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三章 勇者と偽勇者と恩人勇者。
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「……んン……」
やわらかな太陽が眩しくて目を覚ますと、案の定朝だった。
ムク、と起き上がる。寝起きがいいので、朝は寝ぼけたりしない俺だ。夜に眠い時はそれなりにボケているけれどな。
なんだか今日は変な夢を見た気がする……俺がハムスターになるような、ううん。
目をこすって髪をなで、瞬きを数回。
上掛けを少しめくると一応服を着ていたが、体の違和感は雄弁だった。
「あぁ……ふへ」
ニマ、とにやけてしまう顔。
やあ世界、おはようございます。
こんにちは。こんばんは。
異世界から召喚された勇者でなんだかんだと魔王の恋人になってしまった、ただの大河勝流──シャルです。
世界がどれだかわからないが、俺はおはようございますだ。今日は天気がいい。
さて、思い返すこと半日前。
俺がアゼルへの恋を自覚して、紆余曲折あり、俺は勢い余って魔王に愛の告白をしてしまったというわけだった。
うん。何度思い返しても不甲斐ない。
拙いながらにああしようこうしようと画策していたことを全くプランどおりに進めることもなく、始める前にアイラブユーのストレート勝負である。
アゼルが受け入れてくれたからいいものの、なんとも締まりのないマヌケな告白だった。付き合ってもらえたのは奇跡だ。
そもそもの話。
俺は駆け引きなんてできる器用な頭を、持ち合わせていない。
なのにボディタッチと大胆作戦で身体から進めて俺を恋愛対象として意識してもらおうなんて、難易度が高いにもほどがあったのだ。
完全なうっかりである。
アゼルが好きすぎて勢いが……ううん、
俺の理想ではな? 個人的な大胆のイメージなんだが、なんというかこう……俺がアゼルに乗るんだ。
そしてええと、なんとか気持ちよくなってもらってな?
まぁ恋かどうかは置いといて、抱くくらいならいいかなと思ってもらうだろう?
そうして事後に余裕の俺が「俺とするのも悪くないんじゃないか?」的なことを言って徐々に体から虜にしつつ、好みのタイプもリサーチしていくんだ。
そうしていくうちに虚勢の体も性行為に慣れているのでは、という壮大な画策だった。
冷静に考えると俺にできるわけがないのだが、その時はやるしかない! やってやるぜ! という気分だったのである。
結果はもちろんお察し。
俺が乗っかられて一発で虜にされ身体もすっかり開発されるという、魔王のポテンシャルの真骨頂を見せられ終わったのであった。
ちょっと悔しい。
ほんのちょっとだけだぞ。想いが通じ合った幸せな一夜の思い出だ。
「体がギシギシするのと、あそこがアレなのがマズイけれど……ふふふ」
ほわほわした心地を抱えたままフカフカクッションにもたれかかり、隣でかわいい寝顔で眠っているアゼルの寝顔をしばし眺める。
眠っていてもかっこよくて綺麗なアゼルは、いくら眺めていても飽きない。
自然とニマニマしてしまう。
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