57 / 120
第3章 ダンジョン攻略中編
第56話 ワニたちの住処
しおりを挟むワニたちの住処に連れていかれた僕は、この場所で沢山の財宝を見つけた。
僕もワニたちの財宝コレクションの一部にされるのであろう。
もちろん、僕の狙いはワニたちの財宝から必要なアイテムを奪うことだ。
ただ、財宝を守る巨大ワニたちは数十匹。
正面から戦うのには少々骨が折れそうだ。
そこで僕は今も僕を探し続けているであろうハルクに連絡し、僕の無事とワニたちの住処の場所を知らせようとした。
離れている相手に意思を伝えるのには、新レアスキル【相互理解】がうってつけだ。
このスキルは離れた相手とも僕の中の無線回路で会話し、見た映像をも相手に送ることが出来るのだ。
まんまスマホだw
しかもその映像は、場所を移動するごとに映像も切り替わるようになっている。
グー〇ルストリー〇ビューだw
相手と共通の文字を持つ場合、相手と文字でのやりとりも出来る。
LI〇Eだw
僕はハルクに僕の無事を伝え、この場所の行き方の映像を送った。
ただ、急に声をかけられたハルクはビックリして溺れそうになっていた(笑)
ハルクが来たら行動へ移そう。
ハルクが来るまでは、状況を正確に分析しておこう。
現在僕がいるところは、広さ100m四方ほどはある広い部屋だ。
鍾乳洞の中にある真四角の部屋。完全に人工だろう。
レンガを重ねたような石造りの壁で、ところどころにひっかき傷のようなものが刻まれている。
鍾乳洞の中よりも比較的温暖。
壁も床も乾燥しており湿度もさほど感じない。
他に部屋はなく出入口は1か所、水路だけのようだ。
現在、部屋にいるワニたちは全部で28体。
10mを超すワニは僕を連れてきたやつのみで、後は5~7mほどの大きさのようだ。
ただ、このワニたちは何らかのスキルを持っているようで、力押しのモンスターだと思い込むと手痛い目に合うかもしれない。
宝箱や財宝は部屋の一番奥。
つまり水路から一番遠い場所に固められている。
きらきらと光る宝飾品が多く、指輪やネックレス、金貨、水晶などが中心だ。
宝箱は全部で8つ。
どの宝箱にも鍵穴がついている。
その中の一つの宝箱が、うっすら赤く点灯していた。
レアアイテムだ。
ワニがため込んだ財宝たちの中に、レアアイテムが混ざっているのだ。
僕がワニに連れ去られた時に感じたのは、この事に関する暗示だったのかもしれない。
レアアイテムが役立つものであれば、7階層攻略の時の助けになるだろう。
僕はハルクが来るまでは単独行動することを避け、宝箱に徹し、チャンスを伺っていた。
僕はハルクを待っている間、ワニたちを観察していた。
部屋にいるワニたちはほとんど動くことはなく、この部屋で寝そべっている。
一定時間が過ぎると、他のワニたちが水面から餌を持って現れ、そこで食事タイムが始まる。
食事後に部屋で寝そべっていたワニたちは部屋から出発し、餌を持って帰ってきたワニたちが代わりに部屋で寝そべるのだ。
まるで二交代制のように、時間ごとに役割が決まっているようだ。
部屋に集まっているだけのように見えていたが、実はしっかりと統制されている。
また、財宝や宝箱を集めているように見えるが、興味を示すワニは一匹もいない。
財宝に対して、一切見向きもしないのだ。
おそらく興味本位で集めている訳では無さそうだ。
目的を持って集め、集めた宝箱をしっかりと守ろうとしている。
僕をここに連れてきた大ワニもこの種族のリーダーでは無さそうだ。
他のワニたちと同じように行動を行い、統率している感じはない。
とすれば、このワニたちを統率するものが他にいるのだろう。
おそらくそいつが、宝をワニたちに集めさせている。
どうやらややこしいことに巻き込まれたのかもしれない。
ハルクは無事にここまで辿りつけるのだろうか。
僕はハルクに再度【相互理解Lv1】で、進捗状況を聞くために連絡した。
(ハルク、今どこにいる?こっちに向かっているのか?)
「んあー」
突然の僕の声に驚いた様子のハルクだったが、すぐに僕に返答した。
「オデ、おめぇのとこさ向かっでるけんど、他のヤツもむがっでるみてぇだ。」
(他の奴?どんな奴だ?)
「悪魔族の奴らだ。ガーゴイルやインプ達もぞっちむがっでる。」
ガーゴイルやインプ?ゲームなどで登場する使い魔の一種だ。
そいつらがこっちに向かっている?
ワニ達と合流しようというのか?
(ハルク、だいたいどれくらいいるんだ?)
「15匹ぐれぇだ。みんな武器をもっでるから戦いに行くみてぇだ。」
なんだか胸騒ぎがする。
そいつらはワニたちの仲間ではないのか?
やつらの狙いは別にある!?…レアアイテムが目当てなのか!?
(ハルクは気付かれないように、やつらの後をゆっくりつけてくれ。ただ、やばいと思ったら逃げてくれ。僕は僕で何とかする)
「わがった。」
その時僕は気付いていなかった。
7階層の前哨戦というべき熾烈な大規模バトルが、この部屋で起ころうとしていることを…。
10
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる