本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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六皿目 純情変態桃色魔王

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「うぅん。グラビアコーナーは特に……ええと、このへんは恋愛コラムか……。っ、すごいな、魔族の性生活……」
「ワォン?」
「ほら、小料理屋のおかみさんのハマっているプレイは、目隠し緊縛だぞ? 犬。こっちの魔導具職人のエリックは、水魔の彼女に窒息プレイをしてもらうのがマイブームらしい。生きるか死ぬかだな」
「! ??」
「アハハ、そんな顔をするな。俺にそんな趣味はない。ちょっと痛いのは好きだが、できれば普通に気持ちいいのがいいだろう?」
「……くぅん」
「うわ、なんだ? 腕なんか噛んで……仕方ないな。そのぐらい優しく噛んでくれるなら、齧っても構わないかな」

 ちょっと痛いのがいいといったからか、あぐあぐと犬が俺の腕を噛む。

 甘噛みだから全く痛くないので、笑って好きにさせることにした。

 ふふふ。誰も見ていないのをいいことに、だんだん面白くなってきたぞ。

 それに無知のせいでアゼルとの夜がマンネリ化して、飽きられてはダメだ。

 心が愛し合っていても飽きられるのは寂しいので、これで勉強しておこう。
 死ぬまで共に夜を過ごすわけだしな。

 それからしばらくは犬と共に、お勉強を兼ねた楽しい読書を続けた。

 パラパラとページをめくって、読者コメントの夜の生活を驚いたり、感心したりする。

 ちなみに俺のアレは、ピクリとも反応していない。

 えっちな絵が全面的に載っているページは、犬がすかさず前足ガードをするからだ。

「おぉ、通販コーナーまである。サキュバス協力制作の魔女の媚薬……いや媚薬はもうあるようなものだからな……オークの精力剤……。……精力剤……」

(……欲しい、かもしれない)

 しばし目線が止まってしまい、思考を巡らせた。

 いつも意識を失うか、起きていてもヘロヘロになってしまうので、俺は体力作りを頑張っている。

 でももしかすると、こっちの衰えもあるのかもしれない。

 い……いやいや。まだ大丈夫な筈だ。
 異世界人は肉体が衰えないからな。大丈夫。

 自分に言い聞かせつつ俺は癒やしを求めて、隣でふすふすと雑誌をのぞき込んでいた犬に抱きつく。

「!」
「魔族の女性は、積極的で扇情的だな……。俺はアイツの好きなタイプもしたいプレイも知らないが、ちゃんと満足してくれているのだろうか」

 うぅん、と悩ましい愚痴を犬に零すと、犬はわたわたと慌てて、それからグリグリ顔を押し付けた。

 励ましてくれているようだ。かわいくって優しい。素敵な犬だな。

「ふふふ、ありがとう」
「アゥォ……!」

 なぜか懸命に頷く犬がかわいくて、にこにこと笑った。

 よし、俺もなにか積極的にやってみよう。
 そもそも基本的にされるがままの流され男なのが、よろしくないな。

 ここは密かにセックスの腕を磨いて、俺が押し倒すくらいじゃないと。何事も努力だ。

 なでなでと犬の頭をなでて、俺はさっきとは違う意気込みを新たに、参考書を読む気持ちでエロ本に向き直る。

「……ん?」

 意気込む俺は通販コーナーのとある項目で目が止まり、これは、と瞳を輝かせた。

「見てくれ。こっそり練習するなら〝しっかり固定可能! 潤滑油付き張型〟と〝魔力で振動? 魔導バイブ〟のどっちがいいと思う?」
「グルルルッ! ウォンッ! グアオッ!」
「!? なんで投げるんだ……!?」

 これを使ってセックスの腕を磨こうと、俺は通販コーナーのバイブとディルドを指差す。

 だが突然手元からエロ本がなくなり、びっくりして目をパチパチさせた。

 どっちのほうが練習道具に良さそうか聞いただけなのに、牙をむき出して怒り出した犬がベシッ! と前足で叩きそのまま噛み付いて、遠くへ投げたのだ。


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