694 / 901
閑話 ガドと愉快な仲間たち
03(sideガド)
しおりを挟む『頼りまくって甘えまくって、仲間は頼られまくって甘やかしまくる。そういうもんだ』
「そーゆーもんだー?」
事件後に教えられただけなスウェンマリナでの血みどろ瀕死事件を繰り返すまいと、しっかり言い聞かせる。
俺は強いが魔王を基準にすると腕一本ぐらいだから、完璧には守れねぇのよ。
魔王城は平和だけど、魔界は基本乱暴者が多い。
タイマンである決闘では、死傷者を出してもお咎めなし。負けたヤツが悪い。
(むふん。早めに言い聞かせねぇとなァ。そうそう事件に巻き込まれることはないと思うが、用心に越したことはねぇぜ)
珍しくそれなりにちゃんと考えた俺は、鼻歌交じりにフォレクスリールの街を目指した。
幻惑の森と沼地の間にあり、城下街よりいくらか離れている自然豊かな街──フォレクスリール。
街のど真ん中に巨大な木が生えていて、その魔力に惹かれた森林に住む魔族が、多く暮らしている。
魔王城から徐行で一時間。
俺とタローは目的地であるフォレクスリールに、恙無く到着した。
ここの魔族の強さは城下街程じゃないが、そんじゃそこらの野良魔族よりは断然強い。
奴らも定員に限りのある街の居住権をもぎ取ってるかんなァ。
安心しろぃ。俺は勝てるぜ?
たぶんタイマンの決闘組まれても住民全ての魔族に勝てる。
ククク。連続は無理だけども。
悪戯好きの魔木トレントや、巨大ミミズのワーム。
鹿頭に鳥の翼を持つペリュトンや、鳴き声で生気を奪うシュリーカー。
森林に住む魔族が木造と漆喰とレンガ造りの街並みを、ゾロゾロと闊歩する様は、活気があった。
それにしこたま大興奮したタローは、目ん玉をひん剥いてワーキャーとはしゃぎ倒す。
気持ちがわかるので好きに騒がせておいた。うろちょろしねぇなら構わねぇ。
タローが落ち着くと、ここからがミッション開始である。
商店街の入口の隅で、俺たちはシャルから託された買い物リストと街の地図を見つめ、ショッピングプランをたてていた。
プランを立ててから行かねぇと、後でたっぷり遊ぶ時間ができねぇだろ?
だからこれも当然なのだ。
なんでもかんでも愉快にするのが俺の生き様よ。
「ザラ紙、羽ペンとインク壺、を入れれる筆箱。それから背負える鞄で、翼に当たらない高さのもの。動きやすい靴と服、外套。最重要事項は長く大事に使えるように、お気に入りを見つけること。ヒントはときめき。──以上、シャルメモより」
「はい! がどくんちょーかんっ。しゃるがかっておいでってしたのから、わたしのすきすきってしたのをえらぶの? しますかっ?」
「そそ、概ねそのとォり。シャルは選ぶ物の条件をつけたけど、タローが胸キュンしたものなら条件と違っても買っておいでってこったな~。ンー。シャルは好きなものなら大事にできるだろ? って言ってんだぜ」
「ん~! りょかい、です! もくひょうは紙とぺん~!」
「クックック、文具屋はそっちじゃねェなァタロー新人軍魔くん?」
「うひぅっ! え、えへへ……!」
フォレクスリールは昔よく遊びに来てたから、変化の緩やかな魔界においてまだまだ俺の庭。
出張街ブラ空軍の長官とちびっこ新人軍魔は、初めてのおつかいにウキウキだ。
タローはいつも、部屋の外を散歩する時シャルの肩車で移動してる。
けれど今日は珍しく自分で歩きたいと言い出したので、走り出すタローを追いかけ、俺は機嫌よく街を歩き出した。
42
あなたにおすすめの小説
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
その男、ストーカーにつき
ryon*
BL
スパダリ?
いいえ、ただのストーカーです。
***
完結しました。
エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。
そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。
ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる