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十五皿目 正論論破愛情論
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しおりを挟む「…………シャルはなんというか……いいやつだな」
「? 俺は偽善者だ。この間だって小動物を捕獲して、食事を対価にペット扱いし、リューオと交代制で愛でている」
「はは! 眩しいくらいいいやつだぞ~」
ニカッ、と明るく笑うアマダは、椅子の一脚にストンと座り、俺にもう一脚に座るよう目配せした。
セファー用にしてほしかったけれど、彼は座る気配がないので仕方がない。
相対するように腰を下ろすと、アマダは俺を見つめて眩しそうに目を細め、どこか悲しげに笑った。
「アゼリディアスが愛するのも、わかる気がする。……羨ましいくらい、きっとお前は人に好かれるんだろうな」
「そんなことはない」
「謙遜しないでくれよ、俺が惨めだ」
影のある笑みと含みのある言葉。
謙遜ではなく事実だ。
俺は〝好かれている〟のではなく、俺の周囲の人が〝好いてくれている〟のである。
だから好いてもらい続けるために、俺は彼らをできるだけ好く。
そしてまずは仲良くなりたいから、俺は彼らを好きになる。
現代だとその心がけと性質は都合のいい人だと言われ、しばしば粗雑に扱われた。
でもそうしない人もいるから、報われる好意。
決してなにもしなくても好かれるような、価値のある人間じゃない。
けれど鈍感な俺は、アマダのしたい話がわからなかった。
こういう話じゃないのか?
好きの種類は?
どうしていいかわからなくて、とにかくあまり元気じゃないらしい彼の話を聞こうと、じっと見つめて先を促す。
「なぁオイ、お前よォ、」
──パシッ!
「!? リュッ……!」
そんな鈍い俺より鋭くてさっさと物事の核心を突くタイプであるリューオが、話に察しが着いたらしく、声を上げた。
しかしそのリューオにいつの間にか長くしなるムチが伸ばされて、俺は慌てて振り向く。
「ドラ猫は、私と外へ」
「……ア?」
地を這うような低音を発するリューオは、棚の上にあった燭台でムチを受け止め、その主──セファーを睨みつけていた。
「リューオ、怪我はないか……っ?」
「誰に口利いてンだッ?」
直撃していないと知って安心したが、怪我がないかと立ち上がろうとすると片手で制され、大人しく座っているしかない。
「喧嘩売られてんだよなァ? 買うぜ」
「言葉を知らないようですね」
俺を黙らせたリューオが燭台をセファーに向かって投げつけると、セファーはそれを背後に飛ばす。
燭台は壁に当たり、音を立てて砕けた。
「あぁえっと、違うんだ。二人で話したいから外で待っててくれないか? 絶対にかすり傷ひとつ付けないと誓う」
一触即発の二人にアマダが割って入る。
大事な話をするから、二人きりになりたかっただけらしい。
「そういうことです。行きますよ、ドラ猫」
「ハァ? 俺がテメェを信用出来ねェんだわ。ここでの俺はシャルとニコイチ。ホイホイ信じてコイツが死んだら、俺は可愛い可愛い恋人に殺されちまうンだよ」
ズンッッ、と重低音。
しかし理由を知っても、リューオはセファーとアマダを睨んだまま、聖剣を手に召喚した。
並の人間なら持ち上げられない二メートルはある大剣だ。
リューオが持ちながら置いただけで、脆い床が重みで凹む。
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