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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
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しおりを挟む珍しくされるがままのゼオをなでていると、会場内から司会らしきアナウンスが聞こえた。
マイクなんてあるはずない世界だが、魔導具とは便利なものだな。
もしかすると、カラオケなんかもあるかもしれない。夢が広がる。
『お色直し休憩が終わりました! 間もなく最終決戦が始まるので、観客の皆様は会場へお戻りください~! それから舞台上でキャットファイトを繰り広げるピンキーさん率いる乳派と、アゼリーヌさん率いる足派の皆様も、お早く整列お願いします~! ほら大道具! 舞台のクレーター埋めて埋めてっ!』
「……アゼリーヌというのはまさか」
「はい」
ゼオは動じることなく、コクリと頷く。
正体を隠すためだろうが、意図していなかったネーミングに、まさかと震えた。
しかもなんだ、足派と言うのは。
アゼリーヌは足派を率いているのか。
ゼオ曰く、アゼルは女装コンテストに出ているだけでは飽き足らず、休憩中なのに、ピンキーという胸が好きな人と戦っているらしい。
ふーむ。足と胸か。
アゼルのならどっちも好きだな。
アゼル派、じゃないアゼリーヌ派の俺は、どっち派でもない。
しかし一応はアゼルの応援をしたほうがいいのだろうか。
ゼオにそう尋ねれば「貴方が応援すれば本気を出してしまうので、魔界を滅ぼさない為に黙ってて下さい」と間髪入れずに切り捨てられた。
そんなことは起こらないと思うのに、ゼオは大袈裟だ。
俺はみんな違ってみんないいということで納得し、派閥を応援するのは諦めた。
話を終えたあと。
選手であるゼオは、俺にそっと入ってそっと見ているように言い含めると、非常に嫌そうな顔をしながら会場内へ戻っていった。
基本的に無表情であるゼオが大袈裟に表情を変えるのは、わざとだ。
相当嫌なのだろう。嫌ということを伝えるためのわざとだからな。
『竜の匂いで誤魔化せていますが、魔王様にはバレるかもしれないので、目立たないようにしてください』
「よし」
言いつけられたことを意識しつつ、しばらく待ってから、俺もこっそりと扉を開いた。
スキルである隠密を使えばいいのかもしれないが、周りにオカ魔さんが多くて、誰にも見られずにというのは難しい。
そしてアゼルは狼形態になれば、昼間でもかなり鼻が効く。
しかし人型ならそこそこ近くにいなければ大丈夫なので、人混みにまぎれれば、隠れなくともバレないだろう。
ゼオの話によると、どうやらアゼルは少し恥ずかしいスイッチが入っているらしい。
俺に女装姿プラスそれを見られたら、卒倒してしまうかもしれないみたいだ。
(むむ……ドヤ顔でムダ毛の処理をしたと誇っていたのに、見られるのは恥ずかしいのか……俺の旦那さんはやっぱりかわいいな……)
魔法が使えないので、懐に入れているコインをなでる。
受付で貰った、ポイント代わりの十枚ワンセットかける五の枚数ある、コイン。
これを投じるのだ。
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