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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
07
しおりを挟む俺が危険だと、アゼルが安心できないからダメダメ。
なら俺が一人でも大丈夫であればいいのだ。
もういい加減わかりきっていると思うが、俺はおとなしくいじめられるような繊細なタイプではないぞ。安心しかない。
なのにアゼルは首をかしげる俺をとんでもないとでも言いたげに睨んで、傍らのライゼンさんに噛み付きそうな様子で食いかかる。
「ほれみろライゼン! これだから安心できねぇんだ! コイツはこう見えて戦闘系なんだぜ!? なにかあったら取り敢えず自力で戦ってみるっていう、無駄に怖いもの知らずな最高にかっこいい俺の嫁だよ! 俺の嫁なんだよ! 俺の! 俺のなら家名はナイルゴウンでいいじゃねぇか!」
「結局それを言いたいだけなんですね、魔王様? 後シャルさんは取り敢えず小突かれた瞬間、私たちに告げ口してください。私、そういうの得意なので」
「うん? 得意? どういうのがだ?」
──そんなワガママアゼル論を言っても、ライゼンさんは過保護コンビの相方ではないから聞かないと思うが。
そう思ったのだが、噛み付いたアゼルをいつもなだめるライゼンさんは俺に向かって微笑みを浮かべ、告げ口を推奨してきた。
なんだか雲行きが怪しい。
アゼルはライゼンさんの言葉にニヤリと笑って、尊大に腕と足を組み、椅子に深く腰掛ける。
「俺に過保護だなんだって小言を言うくせに、お前も想像しただけでちょっと怒ってんだろうが。この親バカ宰相め。俺のこと言えねぇぜ」
「し、仕方ないでしょう! 私がやむなくオファーした先でシャルさんが小突かれでもしたら、最悪クレームなんてどうでもいいですよ……! モンスターペアレント上等です。こっちだってそれなりに名の知れたモンスターですし……。これだけ手を尽くしても馬鹿やる民なら、痛い目を見ても自業自得だと思いますが」
「うん。うん? ……?」
「ようしわかった。なら手出しされたら俺とお前で、そいつの三親等まで木っ端微塵にするぞ。この公約を許可する旨をそのクラスの生徒の親に書かせろ。それができれば……取り敢えず自分の部下の困り事だ。仕方なく……仕方なくッ! 許してやる」
「英断です、我が王。すぐに手配しましょう」
俺を省いてこそこそと行われる魔界のツートップ会議。
得体の知れない不穏なオーラを醸し出しながら不敵に口角をあげるアゼルと、いつもどおりの穏やかな微笑みを浮かべている、ように見えるライゼンさん。
「? ……ん? ええと、丸く収まったのか……?」
よくわからないうちに二人は納得する妥協点を見つけて和解したようで、俺だけがなんだか蚊帳の外のまま、話が終わってしまったようだ。
──とにもかくにも。
こうして最大の難関、アゼルの許可をもぎ取った俺は、明日から臨時教師として魔界立ディードル魔法学園へ赴くことになったのである。
ちなみに部屋を出ていったライゼンさんが生徒達の実家に手紙を出し、脅しまがいのほの暗い念書を書かせていたなんてことも、俺は知る由もない話だった。
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