手の届かない元恋人

深夜

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数年前、俺は彼氏がいた。
お互いゲイだった訳でもなく、ただ、一緒にいる時間が心地良くて、誰よりも信頼できて、側にいると落ち着いて、そんな日々を過ごしていたらいつの間にか付き合っていた。ひょんな事だったけど、二人で休日は行きたい所に行ったり、美味しいものを食べたり、こたつに入りながら課題をやった。恋人らしい事もして、順調な付き合いが出来ていると思っていた。今思えば、そう考えていたのは俺だけだったのかもしれないけど。
てっきり元彼は俺に何でも話してくれて、そして俺達の関係に満足しているものだと思っていた。だが、別れは突然来た。

【別れたい。ごめん】

メールで送られてきたそのメッセージに俺は二つ返事をするしかなかった。膝の力が抜けて視界がだんだんと歪んでくる。一緒にいた温かかった部屋は一瞬にして一人で寂しい冷たい部屋に変化してしまった。何がダメだったんだろうか。どうして俺なしで一人で決めてしまったのか。止まらない涙を何回も何回も拭きながら、
これも運命だと思わざるおえない状況に泣き叫んだ。しょうがない。しょうがない事なんだと
自分に言い聞かせても、俺はお前をなぜか探してしまう。思い出してしまう。メールが来るんじゃないかと消したはずの連絡先を探してしまう。いつまで経っても俺は探している。
数年が経ち、やっと見つけたと思ったら、大都会の外にある大きなパネルだった。
変わっていた。見違える程にカッコよくなっていた。それが辛い。俺の知っている彼じゃなかった。もう俺は所詮、過去の人間に過ぎなかった。遠い存在になり、手が届かなくなってしまった。淡い期待は泡となり消えてしまった。
もう忘れよう、もうアイツは赤の他人なんだ。
優しかった思い出も、喧嘩して仲直りした後で一緒に食べるアイスも、セックスの時に俺の頬を撫でるその仕草も、全部忘れるんだ。
時間はどんぐらいかかるか分からないけど、結局もう終わってしまったのだ。
和弥はパネルを背に向けて、ただ一直線に歩いて行った。和弥は振り返ることはなかった。

____


「お兄ちゃん占いやってかないかい?」
「占いですか??いや....」

いつもの帰り道を歩いていると見た事のないおばあちゃんに見た事のない店が建っている。
看板には安そうな段ボールに手書きで【よく当たる占い!信じるか信じないかは貴方次第!】
とお世辞でも綺麗とは言えない字で綴られていた。占いを信じるのは小学生までだ。
断ろうとした時、和弥をジッと見ていたおばあちゃんが目を細め、ボソッと小さな声で言う。

「恋愛についてもできるよ。最近、思い当たる点あるんじゃない?」
「(怖)」
「おばあちゃんが見てあげるよ。」
「......」

ヤバい雰囲気を漂わせた店内に入ってみると、
暗い部屋にポツンと蝋燭と椅子と机の上には目左右色が違う猫がいた。
和弥が座るなり、占い師はカードを次々と置いていく。案外すぐに占い師の話は終わり、お代は要らないわと言われ、入れと行った本人のくせに急かされながらすぐ帰らされた。

【あんた変な男に目付けられたね~こんな好きならそう簡単に手放す訳ないよね。】

この言葉に少し驚いたがエンタメとして聞いてラッキーぐらいにしておこう。
和弥は家に帰り、ぐっすりと眠った。





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