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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
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しおりを挟む「キタわよぉぉぉおッ! 期待の新星ッ! 新進気鋭の美脚女王アゼリーヌッ!」
「な、なにかしらね、あの目付きと威圧感は……ッ!? 逆らいがたいワ……ッ! 悔しいケド高飛車な態度が許される美貌とは別に、従いたくなっちゃうッ! ムキィィッ!」
「ンもうそこだけじゃないわよッ! ローション相撲でプールに容赦なく落とされたカマーたちが溺れると、そっぽ向きつつ引き上げて待機してるスタッフに投げつけるさり気ないツンデレなトコロッ! そこがたまんないに決まってるデショッ!?」
「いや細かッ!! さてはあんた、ギャップ萌えね?」
「いかにも」
「重低音はヤメなさい」
皆様方。逆らいがたいのは魔王特有の常時威圧スキルが感情に合わせて強く出てしまっているだけだ。
なんて考えていると、気になる話が聞こえてきて、俺はソワソワと落ち着かない。
むむ……周囲のオカ魔さんの話を聞いてしまったところ、一部のファンにはツンデレなのがバレているらしいのだ。
(うぅん、ローション相撲とはなんだろう? 後でアゼルに聞いてみようかな)
そうして考えながらもアゼルが花道の端っこにやってくるのを、観客にまぎれてコインを握りしめつつ待つ。
しかしアゼルに夢中な俺は、初めは人混みに隠れていたのだがポイント追加で少しずつ前に出てしまっていたことに、全く気が付かなかった。
要するに──ゼオが気付く距離にいる俺に、俺ガチ勢のアゼルが気が付かないわけがないのだ。
花道の終わりの斜め前ほどで待つと、アゼルは今までの参加者と同じように、最後のアピールポイントへやってきた。
花道を囲む観客たちが、歩くたびに揺らめくチャイナドレスの裾の下を必死に見ようとしている。
けれどアゼルは意にも介さず終わりまでやってくると、腰に手を当て、フンッと鼻を鳴らした。
その見事な見下し顔にギャー! と濁った歓声が巻き起こるのも、想定内だ。──しかし。
ふと訝しげに首を傾げたアゼルと、アゼルを見つめる俺の目が、バチッ! とかちあってしまった。
バレたか? と思った途端、先ほどまでの毅然とした態度が嘘のように、大崩壊が起こり──
「ひうぇぁぁぁ~……っ!」
「んっ?」
「「「え」」」
──会場で一番目立つ位置にいるアゼルは、真っ赤な顔を両手で隠して、可愛らしい悲鳴を上げながらふにゃふにゃと倒れてしまった。
(ど……どうしてしまったんだ──……ッ!?)
愕然とする俺となにがなんだかわからない周囲は、口を開けてポカーンとしている。
舞台上のキャットは首を傾げ、ゼオはアチャー、と額に手を当てていた。
小さく丸くなって顔を隠しつつ震えているのはいつもの発作だが、目が合っただけでどうしてこうなるのか。
まさか俺は知らない間に、メデューサの様な能力を手に入れていたのか? バカな。
「よ、嫁に見られたぁぁぁ……ッ! 辛い、恥ずかしい、好感度下がる、一時的に消えたいぃぃ……ッ! でも離れるのはヤダから後で本気出して復活するぜぇぇぇ……ッ! しかし今はただ死するのみだろうがぁぁ……ッ!」
瀕死のアゼルは、拡声魔導具が首に巻き付いているのも忘れているらしい。
モダモダと足を僅かにバタつかせながら、いつもは小声の心の声をダダ漏れにしている。
それを聞くに、どうやら隠していた女装コンテストを俺に見られていたと知って、羞恥で悶絶しているようだ。
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