542 / 901
十皿目 ワンとニャー
02
しおりを挟むにゃーにゃー言ってしまったノーマルな俺は、リューオにあれこれと説明を受けてネコの意味を理解した。
どうやら受身側の話だったみたいだ。
リューオはふてくされた表情でミステイクを繰り返しながら、攻め手側の悩みを語り始める。
ことの発端は、初めて夜を共にしたある日のことだ。
ユリスとリューオは現在、付き合って四ヶ月くらい。
お互い城に住んでいることもあって手の早いリューオにしてはよく我慢したが、四度目のデートの後に我慢できず部屋に連れ込んだ。
小柄なユリスだ。抱え上げればおそらく人類最強のタフな肉体を持つリューオからは、逃げられない。
猪突猛進で俺様気味のリューオは、まんまと押し倒すことに成功した。
俺のイメージだが、血統書付きの子猫であるユリスと、大型の虎であるリューオの猫カップル。
そうして素直じゃないユリスがツンツンしつつも本気で嫌がっていなかったので、欲求に忠実なまま、リューオは押せ押せで本懐を遂げたらしい。
「ん? 遂げたのか」
そこまで聞いた俺には、悩む必要性がよくわからず、首をかしげた。
拒絶されたわけでもなく二人楽しめたなら、問題はないはず。
むしろ後はいかにイチャつくかしかないと思うのだが。
そんな思考を読み取ったのか、リューオはキッ! と目を吊り上げて、ボードの上の白駒を片っ端から黒駒にひっくり返し始めた。
よかった、これで勝たせてあげられるな。
「だァからそれ以来部屋に誘っても来てくれねえんだよッ! どういうことだバカ野郎ッ!? マジで俺のテクニックの問題だったのかッ!?」
「ううん……? 俺はお前に抱かれたことがないから、それは答えてあげられないが。ちなみにこれまでの経験ではどうだったんだ?」
「アァン? 男にも女にもこれといって不満を持たれたことはねぇええぇぇ……ッ! 強いて言うなら、浮かれてたから若干サドっぽかった……? 軽い羞恥プレイもしたか……? ぐらいだぞオイ。普通じゃね?」
「痛い系と恥ずかしい系か……それは人によるな……」
傍らに用意してあった桃のコンポートにフォークを突き刺して、ひとつ食べる。
なるほどな。SMは人によって許容範囲が違うと思う。
それも初回でしたのなら、地雷だった場合物議を醸す気がするぞ。
「でもよォ、別に痛めつけちゃいねぇッて。ちゃんと慣らしたしよォ。俺はどっちかってーとかわいがりたい派だかンな! カワイイは愛でるべき」
「うーん……ということはかわいがりすぎたとかか」
「ンなこともねぇ! アホみたいにしつこく指責めしたり、あちこち噛み付いたりもしねぇわ。それこそ縛ったり無理だと言うまでイカせたりなんかの典型的なヤツもしてねぇ! 押し倒したのにそこまでやったら、あのユリスだし変態呼ばわりされっからな」
「うん? そのくらいならまだ許容範囲じゃないか?」
「え?」
「え?」
思ったまま答えると驚かれ、俺は驚かれたことに驚き、ふたりで見つめ合った。一瞬間ができる。
ええと、ダメなのか? でも恋人同士ならそのくらい大丈夫だと思うが……。
というか、全部俺は日常的に経験済みだ。
51
あなたにおすすめの小説
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
その男、ストーカーにつき
ryon*
BL
スパダリ?
いいえ、ただのストーカーです。
***
完結しました。
エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。
そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。
ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる