本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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二章 勇者兼捕虜兼魔王専属吸血家畜兼お菓子屋さんとは俺のことだ。

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 しかし、コレはなんというか、魔王の魔王が魔王だぞ。

 こんなになっていてもまだマックスじゃないのか? どうして魔王がエクスカリバーを持っているんだ?

 魔王チートもいい加減にしろ。
 男として敗北感があることと、未来を思うとやや青ざめる。

 だって好きになってもらう側として受身に回る気の俺は、最終的にこれをあれしないといけないんだろう?

 なるほど。俺が鍛えていたのはこのためだったのかもしれない。


「魔王のポテンシャルに限界はあるのだろうか……」

「俺の心臓の限界は今ここだぞオイ」

「ぅっ」


 自分と彼の能力差を省みて、かなり真剣な顔でアゼルの手に重ねていたほうの手を顎に当てて悩む。

 すると凛とした声が限界を告げ、胸を触る手が避けられていた突起に触れた。

 サワサワと足の間を触られる。なにかのスイッチが入ったのか、アゼルは俺のお触りを受け入れる腹を括ったらしい。


「は……良かった、ドキドキしてもらえないかと思った。っふ」


 口元を緩めると、無言の指がアバラの凹凸を誤魔化すように滑った。そしてまた胸に帰ってくる。

 仏頂面で胸を捏ね回されてもムズムズと掻痒感があるだけで、あまり快感は感じない。

 けれどわかりやすいお触りはアゼルに効いている気がした。

 積極的な子が好きだというのとボディタッチが有効という前の世界の知識を、俺は信じる。……信じるからな?


「くっ……今日血ィ吸ってねぇよな……? なんでそんな、……ンなの、たまんねぇよ、わかってんのか? 俺、男だぜ? ……お前にそんなことされたら、ダメな衝動が……止まらねぇ」

「ンン……ふ、ははっ」

「馬鹿っ、笑ってんなよ?」


 両方の乳首をグリグリと捻られながら漏れ出たセリフに吹き出してしまう。

 あんまり都合がいいもので、つい。

 耳元で怒られごめんと言いつつも、アゼルの片方の手を取って、それを俺の足の間に持ってきた。

 あぁもう、……恥ずかしいな。
 こんなこと、どう思われるのやらわからないし、怖いが、もう行けるところまで行くしかないんじゃないか。

 俺は今恋をしているのだから、きっと恋愛特権で許されると思うのだ。


「っな……」


 掴んだ手にスル、と触れさせたのは、俺の緩く勃起したモノ。

 ダメな衝動、おそろいだ。
 俺だって、吸血されていないのに、触られただけでこんなにしている。

 はしたないと思うが、抑えられない欲。


「俺も男だろう? お前に触られたら……す、すげぇ勃ってる」


 アゼルの口調を真似てセリフをそのまま返す。掴んだ手がビクッと跳ねた。

 恥ずかしさがもうどうにも耐えられなくなって、うつむいてどうでもいいところに視線を転がした。

 こんなの、引かれるかもしれない。だが、ここまで俺なりの、ゆ、誘惑を、した。

 ゴクン、と緊張を飲み下す。

 俺が恋をしたのは、過去に一度だけ。
 その人は女性だったし、わかるとおり恋愛ベタの俺ではうまくはいかなかった。

 だから男だから、女だから好きだとか、こうして強引に押して誘惑に乗ってくれたからだとか……そういうものじゃない。

 今の俺の恋の熱は相手が魔王でもその時と同じくらい、熱く、いやもっとかもしれない。そういう熱で、身体がとろけそうだ。

 おかしいか?
 気がついたらこんな深みにいたんだ。

 お前が好きだから俺の体はこうなっているって、伝わっているだろう?

 だから俺を好きになって、くれないか。


「……俺とこういうこと、一緒に、シようか」

「──っ」


 途端、言葉を忘れたような荒々しい勢いで身体をベッドに押し倒され、のしかかる男の顔が見える。

 我慢できないとばかりに眉を切なげに寄せて、耳まで真っ赤になった愛しい表情。

 お前も止まらない。一緒だ。

 クスリと笑ってしまったが……なんだか俺は、嬉しすぎてイッてしまいそうだった。




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