異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

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第三章

第113話:嬉しい来客

「……ん? 君は確か、王家の依頼で行った先にいた――」
「大嶺アリスでーす! よろしくねー!」

 アリスの顔を覚えていたヴィオンが口を開くと、アリスはすかさず立ち上がり、彼に近づこうとした。

「あんた、何様よ? 勝手に近づかないでくれるかしら?」

 しかし、ヴィオンとアリスの間にティアナが立ち塞がると、ドスの利いた声で言い放った。

「……あんた、誰?」
「あんたこそ誰よ!」
「お、おいおい。二人とも、落ち着けって」
「「落ち着けるわけないでしょうが!」」

 ケンカ腰のアリスに対して、ティアナも負けてはいない。
 なんとなく騒動の中心にいそうだと思ったヴィオンが止めようと口を開いたが、何故か二人から怒鳴られてしまい何も言えなくなってしまう。

「ティアナさん! アリスちゃんも、落ち着いて! ね? ね?」

 ここで楓も間に入ると、睨み合っていた二人は同時に顔を背け、アリスは先ほどまで座っていた椅子にドカッと腰掛ける。

「ちょっと、カエデ! 誰なのよ、あいつは!」
「えっと、アリスちゃんって言って、私のお友達……なのかな?」
「あーしと犬っちは、心の友だもんねー!」
「そうなの!?」

 アリスの言葉に楓自身が驚きの声を上げた。

「私とカエデは姉妹みたいな仲なのよ? たかだかお友達程度のあんたに、間に入ってこられても困るんですけど~?」
「はぁ~? あーしに言ってるわけ~?」

 再び立ち上がろうとしたアリスを見て、楓はそちらへ駆け寄っていく。

「ティアナ」

 するとここで、黙って様子を見ていたミリアが口を開いた。

「誰よ! ……って、え? なんでミリアがここにいるの? え? ってことは、もしかして……」
「ミリア」
「はい。失礼いたします」

 ティアナがレイスに気づく前に、彼はミリアへ声を掛けた。
 ミリアもレイスが何を言わんとしているのかを理解し、すぐに開かれたままの扉を閉めた。

「初めまして、ティアナさん。ヴィオンさんはお久しぶりです」
「なっ!? ど、どうしてレイス殿下がこちらに?」

 ティアナは手で顔を覆い何も言えず、ヴィオンは依頼の最中に何度か声を掛けてもらっていたからか、驚きと共になんとか質問を口にすることができた。

「色々と説明する必要はありそうだけど……カエデ様。彼らはどこまで知っているのかな?」

 レイスの質問は、ティアナとヴィオンが楓の秘密――異世界から召喚された人間だと知っているのか、というものだ。
 そのことに楓も気づき、すぐに答える。

「ティアナさんだけです」
「なるほど。……さて、どうしたものかな」

 ここにきてレイスは、真剣な面持ちで腕組みを始めた。
 先ほどまではどこか年相応の表情も垣間見えていたが、今は違う。
 王族としての表情に変わり、この場をどうするべきかを思案する。

「えぇ~? あーしは別にいいけど~? だって、ヴィオン様はあーしの王子様なんだし~?」
「だからあんたはなんなのよ!」
「あーしは犬っちと同じで~、異世界から来たんだよ~? すごくな~い?」
「ちょっと、アリスちゃん!?」
「なーに、犬っち~? …………あー……もしかして、やっちゃった感じ?」

 慌てた様子の楓に、顔を覆っているレイスとミリア。ティアナも口をパクパクさせながらアリスを見ている。
 そんな彼女たちの様子を見たアリスは、自分が言ってはいけないことを言ってしまったと気づいてしまった。

「……異世界から来た、だと? それに、カエデさんも?」
「あ、いや、その……だ、黙っていて、すみませんでした!」

 誤魔化しようがない状況で、楓は素直に謝ることにした。
 だが、ヴィオンは驚きはしたものの、特に怒っているというわけではない。
 むしろ、怒りなど皆無だった。

「いや、謝る必要はないよ、カエデさん。それだけの重要なこと、おいそれと話せるものではないからな」
「……あ、ありがとうございます!」
「それに……レイス殿下がいらっしゃるということは、王家も関わっていることなんだろう?」
「……その通りです、ヴィオンさん」
「レイス様」

 楓とアリスの正体を知られたのだから、レイスも隠す必要はなくなった。
 しかし、ミリアとしてはレイスの安全が第一だ。
 異世界召喚と聞いたヴィオンが、王家に対してどのような感情を抱くのか分からない以上、警戒するに越したことはなかった。

「安心してちょうだい、ミリア。ヴィオンは大丈夫だから」

 そこへミリアの友人でもあるティアナが口を開いた。

「だが……」
「僕もヴィオンさんのことは信頼している。だから警戒を解いてくれないか、ミリア?」
「……かしこまりました」

 ティアナの言葉にレイスも同意したため、ミリアも警戒を解いた。
 するとヴィオンは小さく息を吐く。ミリアに警戒されていたことに気づいていたからだ。

「しかし、それなら俺は席を外した方がよろしいですか? 内密な話もあるでしょうし」
「私も外そうかしら?」

 レイスが楓を訪ねてきた。それだけでヴィオンとティアナは部外者になるだろう。 
 そう考えての発言だったが、レイスは二人が出て行こうとするのを制止する。

「待ってください。カエデ様に近況報告をしていましたが、本題はここからなんです」
「え? そうなの?」

 驚きの声を漏らした楓に、レイスは頷きながら言葉を続ける。

「指名依頼で来ていたザッシュ。彼がバルフェムに潜んでいる可能性が浮上しました」
「な、なんだと!?」

 レイスの言葉を受けて、ヴィオンが驚きの声を上げた。
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