本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
777 / 901
十四皿目 おいでませ精霊王

44

しおりを挟む



 ──さてさて、一方その頃。

 当人である俺は、キャットの告白予行練習がとんでもない勘違いを生んでいるなんて、予想もしていなかった。

 アゼルがもう二度と飲まないと誓っていたアルコールに動揺のあまりうっかり手を出しているなんて、もちろん知るよしもない。

 今日も今日とて食事と入浴を終わらせ、平和に娘と自由時間を満喫している。

 幼いタローの就寝時間は早いのだ。
 それに合わせて、俺たちは食事の時間が早めだったりする。

「おとうさんっ、今日はなにをしていたんだ~?」
「お父さんは今日、朝からお仕事をしていたぞ。タローと一緒にフロランタンを作って、パパのぶんは二人で包んだ」
「ふふん、ふふーん! そうかよう、えへへ……! 別に嬉しくなんかないよっ! おれは頑張っておしごとをしていたよ~っ。おしごと、行きたくないんだぜっ。でも頑張ったからね、あのね~癒しがいると思うの~」
「ふふふ。ようし、それじゃあお疲れ様のパパを、お父さんがいっぱいなでなでして、ぎゅーってしよう。今日もよく頑張ったな。パパは凄い、偉い」
「むひっ、きゃ~っ! あったかい~あははは~っ!」

 ぎゅう、と腕の中に閉じ込めて、お疲れ様の労りハグだ。

 アゼルの冬用の赤いショールを羽織ってパパ役をしていたタロー捕まえ、翼の付け根や頭をワシワシとなでる。

 タローは嬉しそうに悲鳴を上げて、キャッキャとはしゃいで喜んだ。

 元々は肩車が好きだったんだが、今は抱きしめられるのとなでられるのが一番好きなのだ。

 そのあたりはガドに似てきたのかもしれない。

「ぎゅ~」
「ぎゅ~っ」

 そうしてフカフカのカーペットに薄い布を敷いておままごと中の俺たちは、楽しくイチャイチャ中である。笑うところだ。

 おままごとの道具は、もうお菓子屋さんで使わなくなった調理器具や食器がメイン。

 他には木っ端を削って俺が手慰みに作った木製のテーブルや椅子が、主にいつものおままごとセットの内訳だった。

 おっと。
 二人でコツコツ集めたものもあるぞ。

 庭を散歩した時に拾ってきたどんぐりや小石なんかを、食材としてエア調理したりする。

 空軍の竜人三人組から貰った抜け鱗をタイルにして、カラフルな床を作って遊んだりもした。壁がないが、子ども部屋なのだ。

 それをどこからか聞きつけたガドから貰った抜け鱗は、綺麗に磨くと鏡レベルの輝きを持ってしまった。

 タロー専用のドレッサーに改造したのはいい思い出だ。

 アゼルの抜け毛を集めて防寒防暖防魔法攻撃なとんでも座布団もある。

 魔族がかなり少ない人間国の市場の価値に換算すると目を剥くようなおままごと道具だが……これが結構、楽しいのだ。

 俺は小さい頃おままごとをした記憶がないので、タローと遊んでいると新鮮に感じるしな。

 存分に抱きしめて揺れた後、腕の中からタローを解放してやる。

 するとタローは機嫌よく翼をバサバサと戦慄かせ、にこーっと満面の笑みを浮かべた。ご満悦らしい。



しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

その男、ストーカーにつき

ryon*
BL
スパダリ? いいえ、ただのストーカーです。 *** 完結しました。 エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。 そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。 ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

塔の魔術師と騎士の献身

倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。 そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。 男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。 それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。 悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。 献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。 愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。 一人称。 完結しました!

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

スイート・スパイシースイート

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ
BL
佐藤裕一郎は経営してるカレー屋から自宅への帰り道、店の近くの薬品ラボに勤める研究オタクの竹川琢を不良から助ける。そしたら何か懐かれちまって…? ※大丈夫っ(笑)この小説はBLです。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

処理中です...