116 / 901
二章 勇者兼捕虜兼魔王専属吸血家畜兼お菓子屋さんとは俺のことだ。
60※
しおりを挟む◇ ◇ ◇
体の器官という意味合いでは知っていた、前立腺というもの。
精液のいくらかの液体を分泌する、耳馴染みないおぼろげな器官。
それを触ると気持ちがいい。
そんな噂も知ってはいた。
知ってはいたが──まさか自分がそこで乱れさせられるとは、思わなかった。
「あっ、あ……っ」
体内から襲い来る我慢ならない刺激に、ドク、トプ、と溢れ出すはしたない淫液。
もう何回目かの絶頂を迎え、俺は息も絶え絶えにか細く喘ぐ。
ヒク、と鈴口をヒクつかせながら勢いもなくとろとろと零すだけの射精。
まだ出るものがあったことに驚くくらい、繰り返しそれを味わった。
「ひう、ぅ……」
ふかふかの大きなクッションを腕の間に挟みうつぶせになったまま、尻だけを上げた恥ずかしい体勢で身悶える。
羞恥で瞳が潤んで仕方ない。
正確な時間はわからないが、とにかくずっと。
俺は隠しようもなく曝け出した割れ目の奥を、体を作り変えられているのかと思うほど執拗に、深く、アゼルの四本の長く美しい指であやされていた。
「こんなに全身濡らして、干からびねぇのか?」
「ン……っ、ひふぁ、ひからびるほどは、しないでくれ……」
顎や舌先に力が入らず、なんでもない言葉を噛んだ。それを聞いた背後のアゼルがニマニマと楽しそうなのがなんとも言えない。
けれど全身濡れているというのは、あながち間違いではなかった。
しっとりと汗ばむ肌はもちろん、口元の栓は緩みきっている。
クッションに恥ずかしげもなく唾液をこぼし、それをうまくすすることもできない。
腹の下のシーツは、すっかり俺の白濁液でぐちゃぐちゃだった。
シーツが乱れて膝下に触れると、その水たまりはクチュと音をたてる。
そこをこれ以上汚さないようにしたいのだが、アゼルが尻を手で支えていなければとっくに溺れているくらいには、足腰が立たないとろけた体。
「も、中、おかしい……はっ……ンく、……俺の中……絶対、溶けてるだろ、うっ……」
「馬鹿、溶かすかよ。ちゃんと『もっと欲しい』って俺の指に絡みついて離さねぇから、安心しろ」
「ふっ」
熱く愛撫されすぎて溶けていてもおかしくない。
本気でそう思ったのにアゼルは至って真剣に否定し、俺の尾てい骨のあたりを舌で舐め、褒めるように股関節のくぼみから太ももの筋をツツ、と指圧しながらなぞる。
不意の刺激に一瞬背筋が仰け反るが、すぐにクッションに顔を埋めた。
萎えたはずの陰茎がヒクリと頭をもたげようとしていることがわかる。
「それに、ほら」
「く……っんん……」
「せっかくやっと、ココだけでイケるようになったんじゃねぇか。シャル」
「あ、あっ」
ココ、と後孔の入口からしばらくの場所にあるしこりをトントンと指先で叩かれ、反射的に声が漏れた。
それに合わせてきゅ、きゅ、とアゼルの指に絡みつく媚肉。
俺の意思じゃない。
こんな体じゃなかったんだ。ただ癖付くまで繰り返された成れの果て。
──懸命に誘ったあと。
押し倒された俺にアゼルが経験があるかを尋ね、俺はそれにノーと答えた。
めんどうをかけるだろうからあまり言いたくはないが、嘘を吐いてもすぐにバレるだろう? ……あとは個人的に、アゼルに嘘を吐きたくない。
そして不器用でも優しいアゼルはそれを知って、妙に狼狽えてしまってな。
なおかつ謎に使命感溢れるやる気を出してしまったのだ。
それで抱かれる側に負担がかかるし、初めては素質がないとなかなか悦くならないからと説明してくれた。かなり深刻そうに。
結果的にちゃんと一緒に気持ちよくなれるよう、俺が中でイケるまで挿れないって話になったんだ。
正直後ろの快感というのを侮っていた俺はココだけで射精できるはずがないと思い、気持ちよくなくてもいいと言ったんだが……。
それはできないことがほとんどないアゼルの負けず嫌いに、火をつけてしまったようで。
「ひっ……く、なったじゃなく、て、されたん、あ……っ」
「当たり前だろ? お前の外側のイイところなんか、手が覚えてる。内側を覚えるのだって余裕に決まってんだ。フフン」
「はぁ、あ、ふっ……」
快感が下腹部に溜まるたびに濡れた屹立を擦られ、イかされ、首筋やら背骨のラインやら肩甲骨の谷間やら、俺の密かな性感帯を軒並み弄られ。
ドヤ顔のアゼルの手腕により体を火照らせられてついに目標達成と、今に至るわけだ。
107
あなたにおすすめの小説
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります
かとらり。
BL
前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。
勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。
風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。
どうやらその子どもは勇者の子供らしく…
姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
【完結】凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
みやこ嬢
BL
2023/01/27 完結!全117話
【強面の凄腕冒険者×心に傷を抱えた支援役】
孤児院出身のライルは田舎町オクトの冒険者ギルドで下働きをしている20歳の青年。過去に冒険者から騙されたり酷い目に遭わされた経験があり、本来の仕事である支援役[サポーター]業から遠退いていた。
しかし、とある理由から支援を必要とする冒険者を紹介され、久々にパーティーを組むことに。
その冒険者ゼルドは顔に目立つ傷があり、大柄で無口なため周りから恐れられていた。ライルも最初のうちは怯えていたが、強面の外見に似合わず優しくて礼儀正しい彼に次第に打ち解けていった。
組んで何度目かのダンジョン探索中、身を呈してライルを守った際にゼルドの鎧が破損。代わりに発見した鎧を装備したら脱げなくなってしまう。責任を感じたライルは、彼が少しでも快適に過ごせるよう今まで以上に世話を焼くように。
失敗続きにも関わらず対等な仲間として扱われていくうちに、ライルの心の傷が癒やされていく。
鎧を外すためのアイテムを探しながら、少しずつ距離を縮めていく冒険者二人の物語。
★・★・★・★・★・★・★・★
無自覚&両片想い状態でイチャイチャしている様子をお楽しみください。
感想ありましたら是非お寄せください。作者が喜びます♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる