本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
723 / 901
閑話 ガドと愉快な仲間たち

32

しおりを挟む


 意図せずやらかしたガドは、その他の数々の珍事もサッパリ忘却。

 ポテンシャルを最大限発揮し、メキメキと頭角を現して、ついに最年少空軍長官となった。

 となれば中身は自由人だが、外側はそれはもう女性受けのするスペシャルな男になる。

 そのあたりはアゼルと同じだ。

 魔力補正見た目が良くて権力があり、魔族的にも強い男。モテないわけがない。

 ガドは彫りの深いワイルドな面差しと長身の体躯に、黒い軍服。

 つまり長官の色。
 そして長官イコール金持ち。

 世のセクシャリティが女性な男たちは、話術や戦闘力や見た目を磨き、苛烈な戦場で戦っている。

 しかしガドやアゼルは中身がスーパーフリーダムとツンデレパパだろうが、その戦場では立っているだけで勝ってしまう。

 散々やらかされたのに、女性にもフラれたりしていれば、そりゃあヤケにもなる。

 憎しみを滾らせ、カマしてやろうぜ、と一念発起するのだろうな。

 んん……俺にはよくわからない。

 よくわかっていない顔をしていると、バカデビは「告白した女が三人連続シルヴァリウス推しだった俺の身になれよッ!」と泣きっ面で吠えた。

 なるほど。
 実際フラれていたのか。

 俺の身になれと言われ、バカデビを俺、女性をアゼルに置き換えて想像してみる。

 すると非常に気持ちがわかったので、動機足り得ると納得した。

 だってアゼルに三人連続フラレるんだろう? そんな悲しいことはないぞ。

 三人のアゼルの誰にも俺を好きになってもらえず、皆ガドがタイプだと言う……。

 よし、竜の尾と角を手に入れねば。
 一念発起して、俺は竜人になる。

 ガドは昔の暴挙に対しては反省して、ごめんと謝っていたが、それに関してはさっぱりわからないようだ。

 むむむ。ガド、アゼルに置き換えてくれ。とても悲しいぞ。

 心の中で念を飛ばした。

 ──ちなみにそんな俺の立ち位置、傍聴人である。

 傍聴人なのに皆が皆俺に「なァ?」やら「だろッ!?」やら「ですよね」やら、話を振ってくるので、一連の流れを馬鹿真面目に考察したのだ。

 空軍長官に卑怯な決闘を挑み、魔王に喧嘩を売った事件と聞いて、他の傍聴人もたくさんいたのだがな。

 なぜだろう。
 いつの間にか、俺の周りにも無人サークルが形成されるようになった。

 アゼルより直径が小さいし、サークルの外から敵意のない視線も感じるけれど、少し困る。

 そして近頃魔王城の魔族が俺を〝魔王召喚スイッチ〟扱いしていると知ったのは、つい最近のことなのだ。

 勘弁してほしい。
 アゼルは俺を押さなくても、アゼル、と呼べば来るだろう?

 ということで、長くなったがそんな話。

 傍聴人の俺が、ガドとリンドブルムたちの仲立ちを行い、半ばライゼンさんたちサイドの人として裁判が進められ、リンドブルムたちは輜重隊になったのだ。

 執行猶予期間なので、彼らはお給料がない。

 雀の涙程もない。
 そこに慈悲はなかった。魔界だからな。

 住むところは、空軍寮があるので大丈夫だ。

 豪華なメニューでなければ基本の食事は無料だし、たくさん食べる竜だから足りないだろうが、自分で狩りに出ればいい。

 リンドブルムたちは四苦八苦しながら日々馬車馬、いや馬車竜の如く働いている。



しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

塔の魔術師と騎士の献身

倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。 そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。 男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。 それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。 悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。 献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。 愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。 一人称。 完結しました!

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...