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しおりを挟む──見られた
アリーチェは大きくなってしまった体で駆け抜ける。
──ルッツに見られてしまった
王都からはやく逃げなければ。
見つからないようにはやく逃げなければ。
アリーチェはその一心で、飛ぶように走る。
その姿は、魔獣や魔族とまた違った禍々しいものだった。
王都の城門を越え、アリーチェはやっと人気の少ない場所に逃げ込む。
森の奥く深く、アリーチェは目の前には湖が広がっていた。
アリーチェは覚悟しながらも、それを覗き込む。
──こんな姿・・・
何もかも終わった。
アリーチェは映し出されたその醜い姿に全てが空っぽになった。
ズルズルと引きずってしまい今に至ったのは決して神父だけが悪いのではない。
仕組まれていたとしても、アリーチェがもっと覚悟を早く決めていればこんなことにはならなかった。
後から押し寄せる後悔は、抱きしめてきた魔族の子どもへの謝罪に代わる。
「 ごめん ね 」
アリーチェはルッツのようにこの子に温かみを与えてあげることは出来ない。
大きくなりすぎた手で土を掘り、その子を埋める。
──こんな場所でごめん
体も連れてくることができなくてごめん、とアリーチェはひたすら子どもに謝る。
ここでは誰もこの子を見つけてくれることは出来ないだろう。
この子の何もかも自分が奪った。
色濃くなる自分の罪にアリーチェはこれ以上どうすればいいのか分からなくなった。
けれど、こんな姿のアリーチェでは隠れることも出来ない。
自分がこの世界で異質な存在であることは誰よ理もよく知っている。
誰にも見られたくないこんな姿。
いや、ルッツに見られたくない。
どうにでもなってしまえと思っていたのに、彼を一目見ただけで変わってしまった。
それだけ、アリーチェには彼が全てだった。
「 いや だ もう やだ 」
自分がこの世に存在している事自体がおかしい。
消えてしまえば、いい。
アリーチェはのそのそと湖まで体を進める。
ここにも浄化魔法が施されたいた。
王宮を水源として地下水が張り巡らされているこの国では、当たり前の事。
王宮よりはその威力は弱くなっているが、この中に浸かればアリーチェは少しずつ魔力を削られるだろう。
──もう、これで・・・
そしていつかは消えることができる。
これ以上醜くなる前に、とアリーチェは足を進める。
ルッツの元に駆け寄る愛らしさの失ったその足が湖に浸かる。
「 つっ 」
ビリビリと今までに経験したことのない痺れ。
これぐらいの浄化魔法でも今のアリーチェには堪える。
それだけ自分が人とは異なるものになってしまったのだとアリーチェは実感した。
けれど、アリーチェは歩みを止めることなく、湖の中心へと進んでいく。
──この力も何もかも消えて仕舞えばいい
アリーチェの胸まで水が来た時だった。
「アーチェ! 」
絶対に聞こえるはずのない響きがアリーチェを止めた。
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