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十四皿目 おいでませ精霊王
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しおりを挟むとなると告白の恋愛指南なんて、お部屋を訪ねて好きです付き合ってください一択じゃないか。
これ以外にどうしろと言うんだ。
ラブレターか? 靴箱がない。
となれば教えることなんて皆無で、俺はキャットの力になれないのだ。
そうして自分がどれ程これ関連は役に立たないかを説明すると、涙目だったキャットが紅茶を飲み干して、どうにか復活した。
「ふへぇ……よし、改めてよろしくお願いします! 魔王様をオトした手管を、是非この誇り高き童貞である俺に……!」
しかし、俺の説明はちっともキャットの考えを改めることができなかったらしい。
「こうなったら、俺は頑張ります! 童貞非処女も辞さない……!」
「待て待て。前向きなのはとてもいいことだが、向いている方向が明後日を通り越して一年後くらいだぞ? キャット。そして俺は別に寝技でオトしたわけじゃないし、童貞でもない」
「!? な、なん……だと……?」
ここで判明する、知らない間に童貞非処女だと思われていた衝撃の事実。
なんてことだ。
そんなありえない様な顔をされるなんて。
(うぅん……もしかして俺は、素人な空気でも出ているのか?)
いやその前に男に処女という概念はないと思うが、どうだろう。
しばし男の沽券について考えていると、キャットの言葉からおかしな勘違いを見つけた。
「……うん? そもそも俺がなんというか、ベッドでアゼルを仕留めたように思っているのは、なんでだ? 間違いじゃないが、お世辞にも俺は床上手じゃないぞ。ぐだぐだだった。頭の中が」
「ぬうう? ご謙遜ですかっ。そのあたりの事情は、魔王様直々に話してくださっていましたよ! コンテストの時は調教済みの最高な嫁だとか……! いつまでもラブラブなのはいいと思います。なので俺はシャル様に技術を教えてもらいたいなと!」
「うぁ……っ! またアゼルがあることあること主観で言いふらしたのか……っ!」
衝撃の事実、おかわり。
コンテストの時、俺の調教具合を晒していたのは、ちゃんとダメだと言い聞かせた。
しかし詳細は身バレしていないのをいいことに、ノロケ話を部下や民衆へ語ったんだな?
頭を抱えたくなったが、そうもしてられないので額に片手を置くにとどめた。
ううん、いい加減仕返しをしたほうがいいかもしれない。
(仕返しか……。こうなったら……俺も言いふらしてやる)
ちらりとベッドに視線をやると、カプバットの山に埋もれて眠るタローが、目を覚ます様子はない。
カプバットたちもすやすやと眠っている。
魔王の部屋付き従魔のリーダーであるマルオがいなくても、カプバットたちはいいこだ。
ふむふむ。
これなら多少イケナイ話をしてもいいだろう。
俺は腕を組んで、キラキラと目を輝かせるキャットに向き直った。
「よしキャット。恋愛指南はできないけれど、アゼルがどこをどうすればスイッチが入るのか教えるので、男の弱点の参考にしてくれ。ゼオを誘惑して、くらっと来たところに告白するんだ。誘惑して押し倒せば、マンネリすら敵じゃない。結婚もできる」
「おおおおおお……っ! わかりました! シャル様……いや師匠! 俺、頑張ります!」
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