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十四皿目 おいでませ精霊王
06(sideアゼル)
しおりを挟む「クックックック……! ふはは、ふははははは……ッ!」
「な、なんてダークな高笑い……! シャルさんの前以外でデレればデレるほど、魔王様は魔王様に相応しくなられますね……」
ライゼンの呆れ果てた声も聞こえないくらい、久しぶりにイチャイチャできた俺は浮かれ放題だ。
しかもこれが終わったら、ゴールデンタイム。即ち、尊さで滅多打ちにされるコース。
遅くまで接待を頑張った俺は、シャルとタローでムギュッと挟まれ、癒しの極みを楽しむ予定なのだ。
こうなったら俺の独壇場。
むしろ精霊王かかってこいよってなもんだぜ。クックックッ。
あ? 「普段から俺とシャルはいちゃついてるじゃないですか」だって?
馬鹿め。
あれは俺とシャルのノーマルだろうが。
俺とシャルは特別いちゃつかないで、あれなのだ。ふふん。
疑うならタローに聞いてみろ。
俺は毎朝シャルに抱擁していってらっしゃいとおかえりのキスを貰い、夜は抱きしめて眠るって言うかんな。
そんなニヤニヤタイムな玉座の間に、不意にギギギ、と扉の開く音が聞こえた。
「マオウサマ! マオウサマ、セーレーオウサマ、イラッシャイマセ! オトウシ! モウスグ! ヨイデス、カ? ダメデス、カ? ジュンビ!」
視線をやると、そこにいたのは俺の部屋付き従魔であるシャルお気に入りのカプバット──マルオだ。
マルオは飛び込んできて早々に精霊王の来訪を告げ、パタパタと忙しなく体を傾げる。
「ああ、まるいのか。構わねぇよ。お前もそのへん飛んでろ」
「表情筋が優秀すぎて、私はとても嬉しゅうございますよ。もう……」
仕事のスイッチを入れた俺は、何事もなかったかのように真顔で対応した。
ライゼンの小言もなんのその。
ふふん、もっと褒めてくれても構わねぇぜ?
シャルの前だと溢れる愛でうまく誤魔化せないが、そうでなければ俺という男は、意外とうまく繕えていると思う。
「キキィ! マオウサマ! シャルノハナシ、シテイタデス、カ?」
「クックック、聞きてぇか?」
「シャル! マルオ、シャルモマオウサマトオナジクライ、スキ! スキ! シャルノハナシ、キキタイ! デス!」
俺のそばまでやって来て飛びながら大きな目玉を細めるマルオは、シャルと聞いて嬉しげにキキキと笑う。
ほほう。シャル推しか。
なかなか見所のある従魔じゃねぇか。
ならば語ってやろうとしたが、次いで扉が開く音に、マルオは慌てて飛び去って行った。
チッ、来やがった。
「タイミングが悪いぜ、精霊王」
「ハハ、ごめんごめん。それより王様呼ばわりは止めてくれって言ってるだろー? 昔みたいに名前で呼んでくれよな、アゼリディアス」
含みのありそうな軽い口調で俺を試すような態度は、相変わらず。
開いた扉から見えるのは、マルオとは違う先触れ用のカプバットを連れた精霊王と祭司だ。
優雅にコツコツと床を鳴らしながらこちらへ向かってくる二人を、不機嫌に睨む。
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