁぁ!!」
一気に駆け出していた。必死にナンパ男たちも追いかけてくるが、何度も路地を曲がり、人混みの中に紛れ、最後は──。
「乗ってくださいっ、早く」
「お、おうっ」
「お客さんどちらまで──」
「このまま出して下さい」
タクシーに乗って、逃げ切ったのであった。
◇
「ここで大丈夫です。ありがとうございました」
「はい、料金は──」
「あの、一ノ瀬さん、タクシー代俺も──」
「いいんです。はい、降りて下さい」
一ノ瀬さんはピシャリとそう言う。その迫力に負けてしまい、タクシーを降りる。なんとなくは察してるが、ここは……。
「こっちです」
「あ、はい……」
随分と高級そうなマンションだ。エントランスもしっかりしている。一ノ瀬さんは鍵を取り出し、リーダーに当てるとエントランスのドアが開いた。
「「…………」」
エレベーターで三十階まで上がる。フロアカーペットの敷いてある廊下を歩き、
「どうぞ……」
「あ、はい、お邪魔します……」
一ノ瀬さんの家へと通された。
「……今は一人で住んでいるので、誰もいません。楽にしてて下さい」
「あ、はい」
家族にいきなり会うことになるかもと思い、緊張していたが、一人暮らしと聞いて……緊張が解けるわけもなかった。
「炒飯くらいしか作れそうなものがないですが、いいですか?」
「え? あ、はい」
リビングの椅子に腰かけ、チラチラと部屋の中を見ていたら一ノ瀬さんがエプロンを着けて、冷蔵庫を覗き終えたところだった。どうやらチャーハンを作ってくれるらしい……。なんで?
「……食べそびれてしまったから、お腹空いてますよね?」
……なるほど、サイゼで俺の食事はナンパ男たちが食べてしまったから……。さっきまではアドレナリンが出てたせいか空腹感など忘れていたが、そう言われたら急にお腹が空いてくる。
「空いてます……」
なので、正直に告白した。
「男性がどれだけ食べるか、あまりよく分かりませんが、多めに作りますね」
「ありがとうございます」
そう言うと、一ノ瀬さんはカウンターキッチンで玉ネギを刻み始めた。
(にしても、広い家だな……)
多分、四人で暮らしているウチより広い。あまりモノはなく、整然とされているから余計そう感じるのかも知れない。一ノ瀬さんのことはまだ良く知らないが、贅沢をしたいタイプだとは思えないので、ここに一人暮らしをしていることには違和感を感じた。
(ま、そんなとこまで立ち入って聞くのは失礼だからしないけども)
それから暫く無言の時間が続く。そして、フライパンから良い匂いと、小気味のいい音が聞こえていたのが止まったと思ったら、
「できました」
「あ、うん……」
一ノ瀬さんがお皿にチャーハンをよそって持ってきてくれた。
「すごいね、ちゃんと丸くなってる」
「ありあわせのものですみません。美味しくなかったら無理して食べなくて大丈夫ですから……」
「食べていい?」
「どうぞ、あ、お茶も出さずにすみません、麦茶でいいですか?」
「あ、うん。ありあほお」
「フフ、慌てずに食べて下さいね」
コクコク。
この時既に俺は、炒飯の良い匂いに我慢できなくなってしまい、スプーンに山盛り乗せて口に運んでしまっていた。
手の甲が少し赤くなってる程度だ。ステータス持ちがテーブルにぶつけたくらいでケガをするわけがない。こんなのは茶番だ。この時は俺も一ノ瀬さんも冷めた目で男たちを見ていた。
「うーわっ、本当だ。これマジヤバイやつやん。病院行って、慰謝料請求しないと。でも、こんなケガさせるなんて、もしかして、カノジョ……モーラーだったりして?」
「……っ!」
しかし、この流れはマズイ。こいつらマジで質が悪い奴らだ。
「あれれー? マジ? 図星? じゃあ、モーラーが暴力振るったらどうなるか知ってる?」
最悪だ。当然、こちらに非はないし、目撃していた店員や客が証言してくれるだろう。だが、万が一にも喧嘩両成敗でお互いに資格剥奪なんてことになったら──。
「…………」
一ノ瀬さんも同じことを考えたのだろうか、やや青ざめた表情で俺のTシャツの袖をギュッと握ってくる。
「てわけでぇー、ちょっとカラオケ付き合ってくれるだけでいいのよ。それでこの話しはおーわーり」
「そそ。カノジョのイイ声聞きたいだーけ」
「「ギャハハハハハ!!」」
ゲスだ。頭が真っ白になっていく。なんでこんな奴らが存在しているのかが分からない。
「……あー。マジでお前らムカつくわ。そんな生き方してて恥ずかしくないのか?」
「「あ゛ぁん?」」
「ちょっ、辰巳君っ」
つい、我慢できずに言ってしまった。こいつらは脅迫して、一ノ瀬さんに乱暴をしようとしている。しかもやり慣れているところを見ると、被害にあった子たちが何人もいるかも知れない。なんでこんな奴らが平気でのさばってるんだ? モーラーになって、力を持って、そんなことしか考えられないのか?
「はい、俺ぷっつんきましたー。もうカノジョいいわ。タツミ君、遊ぼっか」
男の一人が立ち上がり、肩を組んでくる。俺を絶対に逃がさないとばかりにその手に力を込めて。
「悪い、一ノ瀬さん。ミーティングできそうにない。今日のところは帰ってくれる?」
俺は肩に組まれた手を払いのけ、会計レシートを取って、レジに行く。
「すみません、ご迷惑おかけしました」
「あの、いえ、お会計は……1550円になります……」
泣きそうになっている店員さんに会計を済ませてもらい、俺と男たちは店を出る。
「で、どこで遊ぶんだ?」
「お前、マジでムカつくな? 俺たちが一方的にお前で遊ぶんだよ。ついてこい」
俺はその言葉に目一杯反抗すべく、睨みつける。男どももイラついてるようで、さっきの軽薄な感じはなく、ギラついた目で俺を睨み返してくる。前を歩くナンパ男どものやたら態度のデカい歩き方を見ていると、俺たちはバカですと言って歩いてるようだ。
「辰巳君っ、走って!!」
「え?」
イライラしながら俺がグッと拳を握ろうとした瞬間だった。その手は一ノ瀬さんに握られており──。
「「あ゛んっ!?」」
何事かとナンパ男たちが振り返った頃には──。
「って、まっ、おいっ!!」
「ッチ、クソガキがぁぁ!!」
一気に駆け出していた。必死にナンパ男たちも追いかけてくるが、何度も路地を曲がり、人混みの中に紛れ、最後は──。
「乗ってくださいっ、早く」
「お、おうっ」
「お客さんどちらまで──」
「このまま出して下さい」
タクシーに乗って、逃げ切ったのであった。
◇
「ここで大丈夫です。ありがとうございました」
「はい、料金は──」
「あの、一ノ瀬さん、タクシー代俺も──」
「いいんです。はい、降りて下さい」
一ノ瀬さんはピシャリとそう言う。その迫力に負けてしまい、タクシーを降りる。なんとなくは察してるが、ここは……。
「こっちです」
「あ、はい……」
随分と高級そうなマンションだ。エントランスもしっかりしている。一ノ瀬さんは鍵を取り出し、リーダーに当てるとエントランスのドアが開いた。
「「…………」」
エレベーターで三十階まで上がる。フロアカーペットの敷いてある廊下を歩き、
「どうぞ……」
「あ、はい、お邪魔します……」
一ノ瀬さんの家へと通された。
「……今は一人で住んでいるので、誰もいません。楽にしてて下さい」
「あ、はい」
家族にいきなり会うことになるかもと思い、緊張していたが、一人暮らしと聞いて……緊張が解けるわけもなかった。
「炒飯くらいしか作れそうなものがないですが、いいですか?」
「え? あ、はい」
リビングの椅子に腰かけ、チラチラと部屋の中を見ていたら一ノ瀬さんがエプロンを着けて、冷蔵庫を覗き終えたところだった。どうやらチャーハンを作ってくれるらしい……。なんで?
「……食べそびれてしまったから、お腹空いてますよね?」
……なるほど、サイゼで俺の食事はナンパ男たちが食べてしまったから……。さっきまではアドレナリンが出てたせいか空腹感など忘れていたが、そう言われたら急にお腹が空いてくる。
「空いてます……」
なので、正直に告白した。
「男性がどれだけ食べるか、あまりよく分かりませんが、多めに作りますね」
「ありがとうございます」
そう言うと、一ノ瀬さんはカウンターキッチンで玉ネギを刻み始めた。
(にしても、広い家だな……)
多分、四人で暮らしているウチより広い。あまりモノはなく、整然とされているから余計そう感じるのかも知れない。一ノ瀬さんのことはまだ良く知らないが、贅沢をしたいタイプだとは思えないので、ここに一人暮らしをしていることには違和感を感じた。
(ま、そんなとこまで立ち入って聞くのは失礼だからしないけども)
それから暫く無言の時間が続く。そして、フライパンから良い匂いと、小気味のいい音が聞こえていたのが止まったと思ったら、
「できました」
「あ、うん……」
一ノ瀬さんがお皿にチャーハンをよそって持ってきてくれた。
「すごいね、ちゃんと丸くなってる」
「ありあわせのものですみません。美味しくなかったら無理して食べなくて大丈夫ですから……」
「食べていい?」
「どうぞ、あ、お茶も出さずにすみません、麦茶でいいですか?」
「あ、うん。ありあほお」
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