763 / 901
十四皿目 おいでませ精霊王
30
しおりを挟む「き、きらいじゃない、ですか……っ? ということはすっ、すき……」
「ではないですね。恋愛感情は皆無です。と言うかそういう意味で見たこともありません。ちなみに男だとかは関係ないです。普通に恋愛対象候補ではないので」
「うあああんオーバーキルなんですぅっ!」
「ゔっ、うう……っ!」
口出ししないと決めたのに、ゼオがばっさり切り捨て御免すぎて、どうにも気になってしまう。
ぎゅうっとキャットが俺の腹に顔を埋め直してしまったから、余計にだ。
二人を見守る立ち位置でいる俺は、間でハラハラと二人を交互に見るしかない。
当事者よりもオロついている俺を尻目に、ゼオは、ビシッ! とキャットの額にデコピンを食らわせ、更にチョップも食らわせた。
なんてこったい。物理的にもオーバーキルが入ったじゃないか。
せっかく泣き止んだキャットは、ブレないゼオに涙目になってしまう。
あわや大号泣かと思った時。
「うひぅっ!」
「いいから最後まで聞け」
「っむぐ……、ひゃ、ひゃい……!」
ゼオはキャットの頭に殴るでもなく、ポン、と手を置いてから、ビシッ! とデコピンの追撃を食らわせた。
キャットは一時停止。
涙目だが、それはご愛嬌だ。
「はい。要点を纏めますとつまり、俺は貴方を恋愛対象として考えたことがないので、告白の返事は当然お断りになります。今恋人がいないので将来的にはわかりませんが、きっぱり現段階では断りしますので、諦めるなりなんなりしてくださいってことですね。仕事での関係には差し支えないので、気にしないでください。俺は一切気にしないです。いいですか」
「うあ……っ、頭ポン、く、クーデレ……だとぉぉ……っ」
「いやもうあんたはなにと戦ってんだ」
グリグリと俺の腹に額をこすりつけて、涙目で悶絶するキャット。
キャットはもう、ゼオならなんでもいいみたいだな。限界すぎる。
デレのないゼオさんでお馴染みなので、一度崩れたキャットはグズグズ。
頭ポンポンをされただけで、キャットからするとデレを感じるのだ。
俺もちょっとデレだと思ってしまった。
デレ判定が麻痺している。
ゼオのデレ頻度は、アゼルの十分の一くらいなんじゃないか?
ふふふ。なんにせよデレてもらえて、嬉しい限りだ。
少しホクホクとした心地になったのだが、それでもデコピンの後に、キャットはきっぱり再度フラれてしまった。
年単位の片想いだ。
真面目で一生懸命な男だから、フラれたぐらいじゃ諦めることなんてできやしない。
ゼオに選択しろと言われたキャットは唇を噛み締め、ふるりと震えた。
「ぐ、ぐすん……、わか、わかりました……。……ひう、うっあぁぅ……っ、あぅ……!」
「だから、泣くなと言っているんだ」
「だって、だって俺ぇ、俺すきですもんん……っ! 諦められない、ないっぐす、ひう……っじゃあ、じゃあ好きなタイプは、どっ、どんな人ですかぁぁぁ……っ?」
「好きなタイプを人で例えろって、あんたね……」
「さんこうにします、がんば、がんばるますっ……!」
キャットは全てをさらけ出してしまった勢いで、心のままにぶつかる。もう必死だ。
震えて俺にしがみついていたのが、一転。
断固引かない決意で、眼光鋭くゼオを一心に見つめた。
キャットはそれだけ、ゼオが好きなのだ。
俺は内心で一人、うるりと目玉に一膜水分を滲ませてしまった。
好きで好きでたまらないなら、諦められない。その気持ちは覚えがあった。
同一人物ではないので完璧に同じとは言えないが、キャットの背をなでている手に力が篭るくらいには、胸打たれてしまう。
しかしそれに対して、好きなタイプを聞かれたゼオは、思案。
「好きなタイプね、あー……まあ、前科があるのはこんな人でしたかね」
「は?」
少し考えてから指さしたのは、なにがどうしてか──俺だった。
41
あなたにおすすめの小説
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
その男、ストーカーにつき
ryon*
BL
スパダリ?
いいえ、ただのストーカーです。
***
完結しました。
エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。
そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。
ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる