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64話
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「キィキィッ!!(着いた!開けてくれ!)」
「(カッ!!)」
塔の最下層、[R]巨人の黒鉄門の前に悲痛な叫び声が響いた。
門番である[R]スケルトン・バウォークが、上空からの伝令を聞くや否や轟音と共に重厚な門を押し開ける。
なだれ込んできたのは血と泥にまみれた搬送部隊だった。
「チューッ!!(急げ! 死んじゃう!)」
無数の[UC]ジャイアントラットたちがぐったりとした巨体を背負って広間へと滑り込む。
[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルだ。 全身が切り刻まれ、鎧は砕け、深紅のマントは自身の血でどす黒く変色している。
背後には同じく瀕死の[N]ホブゴブリンや[N]ゴブリン・レンジャーが、[N]ハーピーたちに抱えられて運ばれてくる。
(ジェネラル……! みんな……!)
勝った。撃退した。
だが──代償はあまりにも大きい。
「神様……!?」
1階の広間で祈るように待機していたリナが搬送されてきた彼らを見て息を呑む。
震える手が口元を覆い、大きな瞳から涙が溢れ出した。
「嫌……そんな、ジェネラルさん……みんな……!」
彼女は恐怖で足がすくみそうになるのを必死に堪え、血の海と化したジェネラルの元へと駆け寄った。
「死なないで……!お願い、死なないで!」
リナは泥で汚れるのも構わずジェネラルの胸元に縋り付く。
そして震える手で[UC]乙女の聖杖をかざした。
「癒やしを……『ヒール』!!」
カッ!
エメラルドグリーンの光が、ジェネラルの身体を包み込む。
(頼む……! 治ってくれ!)
俺は祈るような気持ちでジェネラルのHPを凝視した。
[SR]崩界の魔剣は砕け散った。だからスリップダメージは消えているはずだ。
傷さえ塞げば、助かるはずなんだ!
だが──。
HP: 35/680 …… 36/680 …… 37/680
(……遅い!?)
回復の速度が遅い。
致命傷の出血は止まりかけているが、えぐられた肉や砕かれた骨までは修復できていない。
「くっ……治って……もっと、もっと……!」
リナの額から玉のような汗が滴り落ちる。
彼女の顔色は、みるみるうちに蒼白になっていく。
(まずい……! 傷が深すぎるんだ!)
Bランク冒険者による致命的な斬撃の数々。 それを癒やすにはリナの[治癒能力(低級)]では出力が足りない。
コップの水で火事を消そうとしているようなものだ。
「はぁ……はぁ……ッ! お願い……!」
リナが必死に魔力を絞り出す。 だが、杖の光は徐々に弱々しく明滅し始めていた。
(MP切れか!?)
まだ後ろには瀕死のホブゴブリンたちが控えている。 このままではジェネラル一人を救う前にリナが倒れ、全員が共倒れになってしまう……!
リナの顔色が白紙のように蒼白になっていく。 額から玉のような汗が流れ落ち杖を持つ手が小刻みに震えている。
(そういえば……俺はリナの詳細なステータスをちゃんと見たことがなかったな)
以前【訪問者管理】で確認した時は、名前と状態くらいしか表示されていなかった。
だが、今の俺ならもっと詳しく見れるはずだ。 彼女の限界を知るためにも確認しなければ!
俺は祈るような気持ちでウィンドウを開いた。
♢ ♢ ♢
名前: リナ
種族: 人間 (見習いヒーラー)
Lv: 3 HP: 12/15 | MP: 2/20
STR (筋力): 1
VIT (体力): 3
AGI (敏捷): 2
INT (知力): 7
特技
[治癒魔法 (Lv.1)]: 聖なる光で傷を癒やす。
[薬草知識 (Lv.1)]: 簡単な薬草を見分けることができる。
♢ ♢ ♢
(よ、弱い……!)
冒険者たちと比較すると数値の低さに愕然とする。
HPとMP以外は全て一桁。Lv.3の村娘だ、当然かもしれない。
だが、一番の問題はそこじゃない。
MP: 2/20
(MPが……もうない!!)
残り2。これじゃあもう『ヒール』を一回撃てるかどうかも怪しい!
「くっ……うぅ……っ!」
リナがガクッと膝をつく。
杖の光が蛍火のように弱々しく明滅し、消えかかっている。
(どうする……!? このままじゃジェネラルの傷が塞がりきる前に、リナが魔力枯渇で倒れる!)
MPを回復する手段……マナポーションなんて上等なものはない。
回復アイテム……。
(あ、そうだ!)
俺の思考が閃く。
(確か前にリナが作ったポーション! 俺がダンジョン宝箱を使って、塔の各階層に配置したはずだ!)
4階、10階、13階。
あそこにはリナ特製のポーションが入っている!
(取り合えず、あれを取ってきて飲ませれば……!)
だが、俺の希望は一瞬で絶望に塗りつぶされた。
(……いや、待て)
あそこにあるのは全部合わせてもたったの3つだ。
しかも、今は1階から上層の階層にある。
(間に合うか……!?)
今のこの塔は16階建てだ。[UC]ラットなどの運搬部隊は負傷者の搬送で疲れ切っている。
今から往復して回収してくるのに、どれだけの時間がかかる? 数分? 十数分?
(くそッ、塔の高さが……ここに来て仇になったか……!)
皮肉なことだ。
敵を阻むための広大なダンジョン構造が今は味方を救うための補給線を寸断している。
(なにか……なにか今すぐ全員を回復できる方法は……!?)
俺は必死に思考を巡らせる。
DPは残り500。 ガチャも引けない。設備も作れない。
(万策尽きた、のか……?)
俺の絶望に呼応するように、リナの杖から光が完全に消えた。
リナが崩れ落ち、ジェネラルの傷口からは再び赤黒い血が滲み出し始めた。 俺の思考が暗闇に塗りつぶされそうになった、その時だった。
「キィーッ! キシャァッ!(死体! 回収! してきた!)」
1階の入り口、[R]巨人の黒鉄門からけたたましい鳴き声が響き渡った。
(……え?)
俺が意識を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
[R]ブラッド・ストーカー率いる偵察・搬送部隊だけじゃない。
[N]セージ・スライム率いるスライム軍団、そして[N]コボルト・マイナーの採掘部隊までもが泥だらけになって雪崩れ込んできたのだ。
「プヨッ! プヨヨ!(運べ運べー!)」
「キャンッ!(重いぞ!)」
彼らが引きずっていたのは、資源や鉱石じゃない。 人間の死体だ。
ゴア・シェルドーが森で積み上げていた冒険者の山。 そして[R]ウルフ部隊が森で狩り尽くした冒険者たちの亡骸。
森中に散らばっていた全ての戦利品を、彼らは総出でかき集めて戻ってきたのだ!
(みんな……! よくやった、ありがとう!)
俺は魂が震えるのを感じた。
彼らは分かっていたのだ。主が、そして仲間たちが今一番必要としているものが「DP」であることを。
(入れてくれ! 全部、納品石にぶち込むんだ!)
「キィッ!(やれぇ!)」
号令と共に魔物たちが次々と死体を[DP納品石]へと放り投げる。
装備ごと、所持品ごと。 光の粒子が立ち上り俺の脳裏のカウンターが狂ったように回転を始めた。
[DP: 500] [DP: 12,000] [DP: 25,600] …… [DP: 44,200]
(よ、よんまん……!?)
俺は桁を見間違えたかと思った。 44,000 DPオーバー。
今まで見たこともない桁違いの数字だ!
Bランク級のゴアが殺した精鋭たちの死体が混ざっていたからか、それとも単純に数が膨大だったからか。
(これだけあれば……! これだけあれば、何とかできるはずだ!)
ガチャ? 設備? いや、そんな悠長なことじゃ間に合わない!
今すぐリナのMPを回復させるか、ジェネラルを治す手段が必要なんだ!
俺は脳裏のリストを祈るような速度でスクロールさせた。
回復アイテム……違う、そんなんじゃ足りない!
(くそッ、どこだ! どこにある!)
焦りで視界が狭まる中、とあるタブが激しく明滅しているのが目に入った。
♢ ♢ ♢
【訪問者・味方管理タブ】
♢ ♢ ♢
(ここか!?)
俺はそのタブを開く。そこには、弱って表示がグレーになりかけている「リナ」の名前があった。
そして、その下に──今までロックされていて見えなかった項目がDPが溜まったことで輝き出していた!
♢ ♢ ♢
【対象:リナ】
[DPによるレベルアップ]
[DPによるクラスチェンジ]
♢ ♢ ♢
(こ、これは……!?)
人間も……訪問者も魔物と同じようにDPで強化できるのか!? 俺は迷わずクラスチェンジの項目を押し込んだ。
(頼む! 回復系の、もっと強い職に!)
ウィンドウが展開し、二つの選択肢が俺の目の前に浮かび上がった!
♢ ♢ ♢
【リナのクラスチェンジ先】
[ダンジョン・メイデン]
概要: ダンジョンの加護を受けた乙女。ダンジョン内での活動においてステータス補正がかかり、配下の魔物への支援能力に特化する。
習得スキル: [迷宮の祈り(ダンジョンにいる間、全能力大幅アップ)]、[コアの守護(防御結界)]、[マナ・リンク(DPとMPを変換)]、[ダンジョン・ヒール(中回復。ダンジョン内でのみ、大回復)]
[聖女(見習い)]
概要: 神聖なる加護を受けた奇跡の代行者。強力な治癒魔法と浄化の力を操る、対アンデッド・対呪いのエキスパート。
習得スキル: [聖女の祈り(回復量増加)]、[聖なる光(浄化)]、[セイント・ヒール(大回復)]、[エリアヒール(範囲回復)]、[プロテクション(味方の防御力アップ)]
♢ ♢ ♢
(すげぇ……! 強そうだ!)
どちらも今の「見習いヒーラー」とは比べ物にならない。
だが──俺は、その下に小さく書かれたコストを見て絶句した。
【必要条件】
対象レベル: Lv.10以上 (現在 Lv.3)
クラスチェンジ費用: 10,000 DP
(い、一万……!?)
しかも、それだけじゃない。
現在Lv.3のリナを条件であるLv.10まで[DPによるレベルアップ]で引き上げるための費用を見積もると……。
Lv.3 → Lv.10 必要DP: 10,000 DP
(レベル上げにも一万!? 合計二万DPだと!?)
魔物の進化とは桁が違う。
魔物なら数百、数千でDPレベルが上がるのに、なんで人間はこんなにバカ高いんだ!?
訪問者だからか? それとも才能の開花にはそれだけの対価が必要ってことなのか!?
「くっ……うぅ……」
リナのうめき声が聞こえる。
ジェネラルの傷口からドクドクと血が溢れ出す。
(考えてる時間はない……!)
高い? 知ったことか! DPならある。44,000もあるんだ!
金で命が買えるなら安いもんだ!
だが、どっちにする──!?
「(カッ!!)」
塔の最下層、[R]巨人の黒鉄門の前に悲痛な叫び声が響いた。
門番である[R]スケルトン・バウォークが、上空からの伝令を聞くや否や轟音と共に重厚な門を押し開ける。
なだれ込んできたのは血と泥にまみれた搬送部隊だった。
「チューッ!!(急げ! 死んじゃう!)」
無数の[UC]ジャイアントラットたちがぐったりとした巨体を背負って広間へと滑り込む。
[R]ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルだ。 全身が切り刻まれ、鎧は砕け、深紅のマントは自身の血でどす黒く変色している。
背後には同じく瀕死の[N]ホブゴブリンや[N]ゴブリン・レンジャーが、[N]ハーピーたちに抱えられて運ばれてくる。
(ジェネラル……! みんな……!)
勝った。撃退した。
だが──代償はあまりにも大きい。
「神様……!?」
1階の広間で祈るように待機していたリナが搬送されてきた彼らを見て息を呑む。
震える手が口元を覆い、大きな瞳から涙が溢れ出した。
「嫌……そんな、ジェネラルさん……みんな……!」
彼女は恐怖で足がすくみそうになるのを必死に堪え、血の海と化したジェネラルの元へと駆け寄った。
「死なないで……!お願い、死なないで!」
リナは泥で汚れるのも構わずジェネラルの胸元に縋り付く。
そして震える手で[UC]乙女の聖杖をかざした。
「癒やしを……『ヒール』!!」
カッ!
エメラルドグリーンの光が、ジェネラルの身体を包み込む。
(頼む……! 治ってくれ!)
俺は祈るような気持ちでジェネラルのHPを凝視した。
[SR]崩界の魔剣は砕け散った。だからスリップダメージは消えているはずだ。
傷さえ塞げば、助かるはずなんだ!
だが──。
HP: 35/680 …… 36/680 …… 37/680
(……遅い!?)
回復の速度が遅い。
致命傷の出血は止まりかけているが、えぐられた肉や砕かれた骨までは修復できていない。
「くっ……治って……もっと、もっと……!」
リナの額から玉のような汗が滴り落ちる。
彼女の顔色は、みるみるうちに蒼白になっていく。
(まずい……! 傷が深すぎるんだ!)
Bランク冒険者による致命的な斬撃の数々。 それを癒やすにはリナの[治癒能力(低級)]では出力が足りない。
コップの水で火事を消そうとしているようなものだ。
「はぁ……はぁ……ッ! お願い……!」
リナが必死に魔力を絞り出す。 だが、杖の光は徐々に弱々しく明滅し始めていた。
(MP切れか!?)
まだ後ろには瀕死のホブゴブリンたちが控えている。 このままではジェネラル一人を救う前にリナが倒れ、全員が共倒れになってしまう……!
リナの顔色が白紙のように蒼白になっていく。 額から玉のような汗が流れ落ち杖を持つ手が小刻みに震えている。
(そういえば……俺はリナの詳細なステータスをちゃんと見たことがなかったな)
以前【訪問者管理】で確認した時は、名前と状態くらいしか表示されていなかった。
だが、今の俺ならもっと詳しく見れるはずだ。 彼女の限界を知るためにも確認しなければ!
俺は祈るような気持ちでウィンドウを開いた。
♢ ♢ ♢
名前: リナ
種族: 人間 (見習いヒーラー)
Lv: 3 HP: 12/15 | MP: 2/20
STR (筋力): 1
VIT (体力): 3
AGI (敏捷): 2
INT (知力): 7
特技
[治癒魔法 (Lv.1)]: 聖なる光で傷を癒やす。
[薬草知識 (Lv.1)]: 簡単な薬草を見分けることができる。
♢ ♢ ♢
(よ、弱い……!)
冒険者たちと比較すると数値の低さに愕然とする。
HPとMP以外は全て一桁。Lv.3の村娘だ、当然かもしれない。
だが、一番の問題はそこじゃない。
MP: 2/20
(MPが……もうない!!)
残り2。これじゃあもう『ヒール』を一回撃てるかどうかも怪しい!
「くっ……うぅ……っ!」
リナがガクッと膝をつく。
杖の光が蛍火のように弱々しく明滅し、消えかかっている。
(どうする……!? このままじゃジェネラルの傷が塞がりきる前に、リナが魔力枯渇で倒れる!)
MPを回復する手段……マナポーションなんて上等なものはない。
回復アイテム……。
(あ、そうだ!)
俺の思考が閃く。
(確か前にリナが作ったポーション! 俺がダンジョン宝箱を使って、塔の各階層に配置したはずだ!)
4階、10階、13階。
あそこにはリナ特製のポーションが入っている!
(取り合えず、あれを取ってきて飲ませれば……!)
だが、俺の希望は一瞬で絶望に塗りつぶされた。
(……いや、待て)
あそこにあるのは全部合わせてもたったの3つだ。
しかも、今は1階から上層の階層にある。
(間に合うか……!?)
今のこの塔は16階建てだ。[UC]ラットなどの運搬部隊は負傷者の搬送で疲れ切っている。
今から往復して回収してくるのに、どれだけの時間がかかる? 数分? 十数分?
(くそッ、塔の高さが……ここに来て仇になったか……!)
皮肉なことだ。
敵を阻むための広大なダンジョン構造が今は味方を救うための補給線を寸断している。
(なにか……なにか今すぐ全員を回復できる方法は……!?)
俺は必死に思考を巡らせる。
DPは残り500。 ガチャも引けない。設備も作れない。
(万策尽きた、のか……?)
俺の絶望に呼応するように、リナの杖から光が完全に消えた。
リナが崩れ落ち、ジェネラルの傷口からは再び赤黒い血が滲み出し始めた。 俺の思考が暗闇に塗りつぶされそうになった、その時だった。
「キィーッ! キシャァッ!(死体! 回収! してきた!)」
1階の入り口、[R]巨人の黒鉄門からけたたましい鳴き声が響き渡った。
(……え?)
俺が意識を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
[R]ブラッド・ストーカー率いる偵察・搬送部隊だけじゃない。
[N]セージ・スライム率いるスライム軍団、そして[N]コボルト・マイナーの採掘部隊までもが泥だらけになって雪崩れ込んできたのだ。
「プヨッ! プヨヨ!(運べ運べー!)」
「キャンッ!(重いぞ!)」
彼らが引きずっていたのは、資源や鉱石じゃない。 人間の死体だ。
ゴア・シェルドーが森で積み上げていた冒険者の山。 そして[R]ウルフ部隊が森で狩り尽くした冒険者たちの亡骸。
森中に散らばっていた全ての戦利品を、彼らは総出でかき集めて戻ってきたのだ!
(みんな……! よくやった、ありがとう!)
俺は魂が震えるのを感じた。
彼らは分かっていたのだ。主が、そして仲間たちが今一番必要としているものが「DP」であることを。
(入れてくれ! 全部、納品石にぶち込むんだ!)
「キィッ!(やれぇ!)」
号令と共に魔物たちが次々と死体を[DP納品石]へと放り投げる。
装備ごと、所持品ごと。 光の粒子が立ち上り俺の脳裏のカウンターが狂ったように回転を始めた。
[DP: 500] [DP: 12,000] [DP: 25,600] …… [DP: 44,200]
(よ、よんまん……!?)
俺は桁を見間違えたかと思った。 44,000 DPオーバー。
今まで見たこともない桁違いの数字だ!
Bランク級のゴアが殺した精鋭たちの死体が混ざっていたからか、それとも単純に数が膨大だったからか。
(これだけあれば……! これだけあれば、何とかできるはずだ!)
ガチャ? 設備? いや、そんな悠長なことじゃ間に合わない!
今すぐリナのMPを回復させるか、ジェネラルを治す手段が必要なんだ!
俺は脳裏のリストを祈るような速度でスクロールさせた。
回復アイテム……違う、そんなんじゃ足りない!
(くそッ、どこだ! どこにある!)
焦りで視界が狭まる中、とあるタブが激しく明滅しているのが目に入った。
♢ ♢ ♢
【訪問者・味方管理タブ】
♢ ♢ ♢
(ここか!?)
俺はそのタブを開く。そこには、弱って表示がグレーになりかけている「リナ」の名前があった。
そして、その下に──今までロックされていて見えなかった項目がDPが溜まったことで輝き出していた!
♢ ♢ ♢
【対象:リナ】
[DPによるレベルアップ]
[DPによるクラスチェンジ]
♢ ♢ ♢
(こ、これは……!?)
人間も……訪問者も魔物と同じようにDPで強化できるのか!? 俺は迷わずクラスチェンジの項目を押し込んだ。
(頼む! 回復系の、もっと強い職に!)
ウィンドウが展開し、二つの選択肢が俺の目の前に浮かび上がった!
♢ ♢ ♢
【リナのクラスチェンジ先】
[ダンジョン・メイデン]
概要: ダンジョンの加護を受けた乙女。ダンジョン内での活動においてステータス補正がかかり、配下の魔物への支援能力に特化する。
習得スキル: [迷宮の祈り(ダンジョンにいる間、全能力大幅アップ)]、[コアの守護(防御結界)]、[マナ・リンク(DPとMPを変換)]、[ダンジョン・ヒール(中回復。ダンジョン内でのみ、大回復)]
[聖女(見習い)]
概要: 神聖なる加護を受けた奇跡の代行者。強力な治癒魔法と浄化の力を操る、対アンデッド・対呪いのエキスパート。
習得スキル: [聖女の祈り(回復量増加)]、[聖なる光(浄化)]、[セイント・ヒール(大回復)]、[エリアヒール(範囲回復)]、[プロテクション(味方の防御力アップ)]
♢ ♢ ♢
(すげぇ……! 強そうだ!)
どちらも今の「見習いヒーラー」とは比べ物にならない。
だが──俺は、その下に小さく書かれたコストを見て絶句した。
【必要条件】
対象レベル: Lv.10以上 (現在 Lv.3)
クラスチェンジ費用: 10,000 DP
(い、一万……!?)
しかも、それだけじゃない。
現在Lv.3のリナを条件であるLv.10まで[DPによるレベルアップ]で引き上げるための費用を見積もると……。
Lv.3 → Lv.10 必要DP: 10,000 DP
(レベル上げにも一万!? 合計二万DPだと!?)
魔物の進化とは桁が違う。
魔物なら数百、数千でDPレベルが上がるのに、なんで人間はこんなにバカ高いんだ!?
訪問者だからか? それとも才能の開花にはそれだけの対価が必要ってことなのか!?
「くっ……うぅ……」
リナのうめき声が聞こえる。
ジェネラルの傷口からドクドクと血が溢れ出す。
(考えてる時間はない……!)
高い? 知ったことか! DPならある。44,000もあるんだ!
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「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
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