本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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閑話 ガドと愉快な仲間たち

23(sideグルガー)

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 リンドブルムのリーダー──グルガモッド・カーマインは、その笑みに警戒を示した。

 タローの檻に群がっていた部下を、静かに彼の周りへ配備する。

 あの笑顔は非常に気に食わないし、余裕の表れだ。

 アイツは意気消沈すると、もっと殊勝な表情をする。

 多少は頭のキレるグルガーは油断せずにガドの様子をつぶさに観察した。

 余談だが、グルガーはリンドブルムの若い衆で一番強いので、リーダーと呼ばれている。

 なのでリーダーと慕われながら日々彼らをまとめている為、部下は誰も名前で呼んでくれない。

 リーダーと呼ばれすぎて本人ですらグルガーと呼ばれてもすぐ反応できないレベルの、物悲しい男だったりした。

 悲しきリーダーグルガーは名前で呼んでもらえると、好感度がアップする。

「ふん、早いじゃねぇか。荷造りは終わらせてきたのか? シルヴァリウス」
「クックック、生憎かわいい小鳥ちゃんが待ってるんでね。仕事の早い魔王様は負けた竜の一匹を解雇するなんざ、そう待たせないんだぜェ」

 お着替えもできたかンなァ、と呵呵と笑う呑気な男に、グルガーはやはりいけ好かないと苛立ちを表情筋に直列させた。

 周囲からも殺気が湧き上がった。
 主に〝かわいい小鳥ちゃん〟発言のあたりでだ。

 彼の言葉からは、最高権力者である魔王直々に解任書を頂いたらしいことが伺えた。

 魔力も空にしたし、あっても回復魔法向きじゃない属性のガドに傷一つないのは誤算だが、一応こちら側の要望は叶えてきたらしい。

 傷のないガドが魔力も回復しているなら、また無謀な戦いを仕掛けに来るのかとも思って警戒したが……杞憂のようだ。

 服従をかけた決闘と言い張るには、あまりにギリギリのゴリ押しだった。

 いかな弱肉強食のタイマンルールとは言え、相手が納得しない場合は従わないこともある。

 やっている側のグルガーたちも、竜としてかなり不本意なものだ。

 怒りと憎しみと嫉妬がプライドを上塗りした悲しい男たちの、みっともない秘策でしかない。

 ガドに箝口令を敷いたのは、そういうことだった。

 衛兵に囲まれたり、向こうにも仲間が来たら少女を殺さなければいけないというのもあるが、もう一つはただカッコ悪い作戦を世間に広めてほしくない。

 まあ、意識を失い怪我をした連中も回復している。

 ガドが決闘関係なく暴れ始めてももう一度全員で飛びかかり、数の暴力を食らわせることができるだろう。

 グルガーは密やかに思案する。

 どれだけ強くても限度があるのだ。
 圧倒的物量を前に一人で蹂躙できる存在なんて現実的じゃない。

 そんな化物は天使だろうが精霊だろうが、国の頂点に立つ王くらいだ。

 グルガーは頭の中で黒山の荒波になる魔族たちを、試しに思いつく猛者たちにけしかけてみる。

 けれどどれもこれも、なんだか簡単に潰れてしまった。

 ガドの動きがなんだか遅いので、思考回路は絶好調。

 いやいや、うっかりさん。

 仮に大量の魔族に攻撃されて、それを殺されるより早く蹴散らせるのは、今の時代だと各王の中でも一人だけだ。



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