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12重なる時間
しおりを挟む【小澤和毅 水彩画展示会】
ふと歩いていると、誰かの展示会が開かれている事に気付く。そこに導かれていくように勝手に足が歩き出す。
この建物自体が俺を呼んでいるかのようだった。
入場料を払い、中へ入ると人は自分以外誰もいないが、そんなの気にしないぐらい鮮やかで繊細な水彩画があたり一面に広がっている。風景画もあれば、人物像、そしてその人が書いたであろう、文が綴ってある。
一つ一つ大切に見るように時間を掛けて、目を凝らしながら歩く。自分の目には都会では絶対に見れないであろう景色が広がる。春夏秋冬に合わせた色合いの風景画は息が止まりそうなほど美しくて、この人から見える日々はどんなに美しいのか分かる。何を想い、何を描いたか、自分には持っていない感性に見惚れてしまう。
その様な絵を愛おしいあの人が描いていたような気がする。
描いている時、後ろ姿しか見えなかったが、きっとこの人の様に素晴らしさ光景を見ていたのだろうか。
なぜか目頭が熱くなり、そっと抑える。
まだ、俺は貴方を探している。
「____。」
奥に入っていくと、一人の人物像が目に入った。
横顔しか描いていないが、少しも色の無駄がなく、細かな所まで凝っている。風が吹いていたのだろうか、目の前に広がる茶髪の男は少し髪が靡いていて、銀のピアスをして、綺麗な青空の下で本を読んでいた。
「なぁーそのポーズでずっと止まってて」
「えっ、俺モデル?緊張する」
「そんな緊張しなくても良いよ、自然体でいて」
「ずっと残るんだし、カッコつけたいんだけど、あっ!ピアスこれ描いてよ、和弥から貰ったやつ」
「じゃあ、その茶髪から見えるようにして、ああ、違う、そこの髪じゃなくて、そそ、そこそこ」
「どう?良い感じ?」
「ふふ、良い感じなんじゃない」
そう言って、彼は柔らかく微笑んだ。
____
「__見つけた、やっと、っ、やっとだ」
尚樹はその人物画の前で泣き崩れた。
もう一度会いたかった。
もう、寂しい想いはさせないから、ずっと、傍にいるから。
だからもう、一度会いたい。
___ 待ってるから、ずっと
人物画の下の題名にはそう描かれていた。
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