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Chapter #3
彼女として
しおりを挟む「そんで結局、オリバーの件は聞けずじまいだったの? あんなに気にしてたくせに」
夜。
電話で舞恋に今日のことを報告すると、そんな反応が返ってきた。
「うん……やっぱり、私の考えすぎかなって。カヒンは優しいし、私のこともちゃんと彼女として扱ってくれてるから。疑うのも失礼かなって」
「ほらぁー、だから言ったじゃん! あんなのオリバーが勝手に言ってるだけだって」
ほんとだね、と私が笑うと、電話の向こうで舞恋も笑う。
「ま、それ聞いて安心したよ。私もみさきちには悩んでないで笑っててほしいからさ。で? 今度の週末もまたデートすんの?」
「うん。次の土曜日は遊園地に行こうって」
「遊園地? って、もしかしてドリームワールド!?」
舞恋の声色が変わる。
ドリームワールドはゴールドコーストにある、オーストラリアで最も大きな遊園地だ。
絶叫系の乗り物がたくさんあり、さらにはプールや動物園などもある複合型テーマパークである。
「私もゴルフに連れてってって何度も言ってるのに全然聞いてくれないんだよ~~。このままじゃ留学期間が終わっちゃう!」
いっそこちらのデートについて行きたいとまで言い出す舞恋に、私は「丁重にお断りします」と受け流した。
「はいはい、いいですよーだ。私の分まで存分に楽しんでくればいいですよー。でもその代わり! お土産は絶対買ってきてよね! 約束だから!!」
そうして迎えたデート当日の朝。
待ち合わせ場所であるシティのセントラル駅へ向かうと、一足先に到着していたカヒンが私を出迎えた。
「Hi, Misaki.」
「Kahin!」
彼の優しい声に導かれて、私は駆け寄った。
「You’re very cute today, too.」
今日も可愛いね、なんて言いながら、彼は私の手を取って歩き出す。
朝っぱらからまさかそんなことを言われると思っていなかった私は、初っ端から腰が砕けそうになった。
「……Look! Look at that guy. So cool!」
と、不意にどこからかそんな声が聞こえてきた。
明らかなジャパニーズ・イングリッシュの発音で、「あの人かっこいい!」と盛り上がっている。
見ると、数メートル離れた所にいた見知らぬ女子グループが、まっすぐにカヒンを見つめていた。
アジア系の若い集団。
発音のイントネーションからして、数人はおそらく日本人だろう。
きゃあきゃあと黄色い声を上げる様は、まるで有名なアイドルを目の前にしているかのようだ。
(カヒンって、やっぱりかっこいいんだ)
私以外の女の子から見ても、イケメンだと騒がれるカヒン。
そんな彼がまさか私の彼氏だなんて。
考えるだけでも恐れ多い。
「Why are you staring at me?」
どうしてそんなに見つめるの? という彼の声を聞いて初めて、私は彼をガン見していたことに気づく。
「あっ……Sorry, it’s nothing!」
何でもないよ、と慌てて誤魔化す。
まるでモデルのように綺麗な彼の顔を見ていると、何時間でもすぐに経ってしまいそうだ。
それに顔だけじゃなくて、立ち姿もすらりとして背が高いし、手足の筋肉も程よく引き締まっているし、
(おまけに優しいし……!)
こんなにも完璧な彼の隣を、私なんかが一緒に歩いていて良いのだろうか。
いや。
彼の隣を歩いていても恥ずかしくないように、私ももっと女を磨かなければ。
(というか、まずはコミュニケーション能力をもっと鍛えないと!)
常に自信のなさそうな挙動不審の女が隣にいてはカヒンにも迷惑だろう。
良い女になるためにはまず中身から。
いつもニコニコとして明るい、素敵な女性を目指さなければ。
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