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十五皿目 正論論破愛情論
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離れ・朝。
「──……ということがあったんだ」
「結局俺に全部言ったらコソコソヤってた意味ねェだろうがよォッ!」
「あうっ」
朝食を食べた後。
リューオと二人向き合って昨夜の出来事を伝えると、ビシッ! と頭にチョップを喰らい、俺は呻き声を上げて患部を押さえる。
うう、慣れているから構わないがいつも俺をチョップするな。なにも変なことは言っていないというに。
『影武者がいないと、ここには来れねぇんだ。だからこの情報を、脳筋勇者にも伝えておけ。アイツは人間にしては見込みがあるから、ちょこっとだけ役に立つ』
アゼルはそう言い残して帰っていった。
だから俺はただ、ありのままの出来事とアゼルから聞いたことを全て、包み隠さず伝えただけだ。
そう言うと眼光鋭いヤンキー勇者のリューオは「俺に秘密でセックスした報告はいらねェッ! ンでユリス不足の俺にノロケるたァいい度胸だってんだコラァ……ッ!」と俺の頭をチョップで連打した。
ノロケのつもりはなかったんだが……。
けれど確かに、ユリス絶ちを余儀なくされているリューオに、アゼルとイチャついた話はデリカシーがなかったな。
「すまなかった。俺の配慮不足だ。お詫びにユリスから『アイツが限界になったら渡していいよ。多少萎れたぐらいだったら踏んで捨て置いていいからね?』と言って預かった、ラブレターを……」
「オウ、いいってことよ。変態プレイでもなんでもしやがれッてンだ」
桃色の愛らしい封筒を召喚魔法で手元に召喚し差し出すと、リューオはコロッと態度を変え、素早く受け取りニマニマとやに下がった。
離れていても猛獣使いなユリスである。
気持ちはわかるぞ。
手紙を貰うと変態な気分になるとも。
それを使ったひとり遊びを見られていた俺が思い出してまた墓の中に入りたくなったのは、リューオには秘密だ。
「そんでなんだったっけな、確か魔王の協力者……というか、魔王が協力してる精霊族のやつが、俺らにいろいろ話してくれンだろ?」
「そうだ。名前は万が一を考えてアゼルの口からは聞かなかったが、信頼できると言っていた」
ズズ、とコーヒーを飲みながら、なにも知らない協力者を待つ。
リューオは不満そうだ。信頼できるのかよ、とでも言いたげな顔をしている。
俺とてどんな人が来るのかわからないので、なんとも言えない。
(警戒心の強いアゼルが協力しているなら、それなりに魔界と関わりのあった重鎮ということになるが……)
アゼルは自己肯定感の低さから、利用されることもあるからな。
その時はまあ、俺がこう、ドーンと頑張ろう。人間詐欺のリューオと二人でなら、きっと精霊族の猛者でも勝てると思う。
そんな決意をひっそりと固めていた時だ。──ヒョコ、と窓からお馴染みのイズナが顔を出した。
夜になるとどこかへ帰ってしまうが、朝になるとやってくるのでもう慣れている。
「おはようだ、イズナ」
「よおチビ。今日は客が来るから一人で遊んどけよ」
俺とリューオはいつもどおりに挨拶をしてイズナを迎え入れ、窓をパタンと閉めた。
けれどイズナはいつもどおりではない。
テーブルの上に乗ったまではいいが、黒い小粒の瞳で、じっと俺たちを見つめて動かない。
一見して怪我をしているようには見えないので、俺は小首を傾げて再度声を掛けようとしたが、それは叶わなかった。
「俺が協力者の、ガルシス・サアリオッツ。……アマダの兄で、元第一精霊王候補だ」
ガルでいい、と言うイズナ──ガル。
普段の江戸っ子口調で少年のような声ではなく、低い大人の男の声だった。
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