771 / 901
十四皿目 おいでませ精霊王
38
しおりを挟む人型に戻ってキャットの拘束から解放されたゼオが、リューオに無言で片手を上げている。
(おぉぉ……め、珍しい。褒めているぞ、あれは……)
陸軍長補佐官の褒め対応なんてプレミアじゃないか。
上官に褒められたリューオは鬼のような形相でキャットを威嚇しつつも、片手を上げて答えていた。
リューオとゼオは仲がいいのか?
仲がいいのはいいことだ。素敵だな。
そうして少し和んでしまったが、すぐにハッと我に返った。
いけない。それよりもキャットが起き上がらないから、助けに行かねば。
怪我をしているかもと慌てた俺は急いで結界を解除し、キャットに駆け寄ろうと足を踏み出した。
──が。デジャブ。
「情操教育に適してねェ発言はテメェが事前に止めやがれお父さんよォッ!」
「あうっ」
いつの間にやら目の前にやって来て仁王立ちで立ちはだかっていたリューオが、パシコンッ! と素早く俺の頭を叩いたのだ。
うう、いい音が鳴ってしまった。
どうして俺は怒られてしまったんだろう。
ちなみに慣れているから特に怒っても悲しんでもいないぞ。大丈夫だ。勇者コンビは仲良しだ。
しかしながら頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げる俺は、リューオの肩の上に乗っている娘を見て、合点がいった。
「がおがお、めっ! なんでしゃるぱぱ、めってするのっ! たろー怒るよ! 好きな人を傷つけた奴はなにがなんでもぶちかますっ、まおちゃんいってたのーっ! あむ、あむあむっ」
「おーおー盛大にべちゃべちゃにしてくれてンなァ、タロー。でもシャルパパがいけないんだぜ? 後なに幼児に魔王理論教え込んでんだよ。お前ら二人のその敵認定した奴を絶対許さない精神、すでに教育済みかよ。これだからクソマジメ天然バカ野郎と、クソ過激派親バカキングの子育てはよォ……ッ!」
リューオの髪をかじってなにやら怒りつつ攻撃をしているらしい、かわいすぎて毎日愛おしいタローは、近頃繊細なお年頃。
タローの情操教育的に、キャットの〝抱かれたい発言〟は確かによろしくなかった。お父さんショックだ。
「ぐう、非常に面目ない……! タロー、怒ってくれてありがとうな。けれど俺が迂闊だったから髪を噛むのはよしてくれないか?」
「ふむぅ?」
「俺が子どもをリューオに任せて友人に構いっきりになり、挙句の果てに好きな人の好きだった人が相談相手と言う泥沼寸前で、子供に聴かせるには些か過激な発言を許してしまい……」
「だァかァらァ! 子供相手に発言がマジメすぎるんだよバァァァカッ! もう、もうバァァァァカッ! シャルバァァァァカッ!」
リューオの髪をかじって首を傾げるタローに真剣に謝罪をする俺を、リューオが全力でバカ呼ばわりする。
地面で丸くなるキャットはやる気に満ちているし、ゼオはさっさと帰っていく惨状。
──この日の出来事を後日、リューオはユリスにこう語った。
「俺とお前と宰相以外ほぼ全員ボケって魔王城ツッコミにブラックすぎんだろ」と。
41
あなたにおすすめの小説
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
その男、ストーカーにつき
ryon*
BL
スパダリ?
いいえ、ただのストーカーです。
***
完結しました。
エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。
そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。
ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる