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第8章 親密な関係になりたい
387★白夜も紅夜の【記憶】が観たい*side蓬莱家*
しおりを挟むその紅夜のセリフに、藤夜はビクッとする。
「そうだ、私は…………よく、あれで、彼は私を〔バンパイア〕だと
疑わなかったモノだ」
紅夜の視界を介して観た、自分のおぞましい姿………。
赤光を放つ双眼に、鋭く長く伸びた牙を、青年になりかけの少年の首筋に突き立て、生き血を啜る自分の姿に、藤夜はクラリッと眩暈のようなモノを感じる。
同時に、言い知れない恐怖とおざましさを感じて、藤夜は呟く。
「私は、一族にとって、ひどく危険なコトをしてしまった」
悔恨に沈みそうな気配を感じた紅夜は、ソファーから立ち上がり、すすっと藤夜の側に近寄り、手を顔の前で振りながら言う。
「ああ……それなら、和輝だから大丈夫ですよ、藤夜兄上
そんなに気にしなくても、和輝達は、あの時の藤夜兄上のしたコトは
さらさら気にしてませんよ
和輝達は、特に、和輝は、俺達や一般市民が持つ感覚や常識とも違う
自分達独自の判断基準を持っているようですから………
はっきり言って、桜なんてものすごぉ~くボロ出しっぱなしだけど
和輝はいっこうに気にしていなかったでしょう?
観て思いませんでした?ものすごく、寛容だって………
和輝達から見たら、俺達は無害の部類にはいるんだし思うんです
例えていうなら、瞳が赤くなろうが、再生能力が凄かろうが
それは、すべて特異な《能力》も、ひとつの才能ぐらいにしか
感じていないようですから………」
藤夜に説明している紅夜に、ちょっと考えごとをしていた白夜が声をかける。
「紅夜」
名前を呼ばれた紅夜は、藤夜から白夜の方へと向き直る。
「はい、白夜兄上、なんですか?」
小首を傾げる紅夜に、白夜も状況を手っ取り早く知る為に言う。
「私にも、お前の【記憶】を観せてくれないか?
先ほど、紅夜が何かを躊躇ったのは、それだろう
そうだな、今はあまり時間が無いから、和輝君を雇った時からではなく
お前が、今日……というか昨日、帰国してからの部分からで良い
和輝君が、我々のコトを、どのように言っていたか?感じていたか?
それが知りたいのでな」
的確に、実は、紅夜が観せたくないなぁ…と思うところを指摘して来る白夜に、紅夜は少しだけ躊躇いをみせる。
そんな紅夜に、蒼夜がクスッと微笑って言う。
「大丈夫、私達は、大概のコトには驚かないよ
紅夜が、藤夜に【記憶】を観せている間に、彼らがゲストハウスで
色々と話していたからねぇ~………
推察だけで、我々真族の特性などを見抜いているからねぇ~………
それに、何と言っても、あの【狩る者】達をおびき出す為に
紅夜を呼び餌にするって平気で言うような子だからねぇ~…和輝君は」
蒼夜の含みある発言に、紅夜は脂汗をガマのごとくダラダラと流す。
呼び餌って?……和輝ぃ?お前、幼馴染みやダチ達と、どんなあぶねぇ~
会話をしていたんだよぉ~………
自分が二番るの兄である藤夜に【記憶】を観せている間に、何があったかを知らない紅夜は、答えに窮して目をパチパチする。
そんな紅夜に、白夜は何時もと同じ、落ち着いた口調で言う。
「和輝君は、お前が帰国して屋敷に帰って来た直後に、藤夜兄さんに
襲われて、首筋を齧られたのだろう
その現場にいたのなら、その時の【記憶】が観たい
彼らは、どのうような反応をしていた?
直に、自分の目でその時の様子を観たいんだ
それに、浄化と再生の儀式の準備の時、お前は和輝君達兄妹や友人達と
共に行動していただろう……その時の言動や行動を知りたいんだ」
白夜の要求に、紅夜は諦めの溜め息をひとつ吐いて、白夜のもとへと行く。
紅夜には、たったほんの数歩の距離が、ものすごく遠く感じた。
「そのような顔をするな、紅夜……私は、和輝君を気に入っているよ
勿論、我々という存在を、そのまま受け入れてくれそうな彼らに
害意はない………ただ、知りたいだけだ」
自分の目の前に立った紅夜に、白夜はソファーに座ったまま両手を伸ばす。
紅夜は【記憶】を観せる為に、屈みこんで口付けようとした。
が、白夜は、見掛けに合わない膂力で、ひょいっと紅夜を膝に抱き上げて、抱き込んでしまう。
「この方が、落ち着いて良い………さぁ…観せてくれ………」
そう言って、白夜は紅夜の頬を撫でる。
紅夜は、ひとつ呼吸を整えて、ソッと白夜の唇に自分の口火を重ね、より【記憶】が観やすいように、意識を開く。
口付けを受けた白夜は、よく観る為に、紅夜の口腔へと下を滑り込ませ、平気で絡める。
恋人同士の甘い口付けとは別の意味で、より親密な行為を交しながら、白夜は紅夜の【記憶】に触れて、紅夜の目を通して、その時のコトを覗き観る。
その間に、蒼夜が料理長に頼んだ、胃に優しいお粥が届いた。
それは、長く食事をほとんど摂っていない藤夜の為に、みじん切りにされキャベツ、白菜、ほうれん草に、すりおろした人参や大根と、疲労回復の為に、薄くスライスされた鶏のむね肉と共に煮込んだ、離乳食に近いモノだった。
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