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第38話 モーラーの調べ
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「あ、お兄ちゃん始まったよ!」
食事も終わり、みんなでまったりと過ごしていたら茜がテレビを指さす。
「あー、『モーラーの調べ』か。お、金切さん出てるじゃん」
司会は人気芸人とアナウンサーで、ダンジョンモーラー情報を中心に取り上げる番組だ。今日は世界的にも有名な日本人トップモーラーである金切結衣さんが出ていた。
『はい、本日のゲストは世界ランキング八位。日本のトップモーラー、美人すぎるモーラーで有名な金切結衣さんです。どうぞー!!』
『どうも、金切結衣です。今日は呼んで頂きありがとうございます』
『いやぁ、来るたびに美しくなっていくのなんなん? 金切さんは美しさとかいう隠しパラメーター持っててこっそり上げてるんちゃうん?』
『おいおい、セクハラセクハラ。金切さんが本気出したらお前なんてチョン、パッ、やで?』
金切さんは確か三十手前くらいだったと思う。確かに女優さんと並んでも見劣りしないどころか、その凛々しく力強い雰囲気は、なんというか研ぎ澄まされた刀のような美しささがある。
「あー、お兄ちゃん見惚れてるー。ヒカリお姉ちゃんがいるのに浮気なんてダメだよ!?」
「なんでやねん」
つい、芸人たちのコテコテの関西弁につられてそんなツッコミを入れてしまう。何度も説明したが、俺は別にそういうつもりで近付いているつもりはない。
「フフ、でも金切さん本当に綺麗で大人の女性って感じがして素敵ですよね。私もモーラーとしても女性としても憧れです」
金切さんは世界ランキング八位のレベル10万越えAランクモーラーだ。IDOの発行しているモーラーカードの統計では全発行数二十八億人なのだから、その凄さは筆舌しがたい。まぁ、この二十八億人の内、二十七億人程はレベル十以下ではあるが。
『さて、まずは今月の気になる新人モーラーのコーナー!!』
モーラーはダンジョンからの直接的な収入がないため、ランクを上げてIDOから給与を貰う人が大半だ。だが、一握りの高ランクモーラーや、テレビ映えするようないわゆるタレントモーラーなるものも存在し、個人でスポンサー契約をする場合もある。その登竜門がまさにこのコーナーなのだが──。
「あら、これ辰巳が通ってた学校じゃない。お友達?」
「……マジかよ」
『どうも初めまして~』
『キミ、ほんまテレビ初めて? ものっそキラキラオーラ出てますやん? ジャミーズとかにおった?』
『アハハハ、いえ、テレビは初めてなので緊張していますよ。まぁでもウチの鬼教官に堂々としていろ、余計なことは言うなとキツく注意されているので、って、やべ。鬼教官って言ったとこカットお願いします』
『アホか、そんなん使うに決まっとるやん。で、鬼ってのは何なん? まさか、この令和の時代にコレとかするん?』
『あー、ノーコメントで?』
『いや、それもう言ってるのと同じやで!!』
『はいはい、まぁ教育現場の闇に触れるのはそこまでにして、改めて紹介します。ダンジョンモーラー養成校、大森キャンパスの三枝陽太君ですっ、拍手っ』
ぱちぱちぱち。
なんとなくテレビを見ている俺たちも拍手をしてしまう。
『いやぁ、三枝君すごいんやってね? なんとモーラー日本最速レコード、十八歳と一ヶ月十日でD1ダンジョンをソロ攻略っ、レベルは既に四桁っ。金切さん、どうすごいのかお願いしますっ』
『はい。まずダンジョンへは十八歳からしか入れないよう魔王システムで決まっています。つまり、彼はモーラーになって一ヶ月十日でレベル千を超え、中級者と呼ばれるD級をパスし、C級へ上がりました。ちなみに私がC級に上がったのはモーラーになってから八か月後です。このペースであれば、あるいは世界のトップランカーも目指せるやも知れません』
『えー、金切さんよりすごいんですか? こいつ?』
『えぇ、そのポテンシャルは秘めていると思いますね』
『アハハハハ、ありがとうございます。めっちゃ照れますね』
陽太だ。俺の元クラスメイトの三枝陽太。確かに初期ステータスは強かったし、そもそもの戦闘センスや身体能力、運動神経などもズバ抜けていたが、まさかもうC級に上がって、テレビにまで出てるとは……。
『でも、やっぱあれちゃうん? 周りとの差ぁ気になるんちゃう?』
『んー。まぁ正直に言えばそこはキツイっすねぇ。実はパーティー組めそうなヤツいたんすけど』
『え? 日本最速レコードの三枝君とパーティー組める子なんていたん? え、気になるやん。同い年の学校の子? やっぱスポーツドリングとタオル持ってきてくれるような子?』
『なんで女子マネやねん』
『アホか! 女子とは言ってないやろが!』
『余計、きしょいわアホ』
『アハハハ、いや、スポーツドリンクやタオルは持ってきてくれない系の男子ですよ。そいつソロで今すんげー頑張ってるヤツなんで、次回のこのコーナーに呼ばれる可能性もあると思ってます』
『え、そんなハードル上げて大丈夫なん? その子、これ見てたら絶対そんなん言わんといてーって思っとるで? ちなみに名前は?』
『やめたれ。こいつビビらず言ってしまうタイプや』
少しだけ、ほんの少しだけイヤな予感がした。いや自意識過剰だろう。
『あ、そいつ獅堂辰巳って言うんすけど、名前からしてマジ強そうじゃないっすか?』
『『めっちゃ強そう……』』
「…………陽太ァ」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんの名前だよ!! お兄ちゃんテレビ出るのっ!?」
「母さん、スーツをクリーニングに出しておいてくれっ、あとお気に入りのネクタイはピシッとアイロン掛け頼むぞっ」
「アナタ? 先走りすぎよ。それにテレビに出るって言っても辰巳だけ……。でも、その家族へのインタビューもあるかも知れないわね。ちょっとエステ行かなきゃ。ヒカリちゃんも若い内からちゃんとお肌のケアはするのよ?」
「はい、お母さま」
「あら、お母さまだって。キュンとしちゃうじゃないっ。ねぇ? タツミ?」
「あったまいてぇ……」
俺は全てのツッコミを放棄した。あとで茜から聞いた話だが、その瞬間のツイタートレンドは三枝陽太と獅堂辰巳がランクインしたらしい。ホント日本人の好奇心って怖い。
食事も終わり、みんなでまったりと過ごしていたら茜がテレビを指さす。
「あー、『モーラーの調べ』か。お、金切さん出てるじゃん」
司会は人気芸人とアナウンサーで、ダンジョンモーラー情報を中心に取り上げる番組だ。今日は世界的にも有名な日本人トップモーラーである金切結衣さんが出ていた。
『はい、本日のゲストは世界ランキング八位。日本のトップモーラー、美人すぎるモーラーで有名な金切結衣さんです。どうぞー!!』
『どうも、金切結衣です。今日は呼んで頂きありがとうございます』
『いやぁ、来るたびに美しくなっていくのなんなん? 金切さんは美しさとかいう隠しパラメーター持っててこっそり上げてるんちゃうん?』
『おいおい、セクハラセクハラ。金切さんが本気出したらお前なんてチョン、パッ、やで?』
金切さんは確か三十手前くらいだったと思う。確かに女優さんと並んでも見劣りしないどころか、その凛々しく力強い雰囲気は、なんというか研ぎ澄まされた刀のような美しささがある。
「あー、お兄ちゃん見惚れてるー。ヒカリお姉ちゃんがいるのに浮気なんてダメだよ!?」
「なんでやねん」
つい、芸人たちのコテコテの関西弁につられてそんなツッコミを入れてしまう。何度も説明したが、俺は別にそういうつもりで近付いているつもりはない。
「フフ、でも金切さん本当に綺麗で大人の女性って感じがして素敵ですよね。私もモーラーとしても女性としても憧れです」
金切さんは世界ランキング八位のレベル10万越えAランクモーラーだ。IDOの発行しているモーラーカードの統計では全発行数二十八億人なのだから、その凄さは筆舌しがたい。まぁ、この二十八億人の内、二十七億人程はレベル十以下ではあるが。
『さて、まずは今月の気になる新人モーラーのコーナー!!』
モーラーはダンジョンからの直接的な収入がないため、ランクを上げてIDOから給与を貰う人が大半だ。だが、一握りの高ランクモーラーや、テレビ映えするようないわゆるタレントモーラーなるものも存在し、個人でスポンサー契約をする場合もある。その登竜門がまさにこのコーナーなのだが──。
「あら、これ辰巳が通ってた学校じゃない。お友達?」
「……マジかよ」
『どうも初めまして~』
『キミ、ほんまテレビ初めて? ものっそキラキラオーラ出てますやん? ジャミーズとかにおった?』
『アハハハ、いえ、テレビは初めてなので緊張していますよ。まぁでもウチの鬼教官に堂々としていろ、余計なことは言うなとキツく注意されているので、って、やべ。鬼教官って言ったとこカットお願いします』
『アホか、そんなん使うに決まっとるやん。で、鬼ってのは何なん? まさか、この令和の時代にコレとかするん?』
『あー、ノーコメントで?』
『いや、それもう言ってるのと同じやで!!』
『はいはい、まぁ教育現場の闇に触れるのはそこまでにして、改めて紹介します。ダンジョンモーラー養成校、大森キャンパスの三枝陽太君ですっ、拍手っ』
ぱちぱちぱち。
なんとなくテレビを見ている俺たちも拍手をしてしまう。
『いやぁ、三枝君すごいんやってね? なんとモーラー日本最速レコード、十八歳と一ヶ月十日でD1ダンジョンをソロ攻略っ、レベルは既に四桁っ。金切さん、どうすごいのかお願いしますっ』
『はい。まずダンジョンへは十八歳からしか入れないよう魔王システムで決まっています。つまり、彼はモーラーになって一ヶ月十日でレベル千を超え、中級者と呼ばれるD級をパスし、C級へ上がりました。ちなみに私がC級に上がったのはモーラーになってから八か月後です。このペースであれば、あるいは世界のトップランカーも目指せるやも知れません』
『えー、金切さんよりすごいんですか? こいつ?』
『えぇ、そのポテンシャルは秘めていると思いますね』
『アハハハハ、ありがとうございます。めっちゃ照れますね』
陽太だ。俺の元クラスメイトの三枝陽太。確かに初期ステータスは強かったし、そもそもの戦闘センスや身体能力、運動神経などもズバ抜けていたが、まさかもうC級に上がって、テレビにまで出てるとは……。
『でも、やっぱあれちゃうん? 周りとの差ぁ気になるんちゃう?』
『んー。まぁ正直に言えばそこはキツイっすねぇ。実はパーティー組めそうなヤツいたんすけど』
『え? 日本最速レコードの三枝君とパーティー組める子なんていたん? え、気になるやん。同い年の学校の子? やっぱスポーツドリングとタオル持ってきてくれるような子?』
『なんで女子マネやねん』
『アホか! 女子とは言ってないやろが!』
『余計、きしょいわアホ』
『アハハハ、いや、スポーツドリンクやタオルは持ってきてくれない系の男子ですよ。そいつソロで今すんげー頑張ってるヤツなんで、次回のこのコーナーに呼ばれる可能性もあると思ってます』
『え、そんなハードル上げて大丈夫なん? その子、これ見てたら絶対そんなん言わんといてーって思っとるで? ちなみに名前は?』
『やめたれ。こいつビビらず言ってしまうタイプや』
少しだけ、ほんの少しだけイヤな予感がした。いや自意識過剰だろう。
『あ、そいつ獅堂辰巳って言うんすけど、名前からしてマジ強そうじゃないっすか?』
『『めっちゃ強そう……』』
「…………陽太ァ」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんの名前だよ!! お兄ちゃんテレビ出るのっ!?」
「母さん、スーツをクリーニングに出しておいてくれっ、あとお気に入りのネクタイはピシッとアイロン掛け頼むぞっ」
「アナタ? 先走りすぎよ。それにテレビに出るって言っても辰巳だけ……。でも、その家族へのインタビューもあるかも知れないわね。ちょっとエステ行かなきゃ。ヒカリちゃんも若い内からちゃんとお肌のケアはするのよ?」
「はい、お母さま」
「あら、お母さまだって。キュンとしちゃうじゃないっ。ねぇ? タツミ?」
「あったまいてぇ……」
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