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一章 魔王城、意外と居心地がいい気がする。
52※
しおりを挟む「あ、ぐ……ぅ」
「! おいこら、唇噛むんじゃねぇぜ。傷になるだろっ」
「ふっひゃへ、やめへぇ……っ」
直接的なところを触れられて我慢できず、咄嗟に唇を噛んで声を殺してしまう。
そんな俺を咎め、アゼルは背中を指圧していた手をそのまま口の中に突っ込んできた。
「んぶ、あぜぅ、ひゃめ……ひ、ひぃ」
指のせいで口が閉じきれず、指と唇の間から唾液がとろとろとこぼれ落ちるが、拭うこともままならない。
紅潮し、だらしなくふやけきった顔で、ぼやけた視野に映るアゼルを見上げる。
理性が吹き飛ぶ寸前ながら、必死に全く力の入っていない手をアゼルの手に片方ずつ添えた。
「ひゃえへ、あぜぅ……っ」
縋っているのではなく引き離そうとしているのだが、同じ男として悲しいことにビクともしない。
「っなん……っ、か、かわ……!」
「! ンッう、ぅん……っ」
その途端、口内に差し込まれていた指が抜け、唾液でぬかるんだ唇を──アゼルの柔らかな唇が、深く覆った。
「ん、ん、アゼ、ぁ、ん……っ」
「ん……ふ、かわいい、シャル、かわいい……!」
じゅぷじゅぷと俺の肉茎を擦りながら、アゼルは欠片も愛らしくない俺に使うべきじゃない形容詞を飛ばしつつ、甘やかすようなキスをする。
あぁ、もう……だめだ……頭がぼうとして、うまく回らない。
崩れそうになりながら繋いだ端から焼き切れていくような理性の糸。
それが完全に霧散し、消えてしまった。痺れて動かない舌をアゼルの舌が絡み取り、ちゅっと絞るように吸う。
「ん、くぁ……ぁあ……」
「シャル、もっと俺に見せろ」
もっともっとと求められて止まらない、食い尽くすような荒々しいキス。
アゼルに体を支えられてなければ立っていられないほど、息も絶え絶えに濡れた唇を戦慄かせる。
超至近距離にある、口付けるのがたまらないとでも言いたげな美貌。
それが何度も俺の名を呼んで、溢れる唾液を舐め取っては、更に零させるように攻め立てる。
そうやってしばらく、脳のストッパーが崩れ落ちるほど思う様貪られた。
あとに引けない快楽に漬け込まれてしまった頃には、俺は未だ毒を吐き出しきれていない体を持て余し、達することが叶わず張り詰めた屹立を持て余す。
キスばかりじゃ足りない。
もっと触って、触らせてほしい。
ちゃんとイキたい。
こうなったらやけである。モジモジと身悶えながら、どうしてこうなったのか、とアゼルの暴走を思い出した。
「あぁ、クソ、澄まし顔の禁欲的な、勇者のくせに……! めちゃくちゃ、かわいい……っ、なんでこんな、なんか、エロい……なんなんだこれっ……?」
「はっ、はっ……っん……」
──そう、そうだ。
催淫毒に犯されて発情した俺の体の責任を取ると、アゼルは言っていたんだ。
それがどうだ? ぼんやりと眺める視界の中のアゼルはその責任を果たしていない。
俺の意識がいまいちはっきりしていないのをいいことにニコニコと嬉しそうに大興奮しながら、好き勝手に唇に吸いついて、キスをしてくる。
キスに夢中で、俺のモノを握るアゼルの手は当然静止していた。
体を愛撫され、アゼルの指で擦られ育てられた俺のモノは、トプトプと透明な粘液を垂らし、切なく震えて待っているのに。
これじゃあ責任を取ってもらえていない。俺はイキたいのだ。
「ん、ふ……ぅ、あっ……」
クチュ……と卑猥な水音が響いた。アゼルのキスに応えながら、ゆらゆらと腰を動かす。
止まった手に張り詰めた陰茎を擦りつけ、俺は自ら、慰めることにした。
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