本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
612 / 901
閑話 男気番長は甘やかしたい

04※

しおりを挟む


 ♢


「あぅ……、っ」

 月明かりの差し込む室内で、唸り声とも取れる、やや艶めいた鳴き声が響く。

 声の主は、ベッドヘッドと枕を背に座る自分の上に跨り、一糸まとわぬ姿で狭く熱い体内に起立を埋め込もうと腰を落とすシャル。

 ──ではなく。

 魅惑の腰つきで対面座位をキメられている、アゼル自身であった。

 情けないだと? 笑うなら笑え。

 言っておくがな、この色気たっぷり番長さんは、自分から乗りかかりリードすることに、なんの躊躇もないからな。

 アゼルは脳内で誰にかもわからない言い訳をする。

 えっちなお兄さんに乗られいいことをされているなんて、宛らマルガンに借りた桃色雑誌の読者体験談のようだ。

「んン、ぅ」

 薄く瞳を閉じて肉壁を押し広げられる感覚を感じながらも、着実に根本までを呑み込んだシャルが、色っぽく息を吐いた。

 同じく衣服を脱ぎ去っているアゼルの腰に、ペタリとシャルの湿った温かい肌が張り付く。もち肌だ。

 こっそり腰に抱きつきながら、尻をなでた。自分から奥へ誘い込む姿もたまらないが、もう動きたい。

「はっ、シャル……」

 今のアゼルでは、自分にまたがり座るシャルを見ようとするといつもより上を見なければならず、自然と強請るような上目遣いになった。

 シャルは汗の滲む額に張り付いていた前髪をかきあげ、名前を呼ぶアゼルを見下ろし、温かく微笑む。

「優しくするから、キツかったら言ってくれ」
「ぐぬぬ……!」

 この野郎。
 現在進行系で抱かれているくせに、無駄にかっこよすぎる。

 自分の嫁が包容力マックスなのは知っていたが、髪をかきあげ色っぽく笑いながらそんなことを言われると、敗北を感じてしまった。

「だから、俺を年下扱いすんなって言ったろうがっ」
「あっ、ぅ、ン……っ、なにを言っているんだ、していないだろう? 大人だもんな、よしよし」
「シャルお前、今の自分を振り返ってみろ? オイ」
「? ん、ふっ」
「っ」

 負けず嫌いの虫が騒いだので、腹筋に擦り付けられるシャルのモノを擦りながら、胸元を指先で弄る。

 するとシャルは快感に身体を震わせながらも、微笑ましそうに頭をなでた。だからそれだ。

 よくわかっていないシャルは、咥えていた起立をキュゥ、と内部を締めて刺激してくる。

 アゼルがそれに息を詰めれば、また髪を軽くなでて膝と腰を動かし、ローテンポな抽挿を始めた。

 それも勉強熱心なシャルなので、官能を煽るのが酷くうまい。

 どう締め付け、時に円を描き、短く早く揺らしたり、抜けそうなほど引き抜いて一息に体重をかけたりすればアゼルがイイのか、よくわかっている。

 熱く湿った肉襞が奥へと誘い込むように蠕動し、潤滑油と腸液が混ざったヌメリで、ヌチャ、ヌチャ、と音が鳴った。

「あ、っ、ぁ、っ」

 そうして奉仕しながらも、薄く開いた唇から控えめに嬌声が漏れる。

 二人の身体の間で擦れるシャルの肉棒も、丸みを帯びた先端から蜜を滲ませ、良さそうに勃ち上がっていた。

「はっ……ぁっ…ぁっ…、あ、ぁ……」

 愛する人が自分にまたがり、濡れた勃起を擦り付けながら快感に更ける様は、どうしたって淫猥だ。

 アゼルの衝動がウズウズと煽られて、仕方がない。

 自己犠牲精神が激しいシャルの献身癖と同じく、己の全てを捧げて相手よりも愛したいのだ。

 なのにシャルは見た目の若くなったアゼルに対して甘やかしモードに入っていて、一向に好きにさせてくれない。

 抗いがたい甘やかしだというのが大半の原因だが、ままならない欲望があった。

 シャルが動くので思うように触れず、自分が仕込んだせいで的確に蠢く中の襞に、アゼルは高められていく。

「シャル……っ、俺にも、触らせろっ」
「んぁ、あ、? あぁ、お前は俺を感じていてくれ、んっ、ん」

 そう言って、伸ばしたアゼルの手を取って指を口に含みながらシャルは、中で質量を増す肉棒を貪ることに夢中になる。

 アゼルは自分の指を温かい舌で舐められ、シャルの胸元に額を押し付けて「うぅぅ~っ」と唸った。

 頗る気持ちがいいのがより悔しい。

 自分は今、尻で抱かれているのでは?

 そんな錯覚を起こしたくらいだ。



しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

その男、ストーカーにつき

ryon*
BL
スパダリ? いいえ、ただのストーカーです。 *** 完結しました。 エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。 そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。 ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...