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二皿目 シャル様が物申す
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「ふっふっふ……満足かトルン……。俺はな、非常に恥ずかしいぞ……今はいっそ無敵だ……。ある意味お望みどおり爆発してただろう……」
「はい、なんかもうすんません……。ちょっとあなたが普段光属性すぎると言うか、根暗な僕と真逆の性格すぎて余計に僻んでたんですけど……可愛いにコンプレックスあるとは、ほんとすんません……。大丈夫ですよ、きっと一部の人には可愛く見えてると思います……僕にはわかりませんけど……」
「お世辞はいいんだ……。俺だって実のところ、やたら美形ばかりの魔族に辟易している……。地味男のくせに独占欲丸出しの恥ずかしいところを、早いうちに晒せてよかったとしよう……」
「あっこの人意外と地味仲間……ありがとうございます、僕も美形は嫌いです……。モテる男は特に嫌いです……」
ハチャメチャな騒動の後。
ソファーの隅で膝を抱え、フフフフと死んだ瞳で薄ら笑いを浮かべている俺とトルンは、こうして燃え尽きることで和解した。
さてさて。
言い訳をさせてもらえるだろうか?
いやな? アゼルを好きになるまでは別に、可愛いとか可愛くないとか、興味はなかった。
容姿の出来栄えだって、気にしていなかったんだ。本当だぞ。
だが付き合ってから俺は、こう、一般的に愛される可愛らしさというのがない自分が、どうにもな。
更に自分が意外と不安になりやすいタイプだと気がついて……。
こう、俺は気持ちがなんでも重いんだ。
性格が愚直だからか、とても重い。
それで過去、初めての彼女にこっぴどくフラれている。
可愛げがないとも言われていた。
更に詳しく言えば、一緒にいて面白くない。真面目すぎて面倒くさい。イエスマンすぎて自分の意見がない。
その他色々……あぁ、思い出すと目から光が消えていく。
コホン、閑話休題。
俺の過去はいいんだ。うん。
過去を思い出して闇のオーラを強めた俺を、トルンがそおっと伺うように見つめてきた。
「それであの、シャル様……つきましてはその、僕の尻を踏みつけている魔王様に、どうかお口添えを……」
「…………」
「あぁ……すまん、現実を見たくなかった」
床にひれ伏して尻を上げ、土下座状態のトルンの尻に、その長い足をぐっと添えて踏みつけているアゼルを、ようやく直視する。
アゼルは無言だった。
それも仕方ない。
アゼルは今日、ただいつもどおり仕事していたら、突然手紙で嫁に呼び出されたのだ。
まったく急に呼び出すなんてしょうがねぇ嫁だなと、ウキウキワクワク飛んできた。
やってきたら想像を凌駕する不機嫌な嫁。
気に食わない勇者と可愛い部下の前で、強制羞恥プレイ。従ったのに殴られる。
トドメは謎の顔面への罵倒と、ジャーマンスープレックス。
俺への愛で性癖を開花させたと思ったら、くだらない僻みだった呪いの元凶判明。
自分のものに手を出されたのが気に食わないので仕置こうとしたら、なぜか守っている筈の嫁にハッ倒されて、椅子にされる体たらく。
最終的に呪いが解除されて、さぁいつもの新婚さんいらっしゃい! だと思っていたのに、まさかのジャーマン返し要求。
暴れる嫁。
ハッピーエンドにならない謎現象。
尚仕事を放置しているため、後でお母さん──もとい、ライゼンさんに小言を言われること間違いなしである。
この場で一番の被害者兼、最高権力者だ。
普段なら拷問からの処刑、とユリスが言っていたが、アゼルは無言でトルンを踏みつけるだけに留めている。
おそらく俺が呪われていた時に「意識のない怪我人を殺すな! 怒るぞッ!」と背中に飛びかかったからだろう。
怒るぞはアゼルのセリフである。
俺はなにをしているんだ本当に。消えたい。
「ぁ、アゼル……取り敢えず、足を避けてやらないか……? 他の罰を考えよう……?」
消えたいが、このままではいけない。
なので、恐る恐る声をかけてみた。
するとアゼルは、トルンに向けていたゴミクズを見下ろすような視線を一転。
しょんぼりと打ち捨てられた子犬のような目で、うるうると俺を見つめる。
「……………コイツのせいで、シャルに敬語使われた……頭下げられた……他人行儀だった……」
「そ、そんなに嫌だったのか」
なるほど。
数々の蛮行より、俺によそ行きの対応をされたほうが嫌だったみたいだ。
確かに俺は敵国だった魔族に敬語を使うのも違うかな、と考え、魔界で敬語は誰にでも使わなかった。
新鮮な言葉遣いに、思いっきり距離を取られたと思ったのだろう。
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