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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
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しおりを挟む「──という感じだったな。なにも危ないことはなかったぞ」
「そうだったのですね。シャル様に怪我がなくてよかったです! ……それにしても、全自動魔法陣描画装置ってなんなんだろうなぁ……俺も知らねえなぁ~……」
遅れを取り戻すために多めに時間を取っている授業を、どうにか終えた。
そして午後になるとまた迎えに来てくれたキャットと共に、馬車の中で今日の出来事を話す。
地を行く馬車ではなく空飛ぶ馬車なので、相場より速度が速い。
日が深く傾くまでには魔王城に到着するだろう。後半時ぐらいか。
行きの道中で打ち解けて以来、お妃様呼びを名前呼びにくだけたキャットは、俺の話を聞き悩ましげに腕を組む。
俺は名前に様も敬語もいらないと言ったんだがな……。
絶対駄目だと譲ってくれなかった。
「あのあの! どうもあのクラスは俺の調査によりますと、レアスキル持ちだからなのか優秀な生徒が多いみたいでして……それで前の教師は田舎に引っ込んじゃったみたいです。学園の教師を侮る傾向にありますね。心配していたのですが、問題がなかったなら一安心です!」
「そうなのか? 確かに優秀だとは思うが……。コミュニケーションがてらだろう教師への初テストが、重ねがけだからな」
「んっ? シャル様シャル様、重ねてかけるのは難しいのですか?」
「難しいと言われているな。でも俺でも十五ぐらいまでなら重ねられるし、魔族にとっては簡単なんだと思う。アゼルは毎日魔法陣結界をハンコを押すみたいに簡単に張っているので、たぶんもっとかけられるぞ」
「ほぇ~簡単なんですね~! 俺はスキルを持っていないので羨ましいです」
その代わり風魔法での防御は得意で、攻撃も竜なら殺れますよ! と笑うキャット。
爽やかな笑顔で竜狩りを明かす彼の戦闘力を予想して、俺は愛想の良さに麻痺していたが、彼は副官なのだなと改めて思った。
そうなのだ。
あのガドの副官なのだ。
ガドといえば巡視中でも魔物や空マグロをつまみ、隊を率いた演習で部下をグロッキーにしている。
縦横無尽な飛行が自慢の、フリーダムの代名詞である俺の友人。
豪快に見えて繊細で、思う様行動した後にやり過ぎたかもと労る、破天荒幼児だ。
本人も野生むき出しの粗野なところは自覚しているが、うまく直せないらしい。
そういうところがアゼルを思わせて、やっぱりあの二人は根っこが似ているのだと思う。
話を聞くところによると、ガドは昔から毒体質を忌避してあまり人に触れてもらえない為に、人肌恋しく思っていた。
だから自分を助けてくれた人で、状態異常耐性を持つアゼルに、懐いていたそうだ。
アゼルはアゼルで、他者不信でコミュニケーション下手を拗らせていたわけで。
幼い頃から知っていて、あけすけなガドに懐かれるのは、壊してしまいそうで恐ろしかったが……悪い気分ではなかったのだろう。
寂しかったのは同じ二人だが、道のりとゴールが違うのだ。
アゼルのほうが孤独が長く、強がりが得意で素直じゃなかったのと、ガドのほうが遠慮がなく、楽観的だった。
ガドはやってしまったと後悔しても、三歩歩けば今度から気をつけように切り替えて、けろっと甘えてくるからな。
アゼルはやってしまったとなれば、黙ってずっと反省と後悔をし続ける損な男なのだ。
ええと、怒らないで許してと甘えられない。自分で自分を叱り、許しもしない男。
根っこは似ていても仕上りが違う。
俺はどちらも意味は違えど愛おしいのだがな。
閑話休題。
まだ出会って日の浅いため、キャットが俺とライゼンさん以外と話しているのを見たことがない。
でもガドの副官だ。
きっと仲がいいのだろうな。
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