本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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閑話 男気番長は甘やかしたい

08※

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「く……っあぁ、うう、なんかもう……ッ!」
「あぅ……、っ? あ、ぁぁ……っ」

 言葉にできない感情に胸が苦しくなって、背を向けるシャルには見えていないのをいいことに、ニヤニヤとしまりない顔を晒した。

 はぁ、無理だ。
 愛おしい。語彙力の限界。

 自分の肉棒に犯され感じているシャルの姿に、アゼルは嘆息した。

 胸を締め付ける幸福に浸っているが、責める動きはまったく緩めていない。

 おおむね脳内をかわいいと好きと尊いが覆い尽くし、結果的にしんどいしか思いつかなくなった。

 アゼルはシャルを愛して知った。
 好きすぎると言葉が消え失せ、ため息しか出てこないんだと。

 深く深呼吸を数度繰り返し、落ち着こうとする。

 そうしていると、不意にアゼルの身体が薄く青色に光りだした。

「あ」
「ン……ッ、ふ……っ!? っ、待て、中、中が変な、ぁ……っ」

 律動を止め、思い出したような声を上げる。

 シャルが自分の中で変化を起こすアゼルの起立に掠れた静止をかけたが、こればっかりはどうしようもない。

「ぁッ、な、破れ……ッく」
「? すぐだ。ちょっとだけ、待て」

 すぐに済むから待てと声をかけ、なぜか動いていないのに苦しげに呻くシャルの頭を、不器用ながら優しくなでた。

 ギュゥゥゥ……ッ、と痛いくらい締め付けるシャルの内壁に、むしろこちらが苦しいくらいだが胸にしまう。

「ぅ、ふッ……ぅぇッ……あッ……」

 シャルは身を痙攣させ、喉を仰け反らせてフルリと喘ぎ、引き締まった魅惑の尻をモゾつかせる。

 このスケベ人間め、誘うな。
 変化中に動くのはあまり良くないというのに。

 ──そしてしばらく後。

 パァァ、と薄明かりが晴れる頃には、アゼルはすっかりもとの大人の姿に戻っていた。

 シャルを犯していたモノも、元通りだ。

 ……いや、戻ったというが別に縮んではない。今も昔も魔王級だろう。そうに違いない。

「ふぅ。よし、もう終わったぜ」
「はっ…、はぁっ…、も……戻った、のか……」

 トロンと蕩けた表情で、シャルは乱れた呼吸を整えつつ安堵の息を吐いた。

 体内で擬態が解かれるなんて、思っても見なかったらしい。
 感じたことのない刺激に、ぐったりと脱力している。

 そんなによかったのだろうか。
 あまり変わらないと思うが。

「ぁ……ほんとだ、な」

 身体が大きくなり、普段通りの上等な男に戻ったアゼルを、身体をほんの少し撚って見上げるシャル。

 ニヘ、と紅潮した頬を緩め、笑みを向けてくれる。かわいすぎる歓迎だ。

 やはり、いつもの自分がいい。
 シャルに手を伸ばせば、小さい時よりもっと早く触れられる。

「ふふん、お待ちかねのいつもの俺だぜ」
「っはぁ……っ」

 ドヤ顔で鼻を鳴らし、グッと仰向けに転がして抱き寄せた。

 シーツの上に座る自分の上に、はじめのようにまたがらせる。

 汗ばんだ肌が張り付き合って、心地よい。
 貫きっぱなしの結合部から、ヌチュ、と粘膜が擦れる音がする。

 首に力の入りきらない腕を回して、シャルはこてりと首を傾げた。

「あ……、んん……アゼル……、お前のあれ、あまり変わらないと言ったのを、訂正する……」
「あぁ?」

「二段階上に変化した……」

「…………」


 ──至極重大な事柄を告げるような真面目な表情で、そんなことを言われた、夜。

 アゼルはこの日。
 どの瞬間よりも心底から〝戻ってよかった〟と、思ったのだった。

 魔王に必要なものは、即ち。
 男の勲章のポテンシャル。

 大きさ、太さ、硬さ、持続力に、連射力。

 これら全てを揃えているからこそ──魔王の魔王は、魔王なのである。



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