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25 あの男、絶対に許さない
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「ウェンディ! ウェンディ!」
エドアルト様の声に目を開けると自分が何をしているのか、なぜ体中痛いのか、何も理解できませんでした。
「ぁあ・・・頭が痛い・・・」
「ウェンディ・・・ごめん・・・ごめん」
横たわる私の顔にエドアルト様の涙が落ちて、再び私の意識は途切れました。
*****
次に気が付くと私は家に戻っていました。
「ディー! しっかりして!」
周りでバタバタしている中、ベッドに寝かされて温かなタオルで体を清めてくれているのが母だと分かり泣きそうになりました。
「お母さん・・頭が痛い・・・」
「ぁぁなんてひどい・・・直ぐに先生が来ますからね」
喧噪の中「眠っちゃだめよ」と母や主治医のマリアンナ先生の声で意識を保っていました。治療を受けている間もどこか非現実的な感覚だったのが、時々激痛に見舞われ段々と現実に引き戻されていきました。
主治医のマリアンナ先生が私に話しかけます。
「脳震盪を起こしたようね。薬を投与していますが頭を冷やして安静になさって下さいね。何があったか覚えてる?」
「・・・ネッド・・・ネッドに刺されたんだわ」
ナイフで私を刺した・・・それから・・・「ぁぁああああ」・・想像したくもない・・・
マリアンナ先生は「落ち着いて」と私の顔を両手で挟みました。
「貴方は性的暴行は受けていません。お腹の刺し傷も浅かったので安心して」
「ぁぁあ・・」私は穢されてはいなかった・・・
「もう大丈夫よ。誰もディーを傷つけないから安心して」
母の言葉に周りを見渡すと確かにここは自分の部屋で母が手を握って私を守ってくれています。もうここは安全な場所なのだと安堵しました。
「怖かった。あの男、絶対に許さない。警備隊に通報してくれた?」
「いいえ、ディーは帰宅途中に事故に合ったの」
「え?」
「事故に合ったのよ。ネッドは関係ないの。・・・ディーが気を失って直ぐにエドアルト様が助けてくれたのよ。でも貴方を身を案じてエドアルト様とネッドの二人だけで争った事になってるの」
私が暴力を受けた事は伏せられていました。恐らく根も葉もない私の醜聞が噂されると予想したのでしょう。
「それでエドアルト様は大丈夫なの?」
あの屈強な大男を相手にエドアルト様が無事とは思えません。
「数か所切り付けられたけど軽傷だと連絡があったわ」
「良かった・・・」
「ネッドが重傷らしいの。二人が争っているうちにナイフが胸に刺さったんですって。罰が当たったのね」
でも一歩間違えればエドアルト様が重傷を負っていました
「彼が無事で良かった。なんてお礼を言えば良いのか分からないわ」
「それが・・・貴方に会わす顔が無いって酷く落ち込んでいるらしいのよ」
「助けてくれたのにどうして? 彼に感謝の気持ちを伝えて欲しいわ」
「ええ、うちで療養して頂くよう伝えましょう」
でもエドアルト様には断られて翌日にはお見舞いの花束が届きました。
私は1週間は経過観察で安静にするよう言われ留学もキャンセルとなってしまいました。重なるショックで熱を出し3日間私は寝込んでしまいました。
事件があって4日目、寂しいことにその間ナッシュは一度も会いに来てくれませんでした。メイドに尋ねると屋敷内には居ないようです。私が怪我したことすら知らないのかもしれません。やはりソーニア様が見た赤毛の男はナッシュでは無かったようです。
そしてこの日はエドアルト様が見舞いに来てくれました。
「横になったままですみません」
「構わない、具合はどう?」
「熱も下がって悪くないです。助けて下さって有難うございました。怪我は大丈夫ですか?」
「俺の傷は大したことない。君をこんな目に合わせてしまって本当に済まなかった」
「なんで謝るんですか?」
「俺の不注意が原因だ。なんて詫びればいいのか」
「いえ、注意が足りなかったのは私自身です。とにかく座って下さい」
椅子を勧めるとエドアルト様は腰を下ろし「フランツ氏には報告を済ませたが、ウェンディは事件の詳細を知りたいか?」と私を気遣いながら尋ねてくれました。
「ええ、知りたいわ。何を聞いても大丈夫です」
「不快な話だぞ?」
私がネッドに襲われたと知られないよう、学園内で内密にエドアルト様は調べてくれていました。
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