本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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十皿目 ワンとニャー

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 それからコスプレと言っても女装をしたり、きわどい衣装を着たりはしてない。
 普通に裸エプロンだとか、研究所の白衣だとかだ。伊達眼鏡をかけさせられた。

 となれば多少縛ったり目隠しをしたり、基本的に焦らさられたり、恥ずかしいことを言われたりするのは一般的だと思う。

 一度魔界のピンクな本を読んだこともあるが、あれによれば窒息プレイをしている人もいた。

 夜事情は人に聞けないので、そういう本やアゼル引くことの変態という式に基づいている。

「と言うことで、俺はなにもアゼルが変態だと知らないわけでもないんだぞ? 変態スキル持ちだからな。なのでその中からノーマルなものをチョイスして、それを魔界の基準と仮定し、リューオにアドバイスしただけでだな……」
「取り敢えずその試算間違ってるから白紙に戻して。今すぐ。それを常識だとあの馬鹿が思ったら、僕も基本的に焦らされるんでしょ? 嫌だよそんなの。毎回強請らなきゃいけないじゃん」
「毎回強請ってるんだが」
「基本強請らされるってどうなの」

 どの基本なの、と今度は可哀想な子を見る目で見つめられた。

 安心してくれ。
 卑猥なセリフを指定されなければ、強請ることに羞恥心はあまり働かない。

 挿れてほしいと言っても挿れてくれない時もあるのだから、多めに強請らなければまかり通らないのだ。

 そう伝えると、どこに安心要素があるんだと叱られた。
 ユリスは照れ屋だから難しいんだろうな。

 まぁ……変態ではなくとも、アゼルは五割以上の確率で吸血プレイをする。
 子犬、じゃない狼型吸血鬼だからだ。

 種族的嗜好で仕方ないので、それを思うと概ねが普通になるんじゃないか?
 ほら、血を吸われるとムラムラするだろう?

 催淫毒で大抵のことに悦ぶ淫乱になってしまうので、その状態の俺としてもやぶさかではない。

 ハーブティを飲み、内心で考える。
 なるほど。それを考えれば、思うより俺たちの性生活はアブノーマルめなのか。

「そうか……これはちょっとと思ったんだ……」
「なにさ変態ネズミ」
「んん、変態もネズミもよろしくない」

 ボソリと呟くと耳ざとく拾ったユリスは、辛辣なあだ名をつけた。
 戦闘力がハムスターで夜は変態なんて称号は是非ご勘弁いただきたい。

 ──……ちなみに、なんだが。

 今俺の胸には、昨日アゼルに取り付けようとしたクリップが付けられている。

 うーん。なに食わぬ顔というのも大変だな。
 好き放題した次の日はご機嫌なアゼルが、今朝仕事前に仕返しだと取り付けた。仕返しと言っても、俺は付けそこなったんだがな。

 潤滑油を塗ってからパチンと。
 朝日に照らされる胸元を見ながら、これは変態寄りだな、と思ったのが今朝だ。

 薄いさらしを乳首のところだけ一本巻かれ、上からシャツを着たが、水でもかぶればたちまちこの惨状が透けてしまう。

 つまり。

 素知らぬ顔でユリスとお茶をしながら話をしている現在の俺は、その実、乳首にクリップをつけられた恥ずかしい人だということだ。

 これを一日付けてろと言ってくるアゼルと、別に構わないと頷いた俺。
 ……どっちが変態なのだろうか……。

 少々悩んだ俺だった。




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