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第8章 親密な関係になりたい
388★藤夜を私室に運んだ蒼夜は、過去を思い出す*side蓬莱家の蒼夜*
しおりを挟む視力を失っている藤夜には見えないモノだが、成人男性である蒼夜にはちょっと見た目にてきに、受け付けないモノだった。
料理長が一生懸命に考えて藤夜の為に作ってくれたお粥だが………
ちょっとこれは、私てきに味見もしたいと思えないモノだね
ただ、長く食事らしい食事をしてないな、藤夜の胃は、この辺からか
少し可哀想だが、ちゃんと消化できるか不安だものね
「藤夜、野菜と鶏肉のお粥が来たよ
今の藤夜は、正気に戻ったばかりで、自力で食べるの大変だろうから
今日は、私が食べさせてあげるね」
そう言って、蒼夜は藤夜の口へと、柔らかく煮込まれた野菜と鶏肉入りで、ちゃんとダシを程よく使ったお粥を、無理のないペースで運ぶのだった。
紅夜が言ったように、和輝の《光珠》のお陰で、空腹を感じていなかっただけで、食べ始めてしまえば、飢渇感に促されて、藤夜は蒼夜の介助によって、あっという間に野菜と鶏肉のお粥を平らげた。
小さな1人用土鍋で丁寧に作られていたので、ちゃんと食べきった藤夜だった。
本来なら、おやつ程度にしかならない量なのだが、胃が小さくなってしまっている藤夜には、それでも十分に満腹感を感じる量だった。
藤夜が、運ばれてきた野菜と鶏肉のお粥を食べ終わった頃、紅夜は白夜に【記憶】を観せ終わっていた。
藤夜が紅夜の【記憶】を覗き観た時は、期間が長かった為、いくら時間を凝縮させて観ても、けっこうな時間が必要だったが、白夜に観せたのは1日分なので、わりとすぐに口付けを解いた。
「理解った……ありがとう、紅夜…その…ご苦労だったな
全部、バレているかも知れない状況で、よく耐えたな
しかし……本当に、和輝君は豪胆だな……その友人達もな
身体能力もさることながら、思考の方も常人離れしているな」
白夜の発言に、紅夜の【記憶】に興味津々だった蒼夜は、藤夜が紅夜に観せてもらったモノを観せてもらおうと思い、食事介助の時から肩を抱いたままだった藤夜を振り返る。
食事を終えてひと休憩に入っていたはずの藤夜は、流石に、紅夜の【記憶】を覗き観たコトによる疲労と、胃に身体の栄養となるモノが入ったコトで、既に夢の住人と化していた。
「ああ、残念…紅夜の労力を減らそうと思って、藤夜に【記憶】を
観せてもらおうと思っていたのに……でも…まぁ…しょうがないか
何と言っても、藤夜は、目覚めたてで、正気を失っていた期間分の
紅夜の【記憶】を、一気に観たんだから、疲れて当然だしね
取り敢えず、藤夜は私の部屋に寝かせて来るから、そしたら私にも
紅夜の【記憶】を観せて欲しいな」
そう言って、蒼夜は眠ってしまった藤夜を抱き上げて、私室へと向かった。
蒼夜は、やっと正気を取り戻した藤夜を大事に抱え、自分の私室へと運ぶ。
こういう時、ちょっと大きな屋敷は不便だって思うんだよね
やたらと部屋数あってさ……兄弟姉妹の部屋が、結構、遠いんだよね
普段は、そんなに感じないけど、こういう時にソレを感じる
しかし、紅夜はどんなモノを観せたのかな?
本当に、和輝君とその妹達と幼馴染みと友人達?って、不思議だよね
監視カメラで見ていた内容を考えると、本当に、彼らとの付き合いの
距離感を考えないといけないようだし………
桜は随分とやらかしているようだし、藤夜だって、かなり不味いコトした
なのに、ああいう会話が何でもないようにできるんだから………
紅夜の【記憶】を観たコトと、ものすごくしばらくぶりの食事による満足感から、深い眠りへと落ちている藤夜を見下ろし、蒼夜は無意識の微笑みを浮かべる。
なんにしても、本当に、正気にもどってくれて嬉しいよ、藤夜
私が、綿密な計画を立てて、何度挑戦しても、狂気の中から
救いあげるコトができなかったお前を、正気に戻してくれた
腕の中で、スースーと安らかな表情で眠りの園の住人と化した藤夜を、自分のベッドへと、ソッと降ろす。
蒼夜は、顔を隠すように垂れ落ちる藤夜の少ない前髪を、ソッと搔き上げる。
薄暗い場所では、そこまで目立たない程度には、治癒した火傷の痕跡が残る藤夜の頬を、蒼夜は愛し気に撫でて呟く。
「……藤夜……こんなに酷い火傷の傷跡が残ってしまって……可哀想に…
でも…本当に、良かった」
知的で物静かな腹違いの弟・藤夜の久しくない穏やかな寝顔に、蒼夜は涙を滲ませる。
本当に、桜は《天運》というモノに恵まれた子だねぇ……
あの時期、一族の結束というモノは、まるで五月雨のように、乱れていた
まだ、父上が生きていて、藤夜の目が見えていた、あの頃
普段おとなしい白夜が、珍しく長老達と言い争いをしていた
後から、長老達に聞いても、何を言い争っていたかは
結局、教えてもらえなかったけど
その直後、深く激怒した白夜は、そのまま、ふっつりと行方を
くらましてしまったんだよねぇ………
あれは、人間の時間にして、20年ぐらいだったかなぁ?
以来、綺麗さっぱりと、音信不通を通してくれて………
それでも、白夜が隠れ里から出奔した直後は、口さがなく言っていたっけ
『一族の隠れ里以外で、暮らしたコトのない若君が
外でなど暮らせるはずはない』
『あの【狩る者】達の気配を感じて、慌てて帰って来るわ』
でも、そういうお気楽な声をよそに、行方を絶った白夜が消えて
1年が経ち2年が経ち
『なに、そのうち隠れ里に帰って来る』
そう言って高をくくっていた長老達が、何も手を出さないでいるうちに
各地に微かに残された白夜の足跡を追えなくなってしまったんだよねぇ
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