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閑話(1・2)
現・勇者から見た元・勇者③(sideリューオ)
しおりを挟むゴホン。
まぁとにかく、そう言うところが〝可愛げ〟ってやつだ。
のんびりとしていて、晴れの日が好きなのか、天気がいいと機嫌がいい。
しかし本人は誰かのかわいいという言葉を、全部お世辞だと思っている。
謙遜かと思うだろ?
違うんだよ。ガチでお世辞だと思ってんだよ。
まぁあまり言われないしな。
言う奴が旦那と空軍長官ぐらいだろうし。
そいで旦那のかわいいは、全部色眼鏡だと思ってんな。
めちゃめちゃ嬉しいらしいけどよ。
あながち間違いでもねぇぜ。
ウザったいくらい本気ってだけで、色眼鏡はパッションピンクだわ。
俺としちゃあ、いつも近くにあんだけかわいいユリスがいりゃなって感じだな……。
しかもアイツが好きなの、魔王だったつーのがな……。
そりゃユリスに言われても、お世辞だと思うよな。
なにより俺も魔界に来て驚いたが、魔王城の魔族はみんな、クソみてぇに顔面偏差値が高い。
人間国で戦ってた奴らはまちまちだったのに、次元が違う。二次元かよ的な意味で。
特に魔力の質がいい──つまり強い奴は魅了アップらしく、強者の巣窟な魔王城は当然従魔や眷属以外、ふざけんなよってくらい美男美女だ。
そのトップな魔王が旦那なら見た目も気になるだろうし、横恋慕されんじゃねぇかって焦りもすんだろうよ。
環境を思うとシャルの気持ちは理解できたので、コクリと頷く。
「……魔王城がなァ、戦闘力高ェのばっか集めてなけりゃ、もっと美女が拝めたのによ」
「ん、基本的に主力は軍だからな。強者が偉いんだ。女性は少なくなってしまうな」
「どうせなら魔族の美女に囲まれて暮らしたかったぜ」
「住み込みだけじゃなくここで働く通いの魔族もいるから、城下はその家族が住んでいて女性が多いな」
「まじかッ! うし、近いうち城下街行こうぜ。お前と俺の二人でな?」
「むむ……」
その言葉にガッツポーズしてニヤニヤと物見遊山の脱走計画に誘うと、シャルは渋い顔をして腕を組んだ。
ユリスとデートができりゃ、一番いいんだけどなァ。
俺だって不可能と可能ぐらいは理解してるぜ。
だから人畜無害で基本的に従順なシャルを連れて、下見に行こうって算段だ。
下見に行くことで先にいい店なんか見つけておき、完璧なデートコースを組んでスマートにエスコートしたら、ユリスの心も俺のモノに決まってる。
悪い顔をしている自覚があるので、悩むシャルの手をガシッと握り、ぐっと顔を近づけてお願いモード。
「いいだろォ? 適当な理由つけて、剣と、魔力も開放してもらってよ。人間最強コンビなら、早々トラブっても負けるこたねェし。いざとなったらお前は隠密スキルあるし? 俺には魔法も物理も耐性あるしさァ」
甘えた声を出してみると、シャルは目を揺らしてどうしたものかと考え始めた。
シャルはお願いに弱い。
これマメな。
「んんん……魔王城の周り……城下に住む魔族は、ドラゴンの巣に全裸で行ってもスキップして帰ってこれるらしいんだが……」
「アァ? ケッ、俺だってフルチンで行っても帰ってこれるわ。なんならツーショット撮って〝ドラゴンなう〟って勇者流インスタ映えキメてやんぜ? テメェは魔力開放してもらっても無理なのかよ」
「………………」
「ほ~らぁッ、ゴリラとか言わねぇから、な? 魔王にも内緒にしてやるし」
「……添い寝して一晩過ごせる」
「ほれ見ろ」
だと思ったぜ。
シャルは両手で顔を覆って、己の戦闘力が全くかわいくないことを嘆く。
クククッ、まぁそう気にすんな。
仮にも戦争を殿で勝ち抜いたり単騎で魔王城にたどり着く人間兵器、もとい勇者が、普通のドラゴンに遅れを取るかよ。
と言うか、シャルは暗殺メインだからな。
力で戦うってより寝込みを襲う的な戦法でなら、勝てるだろうさ。
隠密ある時点で、ドラゴンの周りでマイムマイム踊ってもバレねぇよ。多分。ただし無音な。
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