異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

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第三章

第114話:注意喚起

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「あ! し、失礼をいたしました!」

 一国の王子に対しての物言いではなかったと、ヴィオンは慌てて謝罪を口にした。

「構いません。特にヴィオンさんは、狙われている可能性の高い人物の一人ですから」
「え? ヴィオンさんが?」

 レイスは気にしないよう口にしたが、その内容を聞いた楓は不安そうに呟いた。

「はい。ヴィオンさんは依頼の最中、ザッシュとの諍いのせいで命を狙われました。その際、従魔がつけていた従魔具が彼の身を守ってくれたと聞いていますが、間違いありませんか?」
「は、はい。その従魔具はカエデさんが作ってくれたものですから、彼女が守ってくれたも同じことです」

 ヴィオンの言葉を聞いた楓は、冒険者ギルドで聞いた話を思い出す。

「あの時の話に出てきていた人なんですね?」
「あぁ。Sランク冒険者のザッシュ。実力はあるが、どうにも悪い噂の絶えない奴だな」
「自分だけ生き延びればいいって考えも持ってるみたいで、ザッシュのことを良く思っている冒険者はいないと思うわ」

 ヴィオンがザッシュについて語ると、続けてティアナも口を開いた。

「ティアナも会ったことがあるのか?」
「えぇ、ミリア。事あるごとにあーだこーだって文句言っては、面倒ごとは絶対にやらないような、嫌な奴だったわよ」
「ですが、レイス様。そのザッシュって人は、は既に指名手配されているんですよね? わざわざ危険を冒して、人の多い場所に姿を見せるでしょうか?」

 疑問を口にしたのは楓だ。
 指名手配されているのであれば、ほとぼりが冷めるまで身を隠しそうなものだと考えたのだが、彼女の疑問に答えたのはヴィオンだった。

「……いいや。ザッシュならやりかねん」
「そ、そうなんですか?」
「あいつの執念深さは常軌を逸している。おそらく、俺に強烈な恨みを抱いているはずだ」
「はい。ヴィオンさんが依頼の後、バルフェムへ向かった姿は僕たちを含め、多くの者が目撃していました」
「どこからか情報を仕入れてバルフェムに乗り込み、俺の隙を狙っている、ということですか?」

 ヴィオンの言葉にレイスは一つ頷いた。

「分かりました。俺は俺で、警戒しておきたいと思います。貴重な情報をありがとうございました」
「元を辿れば、僕たちの依頼が事を招いてしまったんですから、これくらいは当然です」
「……ねえ、ちょっといいかしら?」

 レイスの話はこれで終わりだったのだが、ここでティアナが口を挟んできた。

「どうしたんですか、ティアナさん?」
「ヴィオンが狙われるのは分かるわ。だけど、ザッシュのターゲットにカエデが含まれる可能性もあるんじゃないの?」
「……え? わ、私が、ですか?」

 ティアナの発言に、楓は驚きと同時に心臓が早鐘を打ち始める。

「えっと、どうして私なんですか? ティアナさん?」
「だって、ヴィオンが助かったのはライゴウの従魔具のおかげでしょ? その従魔具を作ったカエデのことを、逆恨みして狙うこともあるんじゃないの?」
「……ま、まさかー。そんなことあるはずないですよね?」

 楓はあり得ないと、自分に言い聞かせるようにやや大きな声でそう口にした。
 だが、誰からも同意を得られることはなく、むしろ全員が真剣な面持ちで何かを考え始めている。

「……ど、どうしたんですか、皆さん? アリスちゃんまで?」
「……そのザッシュって人、結構強かったんだ。あーしやみっちー、鈴っちじゃあ、どうすることもできなかった」

 再会してからずっと元気いっぱいだったアリスまでもが真剣な面持ちになっていることから、楓も徐々にではあるが事の重大さに気づかされてしまう。

「俺は自衛ができるから問題ないが、カエデさんには護衛を付けておいた方がいいんじゃないか?」
「それなら私が護衛をするわ。王都からバルフェムまで護衛したのも私だものね」
「お願いできるだろうか、ティアナ?」
「報酬は僕から出そう」

 話が勝手に進んで行く。
 それが楓の恐怖を加速させてしまう。

「……キャキュゲ、キャイキョウギュ?(……カエデ、大丈夫?)」

 一人だけ取り残されているんじゃないかという錯覚の中、楓の不安を感じ取ったピースが声を掛けてきた。

「……うん。ありがとう、ピース」

 楓の肩に乗り、その頬にスリスリしてきたピース。
 その温もりを感じながら、楓は気持ちを落ち着かせるために一度深呼吸をする。

「……あ、あの!」

 話がレイスたちだけで進んで行く中、楓が口を開いた。

「もし本当に私が狙われるとなれば、従魔具店で働いている人たちはどうなるんでしょうか?」

 冷静になった楓は、自分ではなくオルダナやリディ、ミリーのことが心配になってしまった。

「……ザッシュは目的のためなら手段を選ばない奴だ」
「……少なくても、営業中には私かヴィオンがいた方がいいかもね」
「確かに、そこの視点はなかったよ。申し訳ありません、カエデ様」
「レイス様。私たちも何かできないでしょうか?」

 ティアナとヴィオンはやる気満々だ。
 特にヴィオンは、自分が楓たちを巻き込んだと思っており、脅威が去るまでは護衛を務める気でいた。
 レイスも楓の視点には気づいておらずお礼を伝えると、ミリアから何かできないかと提案してくれた。

「僕たちが堂々と前に立つことは難しいから、市井で情報を集めることから始めようか」
「かしこまりました」
「私とヴィオンはカエデたちの護衛で決定ね」
「巻き込んでしまってすまない、カエデさん」

 それぞれがやれることを口にしていき、最後にヴィオンは楓に謝罪を口にした。

「そんな。ヴィオンさんのせいじゃないですから」
「ってわけで。あんたは邪魔だから先に帰ったらどうかしら?」

 するとここで、ティアナはここまで黙り込んでいたアリスに声を掛けた。

「ティアナ、その言い方はないだろう」
「でもね、ヴィオン。護衛をするなら戦力外は必要ないの。むしろ邪魔になるって、あなたも分かっているでしょう?」
「それは……」
「何かあった時、私たちはカエデたちを守らないといけない。この子を守ってあげられないのよ」

 言葉はきついが、ティアナはアリスのことを心配していた。
 今ではアリスも楓と同じで、異世界から召喚された人間だと分かっている。
 ならば、王城に帰した方が安全だと分かっていた。
 それはヴィオンも同じで、だからこそ何も言えなくなってしまう。

「……あーしも、犬っちを守る!」
「アリスちゃん!」
「あんたねえ! 私の話を聞いてたの? 足手まといなのよ!」
「あーしだって頑張ってきたの! 諦めない! 絶対にね!」

 軽い感じで話をしていたアリスが、力強い言葉をそう言い切った。
 ティアナもアリスの迫力に押され、何も言えなくなってしまう。

「あーしのスキル〈武闘王〉で、犬っちを守ってみせるんだから!」
「「……ぶ、〈武闘王〉だってええええっ!?」」
「え? もしかして、アリスちゃんのスキルって、ものすごくすごいスキルなの?」

 ティアナとヴィオンが驚きの声を上げる中、楓は何がすごいのか分からず困惑顔だ。
 とはいえ、楓としては何が起きるか分からない以上、頼れる人が多いに越したことはない。

「……それじゃあ、お願いできるかな? アリスちゃん?」
「まっかせてー!」
「……はぁ。分かったわよ。ただし、足手まといだと分かったら、容赦なく引っぺがすからね!」

 楓が納得したのだから、これ以上は何も言えない。
 それでも楓を守るためならと、ティアナは厳しい言葉を投げ掛けた。

「りょーかい! そうならないよう、あーしも頑張るかー!」
「……はあぁぁ~。なんだか、力が抜けちゃうわ」

 こうして、レイスたちからの近況報告が終わったのだった。
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