日本語しか話せないけどオーストラリアへ留学します!

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!

文字の大きさ
30 / 62
Chapter #3

ゴールドコーストへ②

しおりを挟む
 
 二人のやり取りを横目に、私は改めて自動販売機のラインナップを眺めた。
 そして、

「あっ……『ティムタム』がある!!」

 見覚えのあるパッケージを見つけて、思わず目を輝かせた。

「ティムタム? あー、それ美味しいよね。でもめちゃくちゃ甘いし絶対カロリー高いやつ……」

 舞恋がうんざりとした顔で言う。

 ティムタムというのは、オーストラリアで古くから人気のある国民的お菓子だ。
 チョコクリームを二枚のビスケットで挟み、さらにその上からたっぷりとチョコが塗られている、最高に甘いお菓子。

 数日前、初めてオリバーから貰ったときはその美味しさに感動して、何枚も食べすぎてその日の晩御飯が入らないという弊害が出た。

「せっかくだし、私買っちゃおうかな~……」

「あっ、みさきちズルい! 裏切り者! 薄情者!」

 悔しげに吠える舞恋の声を無視して、私はスマホ決済を準備する。
 隣からカヒンがお金を払おうとしてくれたけれど、さすがにそれは遠慮しておいた。

 ボタンを押すと機械が動き、並んでいるティムタムの袋が手前へと一つ押し出されるのが見えた。
 あとは商品が落ちてくるのを待つだけだ——と思っていると、

「……あれ?」

 なぜか、落ちてこない。

 押し出す力が弱かったのか、袋はほとんど動かず、そのまま機械は役目を終えて停止してしまった。

「えっ、うそ。これって……どうしたらいいの?」

「えーーー! なにこれ。クレーンゲームで失敗したみたいになってるじゃん!」

 こんなことってあるのか、と驚愕する私の隣で、カヒンは近くを歩いていた駅員らしき人を呼び止めた。
 そうして事情を説明して助けを求めたのだが、その人は渋い顔をして首を横に振る。
 どうやらこの自動販売機は駅が管理しているものではないので、自動販売機の会社へ直接問い合わせろというのだ。

「はぁーーー!? 意味わかんない! 駅にある自動販売機なんだから駅が何とかしてよ!」

 きーっ! とムキになる舞恋。
 しかし次の瞬間、ハッと何かを閃いて怪しい笑みを浮かべる。

「しょうがないな~。こうなったらもう、この手しかないよね~」

 言いながら、彼女もまたスマホを取り出して自動販売機へかざした。

「ティムタムをもう一つ買って、後ろから押し出したら今度こそ出てくるんじゃない?」

「そっか! 舞恋、頭いい! ……でも舞恋、今はダイエット中だったんじゃないの?」

「今回は仕方がないから特別! 不可抗力で食べるしかないの! だから無効!」

 まるで自分に言い聞かせるように主張する舞恋。

 結局食べるんじゃん。

 彼女がボタンを押すと、機械は再び動き出し、ティムタムの袋を後ろから押し出して……、

「えっ? うそ。ちょっと!!」

 今回もまた、袋は落ちてこなかった。

「冗談でしょ!? 私のティムタム……!!」

 動きを止めて静かになった自動販売機に、舞恋は泣きそうな顔で縋りついた。

「Here comes the train. 」

 電車が来たよ、とゴルフが無慈悲に言った。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

OL 万千湖さんのささやかなる野望

菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。 ところが、見合い当日。 息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。 「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」 万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。 部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...