本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
246 / 901
四皿目 絵画王子

04※

しおりを挟む


 体内に湯が入ってくると、背筋がゾクリと粟立って、唇を軽く噛む。

 上に乗ってすることはあるが、アゼルは力が強いので俺を持ち上げることなど容易だ。

 なので俺が全面的に自分だけで動くなんて、多分初めてだと思う。

 そんな若葉マークの俺にこの仕打ち。

 アゼルに尻を掴まれながらも俺は息を吐いたり止めたり工夫し、いつもしてくれているようになるべく気持ちよくなってもらおうと、動いた。

「ん、う……アゼル、っ、手……離さないとやっぱり、染みる……、ぁっ……」
「ちゃんと締めりゃ、大丈夫だ。お前のエロイ顔みてると、いじめたくなる」
「あっ、ぁ…っ……う、こういう時、アゼルは意地悪だ……ん、ん……っ」
「んっそうか? ……いやかよ……?」

 情けない表情で訴えても楽しそうに弄んで離してくれないから意地悪だと言うと、自覚がないようでキョトンとされる。

 アゼルは本当は嫌なのかと思ったのか、唇を尖らせて不満そうにするが、その実焦っているのが目線の泳ぎですぐにわかった。

 そういうことをされると、なにも言えなくなる。
 だけど……限界だ。

「ぁあ……っや、ぁ……っ」

 中に染み込む湯が気になってうまく集中できず、なのに抽挿のたびに快感がやってきて、もっとと求めてしまう。

 拙い動きで動かしていた腰を止め、ズプ、と深くまで呑み込む。

 アゼルの頭を抱え込んで、濡れた髪にキスしながら囁いた。

「ふ、ぅ……意、地悪されるの……嫌じゃないから、もっとしてくれ……活きのいいことを言ったが、自分じゃ物足りない……」
「っ」

 最後のほうはちょっと情けなかったので、小声になってしまった降参。

 それでもアゼルには、ちゃんと聞こえたようだ。

 抱きしめた頭が腕の中でビクリと跳ね、間を置かず、俺の胸に牙を立てないように噛み付いた。

「ぃあ……っ」

 突然の甘噛みに驚き、予想外に間抜けな声が出る。

 逞しい腕で腰を持ち上げられ、バシャっと湯船を揺らしながら、深く奥を穿たれた。
 悲鳴のような喘ぎ声が漏れる。

 強張る力を抜き取られると体が反転して、溺れさせられるのかと焦燥に駆られてしまう。

「っなぁ……っん、で、っ」

 咄嗟にアゼルの首に腕を巻き付けると、俺の体を支えながら真っ赤になって睨みつけた。

 アゼルはお湯も滴るいい男だ。

「の、のぼせたか……?」
「うるせぇ、俺はお前からの煽り耐性ゼロだぜ、クソ……」
「んっ…う…ンぅ……っ」

 急にどうしたと意味を込めて尋ねたのに返事もさせてくれず、もう黙っていろとばかりに口づけられ、俺の言葉は全部呼吸ごと奪われてしまった。

 それと同時に、すっかり場所を覚えられている中の弱いところをグリっと強く抉られる。

 途端、目の奥が白く電流を発し、背骨をしならせ仰け反った。

「ンん……っ! ん、っ、んぅ……っ」

 そうなったらもう、アゼルの背中に爪をたてないように気を使うのが精一杯で、ゆさぶられることしかできない。

 悲しきかな、いつものことだ。
 身に染みている。

 ──どうやら仕方ねえな、と手伝ってくれるといいなぐらいの気持ちのお強請りは、意地悪上等だと煽ってしまったらしいぞ。

 スイッチのわからないアゼルのそれをうっかり押しすぎてしまう自分に、呆れまじりで頭を抱えてしまいたくなる。

 湯が汚れるのでできれば湯船でイキたくないな、と思ったが、そんな細やかな願いは当然聞き入れてもらえないのだ。



しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

その男、ストーカーにつき

ryon*
BL
スパダリ? いいえ、ただのストーカーです。 *** 完結しました。 エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。 そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。 ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)

塔の魔術師と騎士の献身

倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。 そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。 男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。 それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。 悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。 献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。 愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。 一人称。 完結しました!

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

処理中です...