本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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六皿目 純情変態桃色魔王

34(sideアゼル)

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「おいゼオ、書類が汚れるだろうが」
「まるごと復活するんで大丈夫ですよ」

 しれっと言われた。
 まあそのとおりだけどよ。

 弾け飛んだ陸軍長官であるマルガンは、ナイトリッチという種族である。

 平たく言うと痛覚を感じずに、魔力ある限り木っ端微塵でも復活する上級魔族だ。

 普通の上級魔族なら手足がもげても復活できるが、脳や心臓が木っ端微塵の原型なしだとおおかたが死ぬ。

 流石に俺も死ぬ。
 まぁ昼間にガドを三十匹は持ってこいって感じだけどな。

 そんな魔王より自己修復力が強いのが、マルガンなのだ。

 だからマルガンは笑死魔将。
 元々半分死体だからな……笑って死んで、すぐ蘇るぜ。バトルジャンキーだしな。

 閑話休題。

 案の定、マルガンの撒き散らされた脳みそや血肉が、数秒後にはまたチャラ男の頭部を形成する。

 復活したマルガンは、ゼオの容赦ない爆裂にすっかり青ざめ、ギャンギャンと騒ぎ立てた。

「ゼオにゃーなんで俺っちだけおこなのっ!? 魔王様もサボってたじゃん!」
「魔王様はこのように、サボったとしても後で溜まった仕事も片付けてくれますし。まぁポンコツスイッチ……お妃様関連で暴走しただけなので。あんたは魔王様と別れてから、城下街で娼館に入り浸っていたでしょう」
「ねぇだからって大事なイチモツ普通凍らせちゃう? お仕事終わるまで身動き取れないとかアリ? なくない? ヤバくない? 俺っち椅子と氷でまぐわっちゃってんよ?」
「残念ながらあんたが不死身のナイトリッチじゃなければ、とっくにイチモツ切りとってゴブリンの餌にしてますが」
「男の勲章ゴブリンの餌ってぇっ!?」

 しかし騒ぎ立てようと、受け入れられるわけがない。

 強制書類地獄に嘆く陸軍長官を助けるお人好しは、この場にはいなかった。

 二つ名である〝冷血〟の名に相応しいゼオは、殴り合いなら間違いなくこの中で一番弱いのに、一番自分より下と決めた者に情け容赦がない男だからだ。

 そんなわけで、本日の仕事コミコミ男子会メンバーは魔王、宰相、空軍長、陸軍長、陸軍長補佐官で全て。

 クックック、人間国の一つや二つ、このメンツなら滅ぼせるぜ。

 やってることは王による猥談の惚気だが。

 仕事をしつつも邪悪な魔王スマイルを浮かべる俺に、ライゼンがそっと紅茶を淹れてくれた。

 魔王の補佐官でナンバーツーである宰相。マルガンにとってのゼオは、俺にとってのライゼンだ。

「……ライゼン。まぁその、なんだ……お前は仕事もできるし、魔族関係もできた奴だ。俺の宰相がお前で、よかった」
「ええ……ありがたきお言葉、身に余る光栄です。私は貴方様を心より尊敬していますよ。素直じゃないのと口と目つきが悪いだけで、勤勉で努力家でまっすぐですから」
「! ハッ! この俺が勉強なんかするかよっ。できないことなんざねぇからな」
「フフフ、そういうことにしておきますね」

 ゼオを見てからライゼンを見ると、どれだけ従順に尽くしてくれているのかがわかる。

 当たり前にあった温厚さに労りの言葉をかけると、なんだかむず痒い感じで笑われた。



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