転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未

文字の大きさ
62 / 72

62話

しおりを挟む
(恐怖に飲まれるな!)

部下の死に動揺する空気を切り裂くように[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルが大きく息を吸い込んだ。

「グルァァァァァァッ!!!!(怯えるな……殺せッ!!)」

ビリビリと大気を震わせる裂帛の咆哮。 
それは単なる叫びではない。英雄としての覇気が、部下たちの心に巣食いかけた死への恐怖を強制的にねじ伏せ、闘争本能に火を点けたのだ。

「……ッ」

衝撃波めいた咆哮を正面から受け、鉄仮面の男──ゴア・シェルドーがわずかに眉をひそめたように見えた。
 彼は音もなくバックステップを踏み、瞬きする間に数メートルの距離を取る。

(速い……! バックステップだけで残像が見えるぞ!)

ゴアは細剣を構え直し、仮面の奥から冷ややかな視線を向けた。

「やかましいな……浅ましい獣だ」

感情のない侮蔑の言葉。 
だが、今のジェネラルたちに言葉は届かない。

「グルァ!(掛かれ!)」

ジェネラルの号令が飛ぶ。 
それと同時──恐怖を怒りに変えた[N]ホブゴブリン・ファイターや[N]オークたちが、死を恐れずに一斉にゴアへと躍りかかった!

「オオオオオオッ!!」

[N]ホブゴブリン・ファイターたちが盾を構えて突進し[N]オークが大ナタを振りかぶる。 
単純な暴力の嵐。まともに食らえば鉄塊とて粉砕する質量攻撃だ。

だが──。

「遅い……」

ゴア・シェルドーの姿がブレた。オークの大ナタが空を切り地面を砕く。
ホブゴブリンの盾が何もない空間を突き飛ばす。

(消えた!? )

俺は[視点共有]の解像度を限界まで上げる。 
──見えた。奴は魔物たちの攻撃の隙間──針の穴を通すような僅かな死角を散歩でもするかのように滑り抜けている!

「キィッ!」

木陰から[N]ゴブリン・レンジャーが放った必殺の矢。 
それすらもゴアは首を僅かに傾けただけで回避した。視線すら向けていない。

「芸がないな……所詮は薄汚い魔物か」

冷淡な呟きと共に、細剣が閃く。

「ブゴッ……!?」

すれ違いざまオークの太い腕から鮮血が噴き出した。 
腱を斬られたのか、オークが膝をつく。

(速すぎる……! [AGI 98]ってのは、ここまでデタラメなのか!)

「グルァッ!!」

部下の窮地に[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルが動いた。 
[将軍の魔剣]が唸りを上げ、ゴアの回避先を薙ぎ払う。衝撃波を伴う一撃!

「むっ……」

硬質な金属音が森に響き渡った。 
ジェネラルの剛剣を、ゴアは細剣の腹で受け流し──いや、弾いた!?

「STR(筋力)も高いのか……!」

ジェネラルの腕が痺れているのが伝わってくる。 
ゴアは涼しい顔でバックステップし、距離を取る。

「この魔物たち……弱いが統率が取れているな……こいつらはダンジョンから出てきた固体か」

ゴアが仮面の奥で目を細めた。
次の瞬間、彼から放たれる殺気が爆発的に膨れ上がる。

「──[瞬歩]」

ドンッ!!

足元の地面が爆ぜた。 
ゴアの姿が完全にかき消える。

「!? グルァッ(防御!!)」

ジェネラルの叫びが遅れて響く。 だが、その時には既に──。

「ガッ……!?」
「ギィッ……」

前衛にいた[N]ホブゴブリンの鎧の隙間、そして[N]ゴブリン・レンジャーの喉元から同時に血飛沫が上がっていた。

(いつの間に斬った!?)

「さて、あと何匹だ?」

血塗れの戦場で、ゴア・シェルドーだけが汚れ一つない姿で佇んでいた。 
切っ先は正確にジェネラルの心臓を狙っている。

だが……。

「グゥ……!!」

首を刎ねられたと思った[N]ホブゴブリン・ファイターは分厚い鎧ごと胸を深々と斬り裂かれながらも、膝をつかずに耐えていた。
 [N]ゴブリン・レンジャーも喉元を紅く染めて倒れ伏しているが、微かに肩が上下している。

(瀕死だが……即死は免れたか!)

[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルのスキル[戦陣の号令]による防御力底上げと、彼ら自身の戦士の誇りが皮一枚で冥府への道を繋ぎ止めたのだ。

だが──。

「ほう。意外と頑丈だな。ゴミにしては」

ゴア・シェルドーは冷淡に言い放つ。 
息一つ乱れていない。汗一つかいていない。 
彼にとっては、ここまでの攻防すら作業の一環でしかないのだ。

(どうする……!?)

俺は[視点共有]越しに、脂汗が噴き出るのを感じた。 勝てない。 ステータスの桁が違う。スキルの質が違う。 このまま戦い続ければ、全滅は時間の問題だ。

(ジェネラル! 一度退いて……いや、逃げ切れる相手じゃない!)

背を見せた瞬間、[瞬歩]で追いつかれて背後から[処刑執行]だ。 
詰んでいる。完全に格上だ。

だが──。

「グルルルゥ……ッ!!」

喉の奥から絞り出すような唸り声。
ジェネラルは退かなかった。 傷ついた体で[将軍の魔剣]を構え直し、さらに濃密な闘気を膨れ上がらせる。

彼は俺に語りかけていた。 
ここで自分が退けば後ろで倒れている部下たちは確実に殺される。 そして、この怪物を塔へ──主の元へ近づけてしまう、と。

(……やる気か!)

勝算なんてコンマ数%もないかもしれない。 
それでも、俺の最強の武人は瞳の光を失っていなかった。

(分かった……!)

俺は腹を括った。
小細工は通用しない。撤退も許されない。 ならばこの一瞬にすべてを注ぎ込むしかない。

(俺にできることはないのか!?)

俺は脳裏のDPカウンターを睨みつける。

[DP: 10,500]

これが俺の弾薬。これが俺の武器だ。 
この1万ポイントで、デタラメな速さを持つ怪物を止める手段を探せ!

(考えろ……考えるんだ!)

召喚? ダメだ、[N]ランクのミノタウロスが一瞬で首を飛ばされた。今さら数を増やしても肉壁にすらならない。 
進化? 今の状態でさらに上の[SR]へ進化できるとは思えないし、条件も満たしていないだろう。

(なら、アイテムか? 設備か? 何か奴の足を止める手立ては……!)

奴の強さは速さと一撃必殺だ。 まともにやり合っては勝ち目がない。
搦め手だ。奴の虚を突き、動きを封じ、ジェネラルの一撃を叩き込むための何かが必要だ!

(出ろ……! 今、この状況を覆せる可能性を!)

俺は祈るように、脳裏の【生成リスト】を全展開した!



♢   ♢   ♢

【生成リスト:緊急・戦闘支援】

[R] レア魔物ガチャ
コスト: 5,000 DP
効果: [R]ランク以上の魔物を即時召喚。

[N] ノーマル装備ガチャ × 3回
コスト: 3,000 DP × 3 (計9,000 DP)
効果: [N]ランク以上の魔法道具や武具を生成。

粘着の泥沼(スクロール): 1,500 DP
指定範囲の地面を底なしの泥沼に変え、AGIを大幅に低下させる。

重力の呪符: 2,000 DP
対象一帯に高重力を発生させ、動きを鈍らせる。

落とし穴(大): 500 DP
鉄格子の檻: 1,000 DP
毒ガスの噴出: 800 DP

♢   ♢   ♢


駄目だ……この程度じゃ勝てない……!

(ジェネラル……ッ!!)

[視点共有]から伝わってくるのは絶望的なまでの実力差だった。

「遅い……さっさと死ね」

ヒュンッ。

ゴア・シェルドーが指先一つ動かすような軽い動作で細剣を振るう。 
それだけでジェネラルの強固な[N]ランクの鎧がバターのように切り裂かれ、鮮血が舞う。

「グルァ……ッ!!」

ジェネラルは[将軍の魔剣]を振るうことすらできない。 防御に徹し、致命傷となる首や心臓への一撃だけを野生の勘と[戦士の誇り]でギリギリ回避している状態だ。 
だが、それも限界が近い。全身が切り刻まれ立っているのが不思議なほどだ。

「しぶといな。だが……つまらん」

ゴアの目が細められる。
遊びは終わりだ、という殺気が膨れ上がる。

(くそッ! 何かないのか! こいつの足を止める手段は!)

俺は脳裏のリストを必死にスクロールする。 
ポーション? 間に合わない! 
攻撃魔法? [AGI 98]に当たるわけがない! 
罠? 今から掘ってる暇はない!

(もっとだ……! もっと、根本的に状況をひっくり返す「何か」が!)

俺の焦燥に応えるように、リストが激しく明滅した。 【生成リスト】の深層。
普段は表示されない[緊急・特別]カテゴリの中に、禍々しくも頼もしい輝きを放つ項目が出現した。

(これだ……ッ!!)

俺は震える意識で詳細を確認する。



♢   ♢   ♢

【強制進化:魔剣の覚醒】

コスト: 10,000 DP

効果: ジェネラルの武器[将軍の魔剣]を一時的に[SR]ランク相当の魔剣へと強制覚醒させる。

剣に「必中」や「範囲切断」の概念を付与し、速さを無視して空間ごと敵を断ち切る一撃を放たせる。

♢   ♢   ♢



コスト10,000 DP。 現在の全財産である10,500 DPのほぼ全てを吐き出すことになる乾坤一擲の大博打だ。
だが、その効果は──「必中」と「範囲切断」。

どうする……?

俺は──
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...