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Chapter #2
授業開始!
しおりを挟むオーストラリアに来て、初めての授業の日。
舞恋と別れ、私が指定された教室へ向かうと、そこにはすでに数人の男女が待機していた。
おそらくは私のクラスメイトになる学生たちだろう。
やはりアジア系の人が多いように見えるが、日本人っぽい人はほとんどいない。
部屋の中にはコの字型に長机が並べられていて、そこにオフィスチェアがいくつも備え付けられている。
ちらほらと席に着いている学生のうち、唯一日本人ぽく見える女の子の隣に、私は腰を下ろした。
パーマのかかった黒髪に、黒縁メガネをかけたお洒落さんだ。
「Hello.」
と、さっそく彼女の方から声をかけてきた。
「は、ハロー」
私は緊張気味に返す。
「Where are you from?」
どこの国から来たのかと聞かれて、私はJapanだと答えた。
この時点でわかったことだが、おそらく彼女は日本人ではない。
なぜなら発音がどう聞いてもジャパニーズ・イングリッシュではなかったからだ。
ちょっと早口で、訛り方としてはカヒンに少し似ているかもしれない。
彼女は自らをマカオの出身だと言った。
(マカオ……って、どの辺りだっけ?)
旅行会社のパンフレットなんかでよく見る名前だが、地理に弱い私にはピンとこない。
おそらく日本から近いアジア圏のはずだけれど。
「Ah……good!」
とりあえず相槌として『good』を使ってみる。
我ながら無責任すぎる発言だな、思った。
後でちゃんと地図で調べてみよう。
そうこうしている内に、部屋の入口から担任の先生らしき人が中へ入ってきた。
「Hi, everyone!」
明るく可愛らしい声。
現れたのは、三十歳前後くらいの白人女性だった。
ブラウンの髪をふんわりと結い上げ、ラフなシャツにロングスカートを穿いている。
やわらかな笑顔が素敵な人だなあ、と見惚れていた矢先に、彼女の白い腕に何やら妙な影を見つけて、私は目を止めた。
何かが腕に付着している。
ふわふわと風に揺れる、細長いもの。
その正体を突き止めた瞬間、私は息を呑んだ。
(あれは……)
毛だ。
腕毛だ。
それも一本や二本じゃない。
何本もの束になった毛——ブラウンの剛毛が生えている。
つい剃り忘れた……にしては全長が長すぎる。
おそらくは普段からこのスタイルなのだろう。
先生は平然と自己紹介をしているが、正直、内容がまったく頭に入ってこない。
毛が気になる。
外国の人はあまり細かいことは気にしないのかもしれないけれど、これは普通なのだろうか。
私以外は別に誰も気にしていないのだろうか——と思いかけた矢先、一番前の席に座っていた男子学生が先生の腕に気づいて二度見した。
うん、やっぱり異常だよね。
先生が腕を動かす度に、ふわふわと揺れる毛。
そういえばオランウータンの腕ってちょうどこんな感じだった気がする。
え?
オランウータンなの??
いくら落ちこぼれのクラスの担任だからってそんな。
「So, let’s see……, can you tell me your name and where you come from?」
やがて先生が自己紹介を終えると、今度は学生一人一人に対して名前と出身地を尋ね始めた。
前から順番に、ベトナム人、フィリピン人、コロンビア人、サウジアラビア人……。
やはり日本人は私一人だけのようだった。
ちなみにマカオから来た彼女の名前はスージーというらしい。
あんまりアジア系っぽい名前ではないけれど、マカオって本当にどの辺りにあるんだろう?
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