スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい

文字の大きさ
23 / 41

第23話 辰巳の全力

しおりを挟む
(一ノ瀬さん山好きなのかな……?)

 と言うのも高尾ダンジョンは高尾山の麓にできたダンジョンのことで、ダンジョンの地形も山のようだと聞く。更に攻略後に高尾山に登り、そのあと温泉に、と楽しむモーラーもいたりする人気ダンジョンだとか。

「うん、了解、じゃあ朝十時くらいに現地集合して、可能ならば午前一周、お昼休憩を挟んで午後一周って感じでどう?」

「えぇ、それで大丈夫です。でも、高尾は少し遠いので、車で行きませんか? 私、出しますので」

「え? 一ノ瀬さん車乗れるの? ってか、車持ってるの?」

「フフッ、はいっ♪」

 嬉しそうだ。爛々とした目の輝きから車好きだというのが伝わってくる。

「じゃあ、お願いします……」

 そういうことならこの提案を無碍にすることもあるまい。

「はいっ、では朝迎えに行きますねっ、えと、辰巳君のお家は……聞いても大丈夫です?」

 大丈夫に決まっている、という意味をこめて俺は軽く笑う。

「俺の家は目黒区だからココから高尾へは反対方向になるかな。だから迎えは大丈夫。この近くの駅に集合でもいい?」

「そうですね……、はい、分かりました。では、明日の九時に成城学園前に迎えにいきます」

「うん、ありがとう。……じゃ、あまり長居するのも申し訳ないからそろそろお暇するね」

「……あの、もしよろしければ送っていきましょうか?」

 一瞬迷う。別に帰るのが面倒だとかそういうわけじゃなく、車が好きなら送ってもらった方が一ノ瀬さんが喜ぶのか、と考えたのだ。だが、まぁ流石にその考えは飛躍しすぎだろう、と思い自重する。

「いやいや、電車があるし、大丈夫だよ、ありがとう。ゆっくり休んで、明日遅刻しないようにね」

 ま、一ノ瀬さんは遅刻するようなタイプじゃないだろうから心配はしていないけど。つまり、からかっただけだ。

「うっ、は、はい……。アラームたくさん掛けます……」

 と、思ったらどうやら朝は弱いタイプのようだ。人を印象だけで決めつけてはいけない、ということを学んだ。

「もう一時間遅くする?」

「だ……大丈夫ですっ!」

 なんだか悲壮な決意を感じて、心配になる。

「そ、そう? 無理しないでね? 遅れても全然大丈夫だからね?」

「大丈夫、大丈夫、大丈夫……な、筈、ですっ!」

(あ、これ大丈夫じゃないやつだ)

 一ノ瀬さんの表情は苦々しく、その視線は左右にブレブレに泳いでいる。俺は明日駅で待ちぼうけをすることをこの時点で覚悟した。

「うん、了解。じゃあまた明日。あと、チャーハンありがとう、ご馳走様。じゃ、おやすみなさい、お邪魔しました」

「フフ、辰巳君は随分律儀さんですね。はい、また明日。おやすみなさい」

 こうして、長かった一日は終わりを告げ──。



 家に帰れば──。

「ただいまー」

「あーーっ、お兄ちゃんおかえりっ!」

 妹の茜に抱き着かタックルされ、

「あら、タツミ随分遅かったわね。珍しいじゃない、アンタ外食してくるなんて。誰かと一緒だったの?」

 母さんになんとなく聞かれたくない質問をされ、

「いや、まぁ、うん」

 とりあえず濁していたら、

「くんくん。お兄ちゃんから良い匂いがするっ!!」

「なぁにぃぃぃ、どれ、パパにも匂わせろっ! くんくんっ、んっ!? ホントだ!! この甘いムスクはっ……女、だな?」

「なんだムスクって。おいクソ親父。いい加減離れろ」

 なぜか一ノ瀬さんといたことがバレそうになっていた。まだ玄関で靴を脱いでもいない時点の話しだ。

「うわーん、母さん、辰巳が反抗期だよぉ、パパをいじめるんだよぉ」

「あら、タツミ彼女できたの? 紹介しなさいよ」

 母さんは親父をガン無視して、こっちはこっちでめんどくさいことを言ってくる。

「できてねぇ。風呂入るわ」

 なので、俺はこの厄介な話題を打ち切り、風呂へと逃げる。

「茜も一緒に入るっ」

「パパも入るっ」

「だが断るっ」

 浴室のカギをガチャリと掛け、茜と、まぁ親父は流石に冗談だろうが、二人が入ってこれないようにする。

 ドンドンドンッ。

「お兄ちゃんのいけずぅーーー」

「たっくんのいけずぅーーーー」

「はいはい、俺はいけずですよー」

 そして俺は一人で風呂に入りながら、いずれ一ノ瀬さんとパーティを組んだことを家族に告げなければならないという現実に少しだけ頭を悩ますのであった。

(だが、それはもう少し先の話し……、なーんてな)

 

 ──とか思っていた昨日の自分を殴りたい。

「あら、おはよう、タツミ。今日は早いわね。それで、今日はダンジョン攻略じゃなくてデートなの? やっぱり彼女できたんじゃない」

「お兄ちゃん、おはよぉ~。あれぇ? 今日はキメキメだね、昨日の人とデート?」

「おう、辰巳ちゃんと歯ぁ磨いたか? 男は清潔感が一番だぞ。女性の扱い方に困ったら俺に聞け。父さんが辰巳くらいの年の頃はそりゃもうモテモテのひっぱりダコだったからな、ハハハハ」

「…………違ぇよ、ダンジョンに行くんだ」

(なぜバレた?)

 いや、まぁ別にデートではないのだが。しかし、ここ一ヶ月、毎日同じように支度して、ダンジョンに行っていた時はデートだのなんだのと言われたことはない。茜にはキメキメとか言われるが、服装は普段と変わらない……筈。

 俺はこの時、無表情を装ってはいたが、内心はちょっぴり焦っていた。

「あっ、茜分かった。お兄ちゃんその女の人とパーティー組んだんだ」

 妹、鋭し。

「ほぉ。辰巳やるじゃないか」

「へぇ、いいじゃない。タツミ今度遊びに連れてらっしゃい。あ、今日一緒なら夕飯ウチで食べる?」

 それいいね、なんて親父がハシャいでるが、昨日の今日で我が家に招待するわけがない。

「わーい、お兄ちゃんのカノジョさん見たーい!」

 妹よ、だからカノジョではない。

「息子の彼女か……、よしっ、ちょっくら散髪行ってくる! 母さん、お小遣いをくれっ!」

 仮に彼女が来るとしてもそのために気合入れて髪の毛を切りにいく父親ってどうなんだ?

「先週行ったばかりでしょー、却下でーす。茜にでも切ってもらいなさい」

 つか親父、先週髪切ったばっかかよ。全然気付かなかったわ。

「うぅ、しくしく。茜ぇ~、パパの頭切ってくれるか?」

「えー、うん、まぁ、いいよ?」

「ありがとおぉおおおおお!! あ、それで辰巳、彼女さんはどんなヘアースタイルが好みなんだ? ん?」

 さて、ここまで黙って聞いていたが、随分と好き勝手言ってくれる家族に対し、

「スゥー……」

 一度大きく息を吸い込んだ後──。

「つーか、俺、女性とデュオパーティー組んだなんて一言も言ってないんだけど勝手に話し進めないでくれるぅ!?」

 全力でツッコミを入れる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます! 2000年代初頭。 突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。 しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。 人類とダンジョンが共存して数十年。 元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。 なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。 これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...