本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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十四皿目 おいでませ精霊王

05(sideアゼル)

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 ◇


 昨日の夜は、憂鬱から一転して最高だった。

 シャルに挑発的に笑ってキスをされた上に、俺に元気を注入するなんてかわいい理由でタローお気に入りの歌を口ずさまれたら、俺の機嫌はうなぎ登り。

 更に〝嫌なことを蹴散らして帰ってきたら、自分とタローとゆっくり過ごそうな〟と言う、甘やかしすぎる激励を受けてしまった。

 そんなことを言われたら、その後の展開は必然である。

 毎日イチャイチャ我慢中の飢えた俺は誘われているのかと解釈して、吸血という必殺技でなし崩すに決まっていた。

 至極当然だ。
 シャルがかわいくてタローがいい娘なくらい、当然だ。

 久しぶりに魅惑の官能タイムを謳歌して、現在の俺のメンタルは無敵モード。

 玉座の間でつまらない業務を待ち構える午後も、口元が緩んで仕方ないくらいだった。

 足を組んで肘置きに肘をつき顎を置く今の俺が、ニヤ、と笑うと下々の者たちが青ざめる。

 まぁどうしようもない。
 生まれつき、俺のニヤニヤは一見すると暗黒微笑なのだ。

 昔の俺なら落ち込み、黙り込んで強がっていただろう。

 しかし取捨選択を得た俺は、興味のないやつらの目なんてどうでもいい。

 じっくり見てて気がついたけど、たまに喜ぶやつもいるしな。ドMってやつだぜ。

「魔王様、お顔がにやけてらっしゃいます」

 ククク、と時折喉元を鳴らしていると、玉座の脇に控えているライゼンが呆れて自分の頬をつつき、暗に引き締めろと訴えてきた。

 実はずっといたのだ。
 一応ナンバーツーだからな。

 もちろん対等な立ち位置の他国の王を迎える今日この場に、俺が一人なわけなかった。

 この場にはライゼンと、殆ど俺の雑用係となっている近衛兵──黒人狼たちが壁際に整列し、控えていたりする。

 意にも介さず。
 俺はにやけているのだ。クックック。

「ふっ、これがにやけずにいられるか。精霊王共が来たら真面目に仕事してやるから、好きにニヤケさせやがれ。むしろ聞け。俺の嫁が如何にエロいかを聞け」
「いけません。シャルさんが可哀想すぎますし、どうしてもとおっしゃるなら端的にまとめて以降封印してください」
「昨晩、声我慢大会、背中からの眺め、最高」
「くっ、シャルさん……ッ!」

 端的にまとめても大体わかってしまいます、と、ライゼンは涙ながらにシャルに同情した。

 バカが。
 まだまだ言い表しきれてねぇ。

 シャルの良さを全ての生きとし生ける者たちに知らしめてやりたい。

 そしてそんなシャルが俺のモノだということも、知らしめてやりたい。

 最早野望だ。
 だがひっそり囲っておきたい欲望との二律背反もあるんだぜ。

 壁際で待機する黒人狼共も、鎧を着ていて二足歩行をしていようがベースが狼だ。

 耳がいいので、距離があっても俺の言葉はよく聞こえただろう。

 コイツらは俺に絶対服従の契約をしている眷属で、更にシャルに懐いている。

 つまり無害中の無害だ。
 モフモフ共にも、いくらでも聞かせてやる。

 あえて捕まえて語ってやろうとは思わねぇけど、機会があるなら朝まで生語り。

 一言一句聞き漏らさず頭に刻み込みやがれ。俺の嫁の素晴らしさをな!



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